色彩
■ 13.傲慢への制裁


『こちらはすでに、貴方方に期待などしていない。だからといって、こちらが黙っているのをいいことに好き勝手やられて、黙っている朽木家ではございません。・・・橙晴。教えて差し上げなさい。』
「はい。その手始めに、皇家には賢者の地位から降りて頂きます。」
橙晴の言葉に、ざわめきが起こる。


「そのような、こと、出来るわけが・・・。」
「出来ますよ。青藍兄様が遠征に向かわれている間、我らは隅から隅まで皇家を調べ上げましたからね。全てをここで詳らかにするのは面倒なので、後でこれらの書類に目を通してください。」
橙晴はそう言って何処からか大量の書類を取り出す。


「皇理桜の殺害、漣咲夜への刺客、朽木咲夜の拘束、そして、今回の青藍兄様の遠征行きに兄様暗殺の命令。その他、私情での護廷隊除籍、遠征隊への左遷、あるいは処刑、投獄。皇家だけでこれほどの罪があるのです。一体、四十六室全体では、どれほどになることやら。これだけ量が多いと呆れるしかありません。」
そう言って橙晴はため息を吐く。


『本当に。その他、それらに加担した者たちの調べも終えております。橙晴を朽木家次期当主に立てるように仕向けたのも皇家であると知って、呆れかえりましたよ。次期当主がいれば、当主が突然消えても安心ですものねぇ。』
「全く、舐められたものです。それだけ兄様を殺す自信があったのでしょうが。兄様を恐れるくせに、簡単に殺せると思っているあたり、頭が足りないとしか思えません。」
橙晴は呆れ顔だ。


『遠征隊に送り込んでいた刺客たちは、わざわざ撒き餌を使って虚を呼び寄せ、虚どもに私を襲わせました。それから私に毒を盛り、寝込みを襲われたりしたこともございますね。私の義骸に刺し傷が残っていました。朝、顔を合わせたときの相手の顔が見物でしたが。』
青藍は楽しげに言う。


「義骸まで準備しているとは、さすが兄様ですよね・・・。」
『ふふ。後で喜助さんにお礼を言わなければなりません。』
青藍の言葉に、睦月と師走は納得する。


遠征隊に行ったときに渡した大量の携帯用義骸はそのために用意していたのだ、と。
その考えに至って、彼等はチラリと視線を合わせて、目だけで苦笑しあった。
備えあれば憂いなし、は、確かにそうだった、と。
用意周到すぎだろ、とも思わない訳ではなかったが。


『まぁ、これだけの証拠があれば、腐った四十六室でも、皇家を賢者から降ろすしかありますまい。皇家を庇えば、自分の身が危ないですものねぇ。まぁ、皇家を庇わずとも危ない方々がいらっしゃいますけど。』
青藍はそう言ってチラリと皇側についていた者たちを見る。
視線を向けられて、彼等は顔を青褪めさせる。


『そのように怯えなくとも、今回は皇家だけにしておきますよ。他の家の者を選任するのにも時間がかかりますからね。・・・そうそう。一応聞いておきますが、皇家は素晴らしいので四十六室に必要である、と思っておられる方はいらっしゃいますか?おられるのならば、手を上げて私にそれを説明して頂きたい。』
ニコリと言われて、四十六室は沈黙する。


『おや、薄情ですねぇ。皇家と共に好き勝手しておきながら、都合が悪くなれば見捨てるなんて。まぁ、誰にも庇われない皇家も憐れですが。』
「そうですね。我が朽木家は此度の当主帰還のために、各方面から協力を得て、こちらから出向かなくとも、協力を申し出てくださる方もいらっしゃいましたのに。我らに協力すれば、四十六室に敵視されることも考えられましたのに、皆さん、ものともしない様子で動いてくださいました。」


『それは、後で私からお礼を申し上げなければなりませんね。』
「ちなみに、そこに居られる隊長の皆さんは、自分から協力を申し出てくださいました。先ほどお逃げになった方々もお力をお貸しくださいました。大半の死神たちは、四十六室などどうでもいいと、興味すらないことがよく解りますねぇ。」
橙晴の言葉に、四十六室の者たちはさらに顔を青くした。


「まだそれを理解できないとは、憐れなことです。彼らが動けば、護廷が動くというのに。その時、四十六室の制止など意味はありません。いや、なくなった、というべきでしょうか。貴方方が長年培った傲慢さが、すでに露呈しているのです。」


『そして、皆、その傲慢さに怒りを感じているのですよ。当然のことながら、この私自身も。私は、貴方方を許しはしません。我が母を苦しめ、私を苦しめ、我らの周りに居る者たちを苦しめた。私は、絶対に許しません。今後、再び我が朽木家に手出しをするようなことがあれば、また、これまでの話を聞いても尚、態度を改めないのならば、四十六室など尸魂界から消してやりましょう。気を付けることです。』
青藍の言葉に、四十六室の者たちはナユラともう一人の男を除いて顔面蒼白になる。


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