色彩
■ 32.問題児と苦労人


「はは。確かに朽木家の本気は恐ろしいよね・・・。俺、茶羅には驚かされてばかりだよ・・・。茶羅ってば、あちらこちらに侵入しているのだもの・・・。大霊書回廊にまで勝手に入って行くし・・・。」
燿はそう言って遠い目をする。


「あら、それは、冬獅郎さんに教えて貰ったのよ。冬獅郎さんたら、青藍兄様のことを調べるのに大霊書回廊に出入りしていたみたいなの。」
「あはは。我らが隊長はあれで曲者だよねぇ。」
「まぁ、あの若さで他の隊長と並んでいるのだから、仕方ないけど。」


「隊長って、曲者揃いだもんな。」
「うちの隊長でさえ、曲者だからねぇ。普段はアレだけども。」
「蓮さん、隊長を机に縛り付けていますものね・・・。おれは、怖いですぞ・・・。」
紫庵は恐ろしげに蓮を見る。


『あはは。いつものことでしょう。』
笑って言った青藍に、いつものことなのか、と迅たちが戦慄を覚えたのは言うまでもない。


「隊長がサボっているせいで、我が三番隊は三席が二人も居るんだから。僕だって毎日のように隊長を追いかけて捕まえたくなんかないよ。まったく、無駄に素早いんだから。」
「それでも蓮さん、毎日捕まえてきますけどね・・・。蓮さんの隊長捕縛率は副隊長より上なのです。おれは、たまに隊長に巻き込まれるのですが・・・。」


「なるほど。毎日隊長を追いかけているんじゃ、あれだけ強い訳だよ。」
「そうだな。俺たちは毎日虚の相手をしたが、隊長とは雲泥の差だ。」
「虚よりも隊長を追いかける方が大変だしな。」
「それにしても席官って、大変だな。」


「お前らみんな苦労人だったのか。」
迅は気の毒そうに蓮たち五人を見る。
「青藍の周りは苦労人しか居ませんよ。睦月さんはその筆頭ですよね。」
「そうそう。睦月さんに比べたら、俺たちの苦労なんて大したことじゃありません。」
「確かに睦月が一番朽木家の被害に遭っているよな。」


「五月蝿いぞ、お前ら。解ってんならお前らも自重しろ。南雲も御剣も篠原も朝霧も久世もみんな問題児だろうが。」
「「「「「そうでしたっけ?」」」」」
五人は惚けるように首を傾げる。


「ほう?南雲は苛められっこ一号で、久世は苛められっこ二号だろうが。お前ら二人に何回予備の制服貸したと思ってんだよ。」
「そんなこともありましたねぇ。真冬に冷水を掛けるとか、酷いですよねぇ。まぁ、そのお蔭で咲夜さんに出会った訳ですが。ある意味感謝ですよね。それなのに、最近、顔を合わせると全力で逃げられるんですよ。どういうことなのか。」
蓮は笑って言うが、睦月はそんな蓮をじとりと見つめる。


「お前が怖いからに決まってんだろ・・・。」
「そうですか?僕を苛めていたのだから、僕なんか怖くないはずですけどねぇ。」


「おれが、制服を汚したのは、ほぼ橙晴のせいですぞ!?橙晴の相手をさせられるせいで、すぐ泥だらけに!!」
紫庵は涙目になりながら言う。


「表立って橙晴がお前を庇えば、余計お前が被害を喰らうからだろうが。あれは橙晴の優しさだ。」
「優しさ!?どの辺がです!?ねぇ、加賀美さん、あれは苛めだったよね!?」
「・・・三割ぐらいは優しさだ。」


「えぇ!?そうなの!?」
「そんで三割が八つ当たりで、四割は鬱陶しさだよな。」
「それは苛めというのでは!?」
「久世が五月蝿いのが悪いのだ。」
「酷いよ!加賀美さん!」


「で、御剣と篠原と朝霧だよな。」
騒ぐ紫庵を面倒そうに一瞥して、睦月は彼らをじろりと見る。
「えぇ?僕らは青藍に巻き込まれただけですよ?」
「そうっすよ。青藍のお蔭で俺たちまで追いかけ回されたりしたんすからね?」
「そうそう。青藍様は何処に居らっしゃるのー!?って。」
三人は悪びれなくそう言った。


「青藍を探しに行くという名目でサボってたくせに何を言ってんだよ。」
「先生たちが青藍に厳しく出来なくて僕たちに探しに行かせるのが悪いです。」
「睦月さんなんか、青藍が何処に居るのか知っていて僕らを探しに行かせたじゃないですか。青藍に何かあるとすぐに授業を放棄していましたし。」
「そうそう。それに、霊術院の敷地をいくら探しても青藍は見つからないし。」


「「「つまり、青藍のせいです。」」」
『あはは。堂々と僕のせいにしないでよ。』
「「「実際そうだし。」」」
『酷いなぁ。君たち、出会った当初は可愛かったのに・・・。』
青藍はそう言って涙を拭う振りをする。


「いやいや、青藍?」
「それはこっちの科白だからね?」
「そうだぞ?」
「「「あの青藍が、どうしてこんな大人になってしまったのか・・・。」」」
三人はそういってため息を吐く。


「僕の世話の仕方が悪かったのかな・・・。」
「いや、俺の世話が行き届かなかったんだ・・・。」
「違うよ。青藍の世話の仕方が解らなかった僕が悪いんだよ・・・。霊術院の勉強より先にそっちを勉強するべきだった・・・。」


『ちょっと、人を珍獣みたいに言うのはやめてくれるかな。そもそもそんなに君たちに世話されるほど、霊術院に居なかったじゃない。』
「それがまず問題だよな・・・。」
「ちょっと、甘やかし過ぎだと思うんだよね・・・。あの朽木隊長が甘いなんて・・・。」


「いや、一番甘やかしているのは、睦月さんだと思う。」
「「確かに。」」
京の言葉に侑李とキリトは大きく頷く。


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