色彩
■ 25.反撃の準備


『心強い。それじゃ、とりあえず、帰るまで護衛を頼むよ。どうせ、僕はそちらに気を向けている暇はないんでしょ?』
青藍はそう言って睦月と師走を見つめる。


「その通り。ちょっと、一仕事してもらわないといけないんでね。」
「というわけで、これ。」
師走はそう言って板状のものを取り出す。
『これは?』


「この中に情報が記録されている。全部目を通しておくように。」
「山ほどの書類の情報がその中に入っている。全力で読まないと帰るまでに読み終わらないぞ。走りながら読め。」
『あはは。容赦ないなぁ。』
「お互い様だろ。」


『違いない。・・・それで、此処から何日で帰る予定なのかな?』
「「七日間。」」
二人の返答に青藍以外の面々は目を丸くする。
『なるほど。帰りは早いわけだ。・・・準備は?』


「当然、出来ている。七日で琥珀庵まで行く。茶羅の所に一泊するから、瀞霊廷に入るのは八日後だな。」
『理由は?』
「すでに直接対決の準備が整っているからだ。」


「そして、八日後ならば、確実に皇梅園本人が瀞霊廷に居る。影武者じゃない、本人が。」
「「「「「!?」」」」」
睦月の言葉に、迅たち五人は目を見開く。


「あの人が影武者を立てていることに気が付いているのか・・・?」
「いや、知っていても、何時本人がいるかなど、解るはずがない・・・。」
迅と陵は信じられない様子だ。


「朽木家を、俺たちを舐めるなよ。」
「こっちは彼奴の痛い腹を探って、内蔵をひっくり返して隅々まで見てんだ。彼奴の行動を読むことなんて造作もない。」
当然のように言った二人に、蓮たちは苦笑する。


「僕、朽木家を怒らせるのだけは、遠慮したいよ。」
「俺もです。朽木家を怒らせると地獄を見ますからね。」
「まぁ、朽木家を怒らせると、各方面を怒らせるからね。」
「いや、青藍さんを怒らせるだけでも、各方面から色々と、あれですよね・・・。」
「あはは。確かに。青藍を怒らせると、尸魂界が敵になる勢いだもの。」


『ふふ。まぁ、愛し子だからね。僕に手を出すと、僕が怒らなくても、怖い人が怒るから。』
「あはは。青藍、笑って言っているけど、本当に怖いんだからね?」
「いや、蓮さんも笑ってますよ・・・。」
にこにこと会話をする青藍と蓮に、侑李は呆れたように呟く。


『でも、流石に今回は、僕自身も怒っているよ。・・・当然「私」もね。』
そう言った青藍の微笑みに、一同は小さく震える。
『・・・反撃の準備は整っているのだろう?』
「もちろん。皇家は、四十六室から消えるでしょう。」


「ナユラ殿は既に新任の選考に入っておられます。それから・・・。」
『それから?』
「皇家に霊王宮から霊王の名の元に招待状が届いております。梅園は八日後、霊王宮へと向かう予定です。」


『なるほど。だから八日後。それなら確実に本人が出てくるわけだ。』
青藍は納得した様子だ。
「えぇ。彼らは嬉々として霊王宮の招待を受けたそうです。」
「筆頭家臣自らお迎えにこられるとか。もちろん秘書官もご一緒です。」
睦月と師走は楽しげに言う。


『それはそれは。・・・地獄だろうねぇ。』
「文字通り、消される、でしょうね。」
「今回、筆頭家臣は霊王様に命じられたことしかやっていないとのこと。つまり、それは、霊王様のご意思ということです。」


『・・・彼らには少し申し訳ないが、あの方が動くのならば、私にはどうしようもないね。』
青藍は気の毒そうに言う。
「青藍様がそのように思う必要はございません。」


「彼等は不要と判断されたまで。彼らの間違った判断のお蔭で、世界は失われていくという先見があったようです。彼らのせいで青藍様は失われ、世界も失われるはずだった。ですが、青藍様は生き残っている。」
言われて青藍は安曇の言葉を思い出す。


『そうか。だから、安曇様は、私に髪紐を・・・。あの言葉は、そういうことか。』
「何か、あったので?」
呟くように言った青藍に、睦月は首を傾げる。


『いや。私たちは、何やら凄いことを成し遂げようとしているようだ。この髪紐は、安曇様がお祝いだと私に贈って来た。我らの未来を拓いたと。』
「それはつまり・・・。」


『どうやら私たちは、知らないうちに世界を守っていたようだ。だから、「お祝い」なのだろう。・・・皆のお蔭だね。帰ったら好きなだけ酒を振る舞おう。』
「「それは嬉しい。」」
二人は本当に嬉しそうに言う。


『相変わらずだねぇ。・・・もちろん、蓮たちも、迅さんたちも、好きなだけどうぞ。朽木邸で祝いの宴を開こう。皆を集めて。』
悪戯に笑った青藍に、皆が力を抜いた。


「なんだか、壮大な話を聞いた気がするけど、それは、聞かない方がいいのかな?」
陵は困ったように言う。
『帰れば解ることもあるでしょう。ですので、とりあえず、今は、帰ることを考えてください。』
「あはは。解ったよ。」


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