色彩
■ 1.歓声


瀞霊廷に足を踏み入れた青藍一行を出迎えたのは静寂。
大勢の人の気配があるが、皆が固唾を飲んでこちらを見守っているらしい。
その様子に、青藍は内心で苦笑した。


「「「「「・・・うおぉぉぉー!!!!」」」」
一瞬の後、青藍の姿を認めた隊士たちが歓声を上げた。
青藍が進み出ると、隊士たちは両脇に寄って道を作る。
それに驚きながらも、青藍たちは歩を進める。


「すげぇだろ?」
冬獅郎は楽しげに言う。
『えぇ。流石です。』
「お前が出て行くとき、皆で出迎えるって言ったからな。」
『はい。ありがとうございます。』


朽木青藍帰還の一報はあっという間に瀞霊廷を駆け巡る。
彼の姿を一目見ようと、死神も貴族も押し寄せてきた。
彼らに笑みを見せながら、青藍はゆっくりと歩を進める。
途中、何か投げつけられているようだったが、いつの間にか青藍の傍にやって来ていた睦月と師走がそれらを処理しているようだった。
歓声が歓声を呼び、涙を浮かべている者もいる。


あちらこちらからお帰りなさいという声が飛んできて、青藍はその声に手を上げて応えた。
そうして彼らは、隊舎の方へと向かっていく。
そして、その騒ぎは、当然のことながら、これから霊王宮に向かおうとしていた皇梅園の耳にも入ってきたのだった。


「何か騒がしいようだね。」
「そのようです。」
彼を迎えに来ていた十五夜と響鬼は、その声を聞いて、ポツリと呟く。
それを聞いた梅園は、使いの者を出して、何事か確かめに行かせる。
使いの者はすぐに帰ってきて、目を丸くしながら、梅園に報告する。


「・・・く、朽木青藍が、帰還しました!!!」
「なんだと・・・?」
それを聞いた梅園はあり得ないと言った様子で聞き返す。
「朽木青藍の捜索隊が、彼を伴って、帰還したとのこと。相模迅遠征部隊も帰還したそうです!ただいま、こちらの方へ向かっております!」


「本物なのか?帰って来るには早いだろう!」
「間違いなく、朽木青藍本人です!!あの姿は、間違いありません!」
そうこうしている間に、騒ぎの声はどんどん近くなり、ついに、梅園は青藍の姿を捉えた。
歩を進める青藍の前に、隊長格と朽木家の面々が姿を見せる。


『皆様、お久しぶりにございます。朽木青藍、ただいま帰還いたしました。』
青藍はそう言って彼らに深々と頭を下げる。
それを見て、朽木家の面々が前に進み出た。


「「「お帰りなさいませ。」」」
咲夜、ルキア、深冬の三人がそう言って青藍に頭を下げる。
顔を上げた三人は皆微笑んでいて、青藍も微笑みを見せた。
でも、雪乃はどうしたんだろう・・・?
青藍が内心で首を傾げていると、白哉と橙晴が一歩前に出た。


「よく、お帰りになりました。・・・ただ今を持ちまして、朽木家当主の権限をお返しいたします。」
橙晴はそう言って当主印を青藍に差し出す。
青藍はそれを受け取って微笑む。
白哉と橙晴も小さく笑みを返した。


「「・・・朽木家一同、当主の帰還をお喜び申し上げる。」」
橙晴と白哉はそう言って青藍に頭を下げる。
躊躇いなく頭を下げた二人に、周りからどよめきが起こった。


「恋次。」
「はい、隊長。」
頭を上げた白哉が恋次を呼ぶと、恋次は青藍の前にやって来て書状を広げる。


「朽木青藍。」
『はい。』
「朽木青藍生存、および帰還の場合は、以前の地位を回復するとのこと。よって、これをもって、六番隊第三席に任ずるものとする。」


『はい。謹んでお受けいたします、朽木隊長、阿散井副隊長。六番隊第三席としての務めを全うさせて頂きます。よろしくお願いいたします。』
青藍はそう言って二人に頭を下げる。


「顔を上げろ。」
白哉に言われて、青藍は頭を上げる。
その顔を見て、白哉の瞳が柔らかくなる。
「父として、隊長として、そなたを誇りに思う。」


『父上・・・。』
白哉に言われて、青藍は泣きそうになる。
そんな青藍を、白哉は抱きしめた。


「良く帰ったな、青藍。・・・あまり、心配を掛けさせるな。」
呟くように言った白哉に、青藍は額を彼の肩に寄せる。
『ごめんなさい、父上。』


「・・・青藍。」
白哉は腕を緩めると、真剣なまなざしで青藍を見つめる。
『はい?』
「今日の空は、何色だ?」
その問いに青藍は首を傾げながらも、チラリと空を見上げてから白哉に視線を戻した。


『母上の瞳と同じ澄んだ空色です。』
「そうか。・・・咲夜のようになってしまったらと、気がかりだったのだ。」
『父上、まさか・・・。』
呟かれた言葉に、青藍は目を見開いた。


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