色彩
■ 34.銀の父


「・・・あの子は、眩しいな。」
「そうだね。なるほど。確かに「暁」だね。」
「ランを言葉だけで、笑わせたな。」
「俺たち、何も言えなかったのにな。」
「器が大きいというか何というか。」
迅、陵、リク、暦、ケンの五人は眩しそうに深冬を見る。


「あの二人は、二人になると強いんですよ。」
「そうそう。まぁ、一人でも強いと言えば強いけどな。」
「青藍は、深冬さんが居ないとすぐ駄目になるけどね。深冬さんのためならどこまでも強くなるけど。」
「あはは。深冬は深冬で、青藍のためなら霊王宮の方にもビンタしちゃうし。」
「仕方ないわよ。深冬と青藍兄様だもの。」
「怖いものなしだよね。」


「そうだな。私の娘と息子は怖いものなしなのだ。」
突然そんな声が聞こえてきて、一同は弾かれたように声のする方を見る。
深冬と同じ色彩を持つ美麗な人物が、いつの間にかゆったりと席に座っているのだった。
「安曇様・・・。一体いつから・・・?」
目を丸くしながら茶羅が問う。


「さっき来た。燿、あるだけ出せ。」
「あはは。畏まりました。」
言われて燿は奥へと入って行く。
「茶羅。今日はそなたが茶を淹れてくれ。後で白哉に自慢してやる。」
「ふふ。相変わらずですのね。すぐにご用意いたしますわ。」
楽しげに笑った安曇に、茶羅もまた笑って、奥へと入って行った。


『安曇様・・・。』
「青藍。顔を、見せてくれるか?」
安曇がそう言って微笑むと、青藍はゆっくりと立ち上がって安曇の前に進み出る。
それに合わせて、安曇も立ち上がった。
近付いてきた青藍の頬に手を伸ばして、安曇は満足げに微笑む。


「怪我も、ないようだな。」
『はい。お蔭さまで、五体満足で帰って来ることが出来ました。』
「そうか。よく戻った。礼を言うぞ、青藍。」
『お礼を言うのは、こちらの方です。僕は、皆に、助けられました。・・・深冬を一人にして、ごめんなさい、安曇様。』
泣きそうに言った青藍に、安曇は、ふ、と笑う。


「構わぬ。今、そなたが、ここに居るだけで、いいのだ。それに、謝らなければならぬのは、私の方だ。私は・・・いや、我らは、そなたが遠征に向かえば、命を落とすだろうと、解っていた。解っていて、止めずに送り出した。許せ、青藍。」
苦しげに言った安曇に、青藍は首を横に振る。


『いいえ。安曇様が謝る必要はないのです。それでも、安曇様は、笑って、行ってこいと、おっしゃって下さいました。安曇様は、苦しみを隠して、僕に笑顔を見せてくれたのですね・・・。苦しませて、ごめんなさい、安曇様。僕が居なくなる未来が見えていたのに、僕のために動いてくださっていた・・・。ありがとうございます、安曇様。』
青藍はそう言って微笑む。


「そなたは、いつも、優しすぎるぞ・・・。」
安曇は困ったようにそう言って青藍を抱きしめた。
「本当に良く帰った。お帰り、青藍。我が息子よ。」
『はい。ただいま帰りました、父様。』


「ふふ。本当に青藍なのだな。信じられぬ。明日まで待ちきれなくて、来てしまったのだ。後で、白哉と橙晴に怒られるのであろうなぁ。」
青藍を抱きしめながら、安曇はおかしそうに笑う。
『あはは。それは困りましたねぇ。』


「未来が拓けていく様をそなたと共に見たかったなぁ。光り輝く未来が見え始めたとき、それはそれは美しかったのだ。」
安曇はしみじみと言った。
『それは、見てみたいですねぇ。』


「後で、あの婆に見せて貰え。私や響鬼の目を通して見ていたはずだ。」
『はい。後で、あの方にも顔を見せに行きましょう。』
「そなたの舞を見たがっていた。私も見たい。」
『ふふ。お見せいたしましょう。』


「しかし、本当に髪が伸びた。」
青藍を抱きしめる腕を緩めて、安曇はまじまじと青藍を見る。
「私の贈った髪紐を使ってくれているようだな。」
『はい。蓮が結ってくれました。』


「ほう?よく似合う。毎日玲奈の髪を結っているだけあるな。あの男、それを解くのが楽しみなのだぞ。」
安曇はそう言って悪戯に笑う。
「何で安曇様がそんなことをご存じなのですか・・・。ていうか、青藍と同じこと言わないでください・・・。」


「時折玲奈と茶を飲むことがあるのだ。」
「玲奈さんから聞きだしましたね?」
蓮はそう言ってじとりと安曇を見つめる。
「聞き出したわけではない。玲奈が自分からそう零したのだ。」
「そう零すように仕向けたわけですか。」


「さて、そうだったかのう・・・。」
不満げな蓮に、安曇は惚けるように言う。
「惚けても無駄です。安曇様が糞爺なのはすでに共通の認識ですからね?」
「何!?そうなのか、青藍!?」
蓮に言われて、安曇は青藍を見る。


『あはは。一度糞爺になると、一生糞爺と認識されてしまいますよねぇ。』
「酷い!私は、二週間も甘味を我慢したのだぞ!?死ぬかと思ったのだぞ!?あれで糞爺から格上げされたのではないのか!?」
『あれはまた別ですからね。』
「酷いぞ、青藍!」


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