色彩
■ 33.眩しい光


「そう考えると、僕ら、問題児なんかじゃないよね。」
「そうだな。寧ろ青藍の世話をしているあたり優等生だよな。」
「あはは。確かに。あの問題児をどうにかしようとしたのは僕ら三人と雪乃だけだもの。」
三人はそう言って頷き合う。
睦月はそれを見てため息を吐いた。


「・・・自覚がないとは困ったものだよな。こっちは青藍と橙晴だけでも大変だっていうのに。お前らの言う通り青藍が一番問題児だったが・・・。それに比べれば、茶羅の脱走なんか可愛いものだよな・・・。」
「大変だな、睦月。」
頭を抱えた睦月に深冬は気の毒そうに声を掛ける。


「いや、お前もだぞ、深冬。俺はその辺で寝ているお前を何回拾ったと思ってんだよ。他の人より太陽の光に弱いんだからその辺で寝るのはやめろと何回言ったことか・・・。結局お前が言うことを聞いたのは六回生になってからだった・・・。」
「いや、それは、だな・・・。」


「その上六回生になると橙晴が朽木橙晴だって、この馬鹿青藍のせいで公になって、深冬と久世と橙晴を毎日のように匿ったんだぞ。」
『え、睦月酷い。橙晴が朽木家の者だとばれる原因を作ったのは、四十六室なのに。あの人たちが母上を拘束したせいで、色々とばれたのに。』


「そうだな・・・。結局何をどう考えても、彼奴らが悪いという答えにしか辿り着かないな・・・。各方面のパンドラの箱を開けやがって・・・。」
そう言った睦月の目は据わっている。


『え、各方面?母上だけじゃない?』
「あの時、橙晴は八番隊の隊士のふりをして、軟禁されていた白哉さんの見張りをしていた京楽さんに堂々と正面から面会に行ったんだぞ?それも一番隊舎に!」
『うん。その辺の八番隊士を伸して、その人の死覇装を着て春水殿の所に行ったんだよね。』


「普通に言っているが、頭おかしい行為だからな?・・・それで、この茶羅は、敵の邸に入り込んで、証拠を手に入れて普通に出て来た。ついでに捕まった師走も連れ出してきた。」
「あら、私は何もしていないわよ。寝ていた師走を起こしただけだもの。」
「ははは・・・。御嬢さん、叩き起こしてくれましたよね・・・。」
「あんなときに寝ているのが悪いのよ。」


「それで、橙晴と茶羅で、四十六室を正面から脅して・・・。」
脅し・・・?
迅たちは信じられないと言った様子でチラリと茶羅を見る。
しかし茶羅は楽しげに笑うだけだ。


「いや、その前に咲夜さんの暴走と、青藍の本性が・・・。」
思い出したのか、睦月は恐ろしげに震える。
『あはは。何で皆してあれを本性っていうのかな。ねぇ、深冬、酷いと思わない?』
「実際、本性だろう。」


『そんな!?』
しれっと答えられて、青藍は涙目になる。
「青藍は、青天の霹靂をそのまま形にしたような奴だからな。」
「「「「「確かに。」」」」」


『うぐ・・・。否定できない・・・。』
「穏やかに晴れているかと思えば、突然暗雲が立ち込めて雷が落ちるのだから質が悪い。情緒不安定なくせにそれを隠して笑うから腹が立つ!」
深冬はそう言いながら青藍の両頬を抓る。
『ごめんにゃしゃい。』


「それで、ついでに聞くが、さっき皆の前で弱音を吐いたと言ったな?」
『うん。』
「聞いてやるから話せ。」


『・・・かくかく云々で、僕は、世界を見捨ててしまうだろうって。それが怖いって。』
「何だ。そんなことか。相変わらず一人でうだうだと悩んでいるようだな。」
泣きそうになりながら言った青藍に、深冬はそう言ってため息を吐いた。


「そんな世界なら、見捨ててしまえばいい。一度見捨てて、好きにしてしまえばいいのだ。」
深冬の言葉に皆が目を見開く。
『でも、それじゃあ・・・。』


「青藍が世界を見捨てて、世界が壊れそうになった時、それを止める者が居なければ、その世界は必要のない世界だったということだろう。本当に必要な世界ならば、誰かが、何としても世界の崩壊を止めるのだ。青藍が、咲夜様を止めたように。」
その強い瞳に真っ直ぐに見つめられて、青藍は息を呑む。


「父様から話は聞いた。今回、私たちは未来を拓いたと。私たちは青藍のために動いたが、それが、世界が損なわれることを阻止した。青藍が、咲夜様のために、咲夜様を止めたから、世界は今もここにある。それは世界が必要だからだ。必要ならば、意図せずとも、我々は力を尽くして、世界を留める。世界とは、そういう風に出来ているのだ!何を恐れる必要がある!自分で自分を縛り付けて苦しむな!」


目の前で光が弾けたようだった。
その光が、暗闇を一瞬で消し去ってしまった。
やっぱり、深冬は、光だ・・・。
眩しいくらいに、強く輝いている・・・。
真っ直ぐに言われて、青藍は内心で呟く。


『・・・ふ、ふふ、あはは!!深冬は、深冬だねぇ。やっぱり、僕の暁だ。』
「何を言っているのだ・・・。理解はしたのか?」
『ふふ。うん。僕は、もっと、好きにしていいって事でしょ?』
「そうだ!自分で自分を縛って身動きが取れなくなるなど、阿呆のやることなのだ!」
『あはは。うん。そうだね。深冬の言う通りだ。』
「解ったならいい。」


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