色彩
■ 27.死神も悪くない

「礼など、必要ありませんからね。罠の解除も結界破りも朝飯前です。」
澄ました顔でそう言った橙晴に青藍は笑った。
『橙晴ったら、かっこいー。』


「実際に助け出したのは茶羅ですよ。僕は少し風を操って、茶羅に翼を与えただけです。長年囚われながらも羽を隠し続けた鳳歌殿の方が感服に値します。僕らのやったことなど、大したことではないのです。」
飄々という橙晴に、迅は心の中で頭を下げる。


「鳳歌殿にも、大きな負担を強いてしまった・・・。重ねて、私から詫びる。貴方方のことを、とても心配しておられる。落ち着かれたら、我が屋敷をお尋ねくださるようお願い申し上げる。」
「是非。」
「そうか。すぐにというのならば、この後時間を設けるが。」
問われて迅は青藍を見る。


『お好きになさってください。僕は、貴方方に選択肢を与えたに過ぎませんし、僕に従って欲しい訳でもありません。貴方方はもう、自分の心に正直に動いていいのです。貴方方の鎖は、すでに断ち切られました。会いに行きたいのならば、行かれるがよろしいでしょう。皆様との宴は、後日、時間を作りますので。』
「・・・恩に着る。」


「ならば、この後は私について来てくれ。それから・・・相模迅、松井健吾、染村陸、桐谷陵一、新城暦。貴方方五人の遠征部隊の任を解き、護廷十三隊への所属を許可する。」
彼女の言葉に、五人は息を呑む。
長年諦めていたその言葉は、彼らの背中に震えを奔らせた。


「所属する隊は、ご自分で決めるがよろしかろう。もっとも、死神が嫌になったのであれば、やめても構わぬが・・・。」
「「「「「やめません。」」」」」
声を揃えてそう言った五人に、ナユラは目を丸くする。
「理由を、聞いても?」
問われて五人は小さく笑う。


「だって、なぁ?」
「ふふ。そうだねぇ。」
「自分でも驚きだが。」
「そうだな。俺も驚いた。」
ケン、陵、リク、暦がそう言って苦笑する。


「何だ。お前らも同じか。」
それを見て、迅もまた苦笑した。
その様子にナユラは首を傾げる。


「「「「「死神も悪くない。」」」」」
五人はそう言って笑う。


『ふふ。良かったですねぇ、ナユラ殿?』
「それは、そうだが・・・どういうことだ?」
笑っている青藍に、ナユラはさらに首を傾げる。
『ナユラ殿たちに期待する、ということでしょう。』


「私たちに?」
『えぇ。貴方方なら、四十六室を変えることが出来るかもしれない、と。そして、彼等はそれを見てみたいのですよ。尸魂界の不変が覆されていく様を。』
「変えることが出来るだろうか。」


『変えましょう。我々も、力を尽くします。まぁ、大丈夫ですよ。何といっても、今回、我々は、未来を変えてしまいましたからね。未来が変わるのなら、百万年の不変も変わることでしょう。』
「どういうことだ・・・?」
そう言って不思議そうに青藍を見上げたナユラに、青藍はただ微笑みを見せたのだった。


その日の夜。
「「「「「お帰りなさいませ、青藍様。」」」」」
あちらこちらに顔を出してきた青藍が朽木邸へと帰ると、使用人一同がそう言って出迎える。


『うん。ただいま。』
「青藍様。お荷物をお持ちいたしましょう。」
すぐさま佐奈が出てきて、青藍に微笑みを見せる。
『ただいま、佐奈。待たせたね。』


「いえ。お帰りなさいませ、青藍様。皆様、すでに宴を始めております。」
『あはは。自由だなぁ。まぁいい。落ち着いたら、君たちにも宴を贈ろう。だから今日は、朽木家一同、誠心誠意おもてなしを頼むよ。』
「「「「「畏まりました。」」」」」


青藍に言われて、佐奈以外の者たちは慌ただしく動き始める。
それを見て笑ってから、青藍は隣に残った佐奈を見た。
『佐奈。』
「なんでしょう?」


『今も、朽木家が好きかい?』
「はい。ですが・・・。」
佐奈は頷いてから考え込む。
『どうしたの?』


「ですが、青藍様のおられる朽木家が一番好きにございます。」
微笑みながら言われて、青藍は笑う。
『あはは。そっか。それじゃ、朽木家に居なくちゃなぁ。』


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