色彩
■ 11.王の意思


「・・・さて。一部隊長方が堂々と逃げ出しましたが、まぁいいでしょう。六番隊の隊士たちが我先にとこっそり隊舎に戻っていることも咎めません。流石、六番隊の隊士たちは、危機察知能力が高いですねぇ。その上、これから起こることが予想できているようだ。自分たちの予想が合っているか、見てから帰ってもいいですよ?」
橙晴に言われて、静かに退散しようとしていた六番隊の隊士たちは動きを止める。


『橙晴、そんなことを言っては、隊士たちが可哀そうだろう。帰してやりなさい。』
そんな彼らに、青藍は苦笑しながら言う。
「帰っても咎めないと言っているでしょう。帰りたいのならば帰っていいですよ、皆さん。」


『と、言うことだから、君たち、全力で帰りなさい。帰って、この朽木青藍が朽木家当主と六番隊第三席に復帰したこと以外何も見なかったことにして仕事に励みなさい。』
「「「「「はい、朽木三席!!!!!」」」」」
青藍に言われて思わず悲鳴のような返事を上げると、彼等は脱兎の如くその場から逃げていく。


「あらあら。元気がよろしいこと。」
そんな彼らに卯ノ花は笑みを向ける。
「はは。六番隊の隊士たちはよく躾けられているな。流石白哉だ。」
「何を言う。あれらを躾けたのは青藍と橙晴だ。私と恋次は一切手を出していない。」


「そっすね・・・。あの二人、俺にまで容赦ないんすよ・・・。」
恋次は疲れたように呟く。
「あはは。それから咲ちゃんだよねぇ。」
「何!?私は躾などしていないぞ!ちょっと遊んでやるだけだ!」
咲夜は抗議するように言う。


「それを躾というのでは・・・。」
「そうですね・・・。あれは、ちょっと、辛い・・・。」
「あれを平気で見ているのは橙晴と青藍と白哉様くらいよね・・・。」
そんな咲夜に、ルキア、深冬、雪乃は苦笑した。


『まぁ、それはいいとして。』
「そうですね。隊士の躾云々は、今はどうでもいいことです。見てください、皆さん。ちょっとお話している間に、何時の間にか皇梅園がグルグル巻きにされているのですが。」
橙晴の言葉に皆がそちらの方を見る。
響鬼が嬉々として彼を縛り付けているのだった。


『容赦ないなぁ・・・。』
「まぁ、仕方ありませんね。あの方の「右腕」ですから。」
「・・・あ!皆様お話は終わりましたか?」
皆の視線に気が付いたのか、響鬼は青藍たちの方を向いた。


「うん。終わったよ。・・・流石響鬼だよね。」
「この程度で済むと思われては困ります。今回の件を含め、我らが王はこれを許すなと言っておられますからね。」


「な、に・・・?では、此度の、霊王宮への、招待は・・・。」
縛られている梅園はそう言って顔を青褪めさせる。
「お気づきですか?・・・帰って来ることが出来るといいですねぇ、皇梅園。」
響鬼は不気味に微笑みながらいう。
梅園は軽く悲鳴を上げた。


「あはは。響鬼、そう脅すものじゃないよ。」
「嬉々として迎えに来た糞爺がそれを言いますか。」
「嫌だなぁ。僕は、我らが王に命じられて仕方なく、心を痛めながらやって来たというのに。あーあ、可哀そうだなぁ。」
棒読みな十五夜の言葉に、響鬼は面倒そうな顔をする。


「梅園如きのために心を痛める十五夜様じゃないでしょう。・・・あと、これは、青藍様からの伝言なのですが、後で話を聞かせて頂くので覚悟しておけ、とのことです。僕まで、青藍様に・・・。」
拗ねたように言った響鬼に十五夜は凍りついたのだった。


『ふふ。それはとりあえず後回しにさせて頂きます。・・・さて、では、続きと行きましょうか。梅園様。』
ニコリと微笑んだ青藍に、皆が遠い目をする。
瞳が恐ろしく冷たいのだ。


『何処までお話しいたしましたかね・・・。』
「我が朽木家が刺客と皇家の繋がりを見つけ出していることまで。」
『そうだった。・・・それはつまり、我が命を狙っていたのは、皇家ということでよろしいですか、梅園様?』


「・・・。」
『おや、だんまりですか。まぁ、構いませんが。貴方が何を言おうと、霊王様のご意思があるのならば、愛し子たる私でも、手出しは出来ませんからね。今更私に謝罪を申し入れたとしても、もう遅い、ということです。』


「そしてさらに、皇家が手出しをしたのは、朽木青藍だけではない、という事実が発覚しております。ある方が、貴方の父、皇紅梅の命を受けて、漣咲夜に刺客を放ったという事実をお話ししてくださいました。」
橙晴の言葉に梅園は迅を見る。


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