色彩
■ 5.隊長たちの温もり


『・・・睦月の意地悪。』
「これを乗り越えたら、この件は許してやるよ。」
小さく口角を上げた睦月を、青藍はじろりと見つめる。
「なんだよ?」


『何でそんなにご機嫌なの・・・?』
「そうか?」
『うん。何か企んでそう。』
「色々と企んではいるが、お前への企みじゃないから安心しろ。」
意地悪く笑う睦月は、やっぱりご機嫌で。
それはきっと、彼をよく知る相手にしか解らない些細な違いなのだけれど。


『本当かなぁ・・・。』
「お前に嘘ついてどうすんだよ。見抜かれて白状させられるのに。」
『口が堅いくせに何を言っているのだか。』
「お前にだけは言われたくないね。・・・ま、話しは後だ。皆に笑ってやれよ。お前を待っていたのは、朽木家だけじゃないんだから。」


睦月に言われた青藍は、周りを見回す。
貴族も死神も入り乱れて、数えきれないほど押し寄せているのだった。
見知った顔がたくさんあって、その顔が笑みを浮かべていて。
自分は本当に幸福なのだと、改めて思う。


『皆、ありがとう。頭を下げると睦月に怒られるから、お礼を言うだけにするけれど、本当にありがとう。・・・ただいま。』
笑みを見せた青藍に、歓声が沸きあがった。


「あはは。凄い歓声だねぇ。」
「そうだな。青藍、俺たちにも、ちゃんとただいまと言ってくれ。」
京楽と浮竹はそう言って青藍たちの方へ進み出る。
『春水殿、十四郎殿。』
二人が近づいてきたのを見て、青藍は二人の方へ歩を進める。


「青藍。久しぶりだねぇ。」
「髪が伸びたな。・・・人生で一番長い三年間だったぞ、俺は。」
『ふふ。ご心配をおかけしました。ただいま帰りました、十四郎殿、春水殿。今後ともよろしくお願いいたします。』


「うん。お帰り。帰って来ると思っていたよ、僕は。」
「俺だってそうだ。・・・良く帰って来たな。」
二人はそう言って、微笑んでいる青藍を抱きしめる。
彼の体温を感じた二人は、心の底から安堵して、大きなため息を吐いた。


『お二人にこうされるのも、久しぶりですねぇ。』
「あはは。男同士が抱き合っていても、むさ苦しいだけじゃない。」
「そうだな。まぁ、お前は別だ、青藍。」
『えぇ?どういう意味ですか、それ。』
複雑そうな声音に、浮竹と京楽はくすくすと笑う。


「大きくなっても、お前はお前だ、ということさ。」
「そうそう。いつまで経っても、青藍は僕らの奇跡だからね。もちろん、橙晴と茶羅もそうだけれど。」
『・・・奇跡などではありませんよ。母上が笑っているのは、必然です。だって、お二人のような、心強い味方が居るのですから。』


「あはは。泣かせるねぇ、浮竹。」
「俺も京楽も、いい加減涙もろい年になって来たから、そういうのは勘弁してくれ。」
困ったように言った浮竹に、青藍は声を上げて笑った。


「青藍。」
二人の後ろから、穏やかな声が聞こえてきた。
『烈先生!』
その姿に青藍は目を輝かせて、浮竹と京楽から離れて卯ノ花の前に出る。
そんな青藍に浮竹と京楽は苦笑した。


「怪我もないようですね。・・・本当に、良かった。」
青藍の頬に手を添えて、卯ノ花は柔らかに笑う。
『烈先生から教わった回道が、何度も僕を助けてくれました。』
「ふふ。それは良かったです。お帰りなさい、青藍。」


『ただいま帰りました、烈先生。・・・ふふ。烈先生の手は、今日も温かいですねぇ。』
言いながらその手に擦り寄る青藍に、卯ノ花はくすくすと笑いを零す。
「青藍の頬も温かいですよ。」
『生きているのですから、温かいのは当然です。』
「ふふ。そうですね。」


「・・・なんや、元気そうやのう。」
「心配したのが馬鹿みたいじゃねぇか。」
「はは。そうだねぇ。蓮と紫庵もお疲れ様。」
次々と皆に可愛がられて嬉しげな青藍の様子に、真子、拳西、ローズが出てきて、口々に言った。


「三番隊第三席南雲蓮。」
「同じく第七席周防紫庵。」
「「ただいま帰還いたしました、鳳橋隊長。」」
蓮と紫庵はそう言ってローズに頭を下げる。


「うん。お帰り。君たちなら、青藍を連れて帰って来ると信じていたよ。」
「・・・侑李もよく帰ったな。」
それを見た拳西はそう言えばそうだった、という雰囲気で侑李に声を掛ける。
「えぇ・・・。隊長、そんな適当に出迎えるのやめてください。悲しくなります。こう見えて刺客と戦ってきたんですからね?もうちょっと、こう、何かないんすか・・・。」


「出迎えてやっただろ。」
「それ、日番谷隊長も同じこと言ってましたよ・・・。」
「何か文句あるか?」
「いや、それは大変有難いんすけど、何か複雑・・・。何で隊長、そんなに面倒そうなんすか・・・。」


「お前が居ないせいで、修兵が死にそうになってんだよ。鬱陶しい。」
「それは大変だー。副隊長が死んだらどうしよー。」
面倒そうに言われて、侑李も面倒そうに返す。


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