色彩
■ 28.大食い


「よし。・・・じゃあ、俺はこれからご飯を作ろう。皆さん、お腹が空いているだろうから。師走さん、手伝ってください。」
燿は満足げに頷くと、そう言って師走を見る。


「また俺・・・。」
「何か?」
「いえ、手伝います。手伝いますよ。」
「そうですよね。師走さんは我が家の居候ですから。」
燿は清々しい笑顔で言う。


「居候・・・。ちゃんと護衛もやってるだろ・・・。」
「あはは。弥生さんを追いかけてサボっているの、知っていますからね?朽木家の当主にご報告申し上げましょうか?貴方が俺たちのことを報告しているように。」
問われて師走は沈黙する。


『あはは。燿、聞こえているよ。』
「しまった。師走さん、ごめんなさい。当主様、聞こえていたみたいです。」
燿は心の籠っていない謝罪をする。
「いや、わざと・・・。」


「何か?」
「いえ。」
「そうですか。では、お手伝い、よろしくお願いします。」


「はい・・・。」
頷いた師走を見て、燿は襷掛けをしながら奥へと入って行く。
師走は渋々それに付いて行くことにしたのだった。


『・・・ねぇ、茶羅。』
それを見送った青藍は呟くように言う。
「何です?」
『燿、隠すのやめたの?優しいと評判の燿は何処に行ったの?』


「お客さんの前ではちゃんと優しい燿よ?」
『うん。つまり、お客さん以外の前ではアレなのか。いや、まぁ、知ってはいたけど。』
「そうね。でも、仕方ないわね。蓮の兄だもの。」
茶羅はそう言ってため息を吐く。


「え、茶羅、酷い。」
『・・・それで、師走はいつもあんな扱い?』
「仲良しなのよ。」
茶羅はしれっとそう言ってお茶を啜る。
『まぁ、師走を苛めるのは程々に、と言っておくよ・・・。』


「・・・ラン。お前、そんなに食べて平気なのか?」
青藍だけ山盛りの大皿で出されたことにも驚いたが、それを普通に消費していく姿に迅たちは目を丸くする。
『大丈夫です!』


「あはは。いつものことですよ、迅さん。」
「いつも?」
笑って言った蓮に、迅はさらに目を丸くした。


「そうそう。こいつ、細いくせによく食うんです。」
「見ているこっちが胃もたれしそうだよね。」
「綺麗に食べてくれるから作り甲斐はあるけどね。青藍、美味しいかい?」
『美味しい!睦月の殺人ドリンクの後だから余計に!』
「殺人ドリンクって言うな!」


「でも、向こうに居たときは、普通だったよね?」
「そうだな。」
「むしろ食が細いくらいだったが。」
「遠慮でもしてたわけ?」
陵、リク、暦、ケンは、青藍を見ながら言う。


『たまに毒が入っていることがあったので、致死量を超えないように食べていたんです。』
「「「「「え?」」」」」
さらりと言った青藍に、五人は目を見開く。


『あ、皆さんの所には入っていませんでしたよ。僕の分だけ、たまに毒入りで。酷いですよね。この九か月で計十二回も入っていました。うち、ここ三か月で九回です。食べられる量が限られていたので、たぶん体重も減ったと思います。』


「確かに細くなったとは思うが・・・どういうことだ・・・。致死量以下でも毒だぞ・・・。」
「しかも、食後はいつも動いてたよね・・・?何でランは生きているの・・・?」
「え、ラン、本当に化け物じゃないよな・・・?」
「その可能性は否定できない。」
「俺もそう思う。とりあえず胃袋は化け物だよな・・・。」
五人は信じられないと言った様子で箸を進める青藍を見た。


『あ、大丈夫だったのは睦月の解毒薬があったからです。致死量以下の摂取であれば、大半の毒は解毒できます。ね、睦月?』
「まぁな。その上、お前はあの咲夜さんの息子だからな。もともと毒は効きにくい。」
『まぁ、母上には毒の類は全く効かないけどね。』
「そうそう。あの人、基本性能が狡いんだよな。・・・研究したい。」


『あはは。睦月、まだ諦めてなかったの?』
「当たり前だろう。触れるだけで虚が消滅するんだぞ?咲夜さんを解明すれば、霊圧を持たない奴でも虚に対抗することが出来るかもしれない・・・。それが出来れば、流魂街の民が虚に襲われて命を落とすことだってなくなるかもしれないんだぞ・・・。」
睦月はそう言ってため息を吐く。


『まぁ、無理でしょう。』
「そうなんだよな・・・。白哉さん、未だに咲夜さんの採血すら許してくれない・・・。何で、健康診断の採血は良くて、研究のためだと駄目なんだよ・・・。咲夜さんへの影響は同じだろうが。」


『ほら、母上は父上のものだから仕方ないよね。・・・僕の血でも研究すれば?息子だから何か分かるかもしれないよ?』
「そんなのとっくに研究してるっての!でも、お前も茶羅も橙晴も他と何も変わったところはなかった・・・。」


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