色彩
■ 27.容赦なし


「・・・さぁ、皆さん、とりあえずお座りになって?お疲れでしょう。」
青藍から離れた茶羅はそう言って彼らを座らせる。
「もう、くたくただよ。この一週間、ずっと走ったのだから。」
「蓮。お帰りなさい。」


「ただいま、茶羅。・・・兄さんたちは?」
「今、配達に行っているの。その内帰って来ると思うわ。玲奈さん、今日は非番だから顔を見せるかもしれないわね。」
「そっか。会うのが凄く久しぶりな気がする。」


「ふふ。そうでしょうね。・・・侑李さんにキリトさんに京さんに紫庵も無事で何よりですわ。それで、貴方が迅さんね?それから、陵さんに、リクさんに、暦さんに、ケンさん。」
言い当てられて彼らは目を丸くする。


「皆様初めまして。私は、南雲茶羅。青藍兄様の妹で、蓮の兄の妻です。兄が、大変お世話になりました。こんな兄でよろしければ、今後も関わって頂けると幸いにございます。」
茶羅はそう言って微笑む。


「今、お茶を淹れますわ。・・・師走、手伝いなさい。」
「えぇ・・・。俺にお帰りはないんですか、御嬢さん。」
「はいはい。お帰りなさい。睦月もお帰り。」
茶羅は適当にそう言って、睦月には笑みを向ける。


「あぁ。ただいま。茶羅、俺は甘いやつが良い。」
「解ったわ。・・・ほら、師走。早く。」
「はいはい。・・・まったく、御嬢さんたらご当主より人使いが荒い。」


「何か言ったかしら?」
ぼそりと言った師走に、茶羅は鋭い視線を向ける。
「いえ、何も。お手伝いさせて頂きます。」
師走はその視線を受けて、すぐに立ち上がったのだった。


それから暫く皆でお茶を飲んでいると、ガラリと扉が開かれた。
「茶羅、ただいま。何で、休業の看板が出ているの?」
『あ、燿だ。お帰り。』
「お帰り、兄さん。」


「うん。ただいま、青藍、蓮。」
燿はそう言って普通に入ってくる。
青藍たちが座るテーブルを通り過ぎてから、ピタリと動きを止めた。
慌てたように声のする方を振り返る。


「・・・青藍?蓮?」
『「ただいま。」』
「うん。お帰り。・・・じゃなくて!何でもう居るの!!??」
叫んだ燿に皆が苦笑する。


『ちょっと、急いで帰ってきました。』
青藍がそう言って笑うと、燿は青藍の肩をがしりと掴む。
「本当に青藍?」
『うん。』


「幽霊とかじゃないよね!?本物?ちゃんと生きてる?」
燿は言いながら青藍を確認する。
『あはは。本物だよ。蓮が迎えに来てくれたから、ちゃんと生きているよ。』


「あ、僕も幽霊とかじゃないからね?」
「それは解る!」
「解るんだ・・・。」
即答した燿に、蓮は苦笑する。


「だって、蓮たちが出かけてからまだ、二十日?くらいだよね?」
『そうみたいだね。』
「早すぎない?」


『あはは。睦月と師走の殺人ドリンクを飲まされながら、一週間ほど走りました。死ぬかと思った。色々な意味で。』
そう言って遠い目をした青藍に同意するように皆が頷く。


「殺人ドリンク言うな。栄養ドリンクだろ。お蔭でほぼ眠らずに一週間走っても生きてんだろうが。」
「うわ・・・。それは、災難だったね、青藍。殺人ドリンクはきつい・・・。」


『そうなんだよ。僕は死ぬんじゃないかと思ったよ・・・。』
「そうか。お帰り、青藍。良く帰って来たね。君の帰りを待っていたよ。」
『うん。ありがと、燿。ただいま。』


「・・・でもね、青藍?」
『何?』
「勝手に出て行くのは、どうかと思うなぁ、俺。」
『・・・。』
にっこりと言われて、青藍は固まる。


「ねぇ、青藍?何か、言うことがあると思わない?俺たちがどれほど心配したか、知らない青藍じゃないよね?その上、突然茶羅の体が光って、俺は寿命が縮んだよ?ああいうものがあるのなら、俺にも教えておいてほしいなぁ、とも思ったし?茶羅まで何かあるのかと思ったじゃないの。茶羅は茶羅で体が光ると同時に真っ青になるし。訳を聞けば、兄様としか言わないし。安曇様がこちらに来られて説明してくれたんだけどね?」


『そ、れは・・・だね・・・。』
「何か言うことは?」
にっこり。
その微笑は優しいのに瞳が笑っていないのを見て取って、青藍は軽く悲鳴を上げる。


『勝手に出て行ってごめんなさい。それに説明不足でした・・・。』
「うん。そうだよね。言わない茶羅も悪いけど、何も教えてくれなかった青藍が一番悪いよね?」
『はい・・・。』


「あと、蓮は知っていたんだよね?」
言いながら燿に見つめられて、蓮は冷や汗をかく。
「いや、その、それは・・・一回、見たことがある、というか・・・。」


「つまり、知っていたんだよね?」
「はい・・・。」
「・・・二人とも、後で俺の代わりに百華楼への配達に行くこと。」
『「はい。」』


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