「・・・騒がしいと思って来てみれば、青藍が帰っていたのか。」
聞き覚えのある声に、青藍は後ろを振り向く。
『銀嶺お爺様・・・。』


「久しいの、青藍。儂が生きているうちに姿を見ることはもうないかもしれないと思っていたところだ。・・・よく帰った。」
笑みを見せた銀嶺に、青藍も笑みを返す。


『お久しぶりにございます、銀嶺お爺様。変わらずお元気そうで何より。』
「うむ。そなたも元気なようじゃな。あまり、年寄りに心配を掛けさせるものではないぞ、青藍。老い先短い爺は、待つのが嫌いなのじゃ。」
銀嶺は悪戯に言う。


『ふふ。老い先短いなどと、ご冗談を。まだまだ、僕らを見守ってくださるのでしょう？』
「そうじゃのう。心配で死ぬことも出来ぬわい。」
楽しげな青藍に、銀嶺は困ったようにため息を吐いた。


「朽木、隊長・・・。」
暦はどこか信じられないように呟く。
その呟きが聞こえたのか、銀嶺は苦笑を漏らした。


「ほほ。儂はもう、隊長は退いたのじゃが。新城暦か。懐かしい顔じゃ。」
「ご無沙汰いたしまして、申し訳ございません。・・・朽木副隊長が、お亡くなりになられたと伺いました。」
「そうじゃの。咲夜が姿を消して、そなたが遠征に向かって、それから、戦の中で命を落とした。」


「そうですか。もう一度、お会いしとうございました・・・。」
暦はそう言って涙を滲ませる。
「なんじゃ、儂だけでは不満かの？」
「いえ！十分にございます！ただ、一度でいいので、副隊長へご挨拶に伺いたく。」


「ほほ。いつでも来るがよい。・・・気が向いたら、あの気難しい我が孫の隊に入って貰えると嬉しい。」
「・・・誰が気難しいのですか、爺様。」
「はて、自覚がないとは、困ったものよ。なぁ、咲夜。」
「ふふ。白哉は意外と単純ですよ、銀嶺お爺様。」


「咲夜に関してだけであろう。あぁ、青藍や橙晴、茶羅、ルキアに関してもそうだったか。最近は雪乃と深冬にも甘いのう。孫が出来たらどうなることやら。」
からかうように言った銀嶺に、白哉は不満げな視線を向ける。
「爺様とて、孫とひ孫には甘いでしょう。」
「儂は爺ゆえ、いいのだ。」


「妻と妹と我が子らを愛して何が悪い。」
「相変わらず、生意気さは抜けておらぬ。その生意気さが橙晴の子に遺伝しないといいが。」
「それならそれで、私が可愛がるから大丈夫です。」
「咲夜・・・。そなたはそうでなくとも可愛がるじゃろう。」


「もちろん！だって、孫！孫ですよ、お爺様！この私に、孫が出来るのです！奇跡です！もう生まれるだけで嬉しいです！」
「そなたも大概相変わらずじゃの・・・。喜ばしいことじゃが。」


「で、俺の所に居た相模迅と桐谷陵一だな。」
「「お久しぶりにございます、六車隊長。」」
「突然消えて、お前らには苦労を掛けた。」
「いえ。」
「もう一度お会いできてうれしく思います。」


「そうか。ま、気が向いたらまた九番隊に来い。じゃ、俺は、仕事に戻る。これ以上怖いもんは見たくないんでな。」
拳西はそう言って答えを聞かずに去っていく。


「あ、拳西狡い！僕も帰ろ。蓮と紫庵が居るからいいよね。怖いのは嫌だし。これ以上ここに長居するとイヅルも怖いし。」
ローズもまたそんなことを呟いて帰っていく。


「いや、隊長、自由すぎやしませんか・・・。僕らに任せないでくださいよ・・・。」
堂々と逃げ出したローズに、蓮は呆れ顔だ。
「おれたち、これ以上怖いものを見なきゃならないんです！？すでに十分怖いですぞ！？」
状況を理解して騒ぐ紫庵に、皆が苦笑した。


「で、染村陸。懐かしい顔やなァ。」
「はい。お久しぶりにございます、平子隊長。」
「おう。このオレが助けた命、無駄にせんかったようで、何よりや。」
「その節は、大変ご迷惑をおかけいたしました。」
緩い空気を纏いながら言われて、リクは苦笑する。


「かまへん。お前も、気が向いたら五番隊にくるとええわ。しゃあないから、受け入れたるわ。」
「はい。有難く。」


「よっしゃ。そんなら、オレも退散しとこ。彼奴ら怒らせると、めっちゃ怖いねん。お前ら、これから地獄を見るやろなァ。」
平子はそう言って羽織を翻して去っていく。
その変わらない後ろ姿に、リクは苦笑したのだった。


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