色彩
■ 12.当主のあるべき姿


「その方が誰か、とは申し上げません。その方は命じられたことをやるしかなかった方なので。その方の主を奪い、紅梅は皇家の当主となりました。その方の主の名は、皇理桜。貴方の父は、己の兄をその手にかけて、皇家の当主となったのです。そして、皇家を腐らせていきました。それを憂いた方々が紅梅を弑しようと動くもそれは叶わず、彼らはその後も皇家に縛り付けられ、汚い仕事ばかりを押し付けられておりました。」


『さらにいうと、皇理桜を始末することに、四十六室全部が加担した。可笑しな話です。尸魂界の法を司る四十六室が、四十六室を良いものにしようとした方を、私情で、己の利益のために殺したのですから。その他にも、口封じのために命を奪われた者や、殺すに殺せず、幽閉された者もあるようですね。』


「そ、れは、父の罪だ!私の罪ではない!」
『そんなことはない!』
声を上げた梅園は、その青藍の一声で口を閉じる。


『全ての四十六室の者たちに聞いて頂きます。貴方方は、その事実を知っていた。知っていて、今回も皇家に加担した者たちがある。私に恐怖するあまり、私を害した者たちがある。貴方方は先代たちと同じことをした。過去の過ちを隠し、さらに同じ過ちを犯した。これは、間違いなく、貴方方の罪です。』
青藍に確信を持っていわれて、四十六室の者たちは震えた。


『己の身だけを守るために、他人を切り捨て、未来ある者を貶め、あまつさえ殺人まで犯しているのですよ!貴方方の先代が!!その罪を隠すことは罪ではないのか!!法を司る機関が、法を犯すことは罪ではないのか!!貴方方が法を犯して、誰が法を守る!!』
青藍は、怒りを宿した瞳で、厳しく言い放つ。


『貴方方は、何のためにここに居る!尸魂界の秩序を守るためではないのか!!乱れた秩序を正すのが貴方方の役目だ!!もし、貴方方が秩序を乱したというのなら、貴方方が、己の身を切ってでも、自分でその秩序を正すべきだろう!そのために、貴方方はその地位に居る!貴方方が座っている椅子は、そういうものだろう!』
青藍の言葉に、皆が静まり返る。


『我ら貴族が掟を守るように、貴方方は法を守らねばならない。司法機関が、法を軽んじてどうするのです!法の下に、平等に、公明正大に、裁判をするのが貴方方の責務です!それ故あなた方には、法にその身を縛られる代わりに、特権が与えられているのです!!貴方方が法を遵守するという前提に基づいて、その権力が与えられているのです!!違うというのなら、声を上げてみなさい!』
その声に、動ける者はない。


『・・・私は、朽木家当主です。ですから、掟を守らねばなりません。掟を守るということは酷く縛られるということです。その上、私は愛し子と呼ばれ、世の理に深く関わる霊王宮との繋がりもあります。それは、私を縛り付ける。その他にも、さまざまなことに、私のこの身は縛られている。正直、苦しくて仕方がない。時には、己の心を殺し、大切なものを傷付けなければならないのだから。でも・・・。』
青藍はそこで一呼吸入れて、凛と前を見つめる。


『それでも私が朽木家当主を引き受けるのは、朽木家を誇りに思うからです。様々なことに縛られながらも、高貴さを忘れず、気高さを忘れず、誇り高くある朽木家を。そして、それを守ってきた誇り高き先代たちの意思を受け継ぎ、自らもそうありたいと思うからです。だから私は朽木家の当主なのです!!』


そう言った青藍の姿は、まぎれもなく朽木家当主のあるべき姿である。
孤独に耐えながら光り輝き、闇を照らし、何処までも誇り高い。
それを見て、白哉と銀嶺は眩しそうに目を眇めた。
そして、あれが今の朽木家当主なのだ、と、内心で呟く。


『貴方方の誇りは、違うのですか。貴方方の誇りは、他人を虐げることでしか得られないものですか。そんなもの、誇りとは呼ばない。それは、傲慢というのです。我が朽木家には、誰一人として、そのような傲慢さを持つ者はおりません。故に、貴方方が何度我らに穢れを被せようとも、我らはそれを打ち払って見せます。』


「朽木家は、四十六室をも、恐れないと、いうのか。」
四十六室の一人が呟くように言う。
『恐れない?何をおっしゃる。相手にする価値すらないと言っています。』
「その言葉は、傲慢とは言わぬのか!」


『私は事実を述べているに過ぎません。本来ならば、朽木家は四十六室など敵ではない。貴方方の罪を詳らかにして、貴方方をその席から引き摺り下ろすことなど簡単なことです。私が愛し子であることや、我が母が漣の巫女であること、十五夜様方のお力を抜きにしても、我が朽木家にはそれが出来る。』
青藍ははっきりと言い切る。


「それをしないのは、貴方方を引き摺り下ろしても、意味がないからです。すでに腐っている林檎に手を出す必要がありますか?放って置いても勝手に腐り落ちて地に堕ちるというのに。」
橙晴の問いに、四十六室は黙り込んだ。


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