色彩
■ 20.ひと時の休息A


『覚えておいででしたよ、皆さんのこと。あ、母上も、ケンさんのことは見覚えがあると言っていました。』
「それは、有難いな・・・。」
「本当に、隊長たちってすごいよね。」
「何百年も前の話なのにな・・・。」


「まじか!あの副隊長が俺の顔を覚えている・・・。」
『はい。何か騒がしい奴だった、と。』
青藍の言葉に皆が吹き出す。
「そんな認識!?」


『いつも周りに人が集まっていて、それが羨ましかったなぁ、って。母上は、基本的に一人だったので。』
「そっか。それじゃあ、もっと、副隊長と関わればよかったなぁ。俺たちなんかが話しかけちゃいけない人だと思ってたんだけど。・・・副隊長は、十番隊に?」


『今は、十三番隊で平の隊士をやっています。まぁ、一応、十四郎殿付きの隊士、ということですが。あの方すぐに体調を崩すので。』
「なるほど。相変わらず、浮竹隊長とは仲が良いみたいだな。」
『えぇ。毎日のように口喧嘩が絶えません。』


「それで、京とキリトは俺の後輩か。今の隊長副隊長はどんな人なんだ?」
「隊長は・・・。」
「そうですねぇ・・・。」


「「たまに隊舎が凍ります。」」
「・・・ん?」
声を揃えた二人に、ケンは首を傾げる。


「あのですね、副隊長が、サボりの常習犯でですね・・・。」
「隊長はいつも苦労しておられるわけです。」
「ふむふむ。それで?」


「隊長の斬魄刀は氷雪系最強と呼ばれる代物でして。あ、史上最年少で隊長になった人なんですけど。」
「副隊長のおふざけとサボりが度を越すと、容赦ない冷気が漂い始めて、隊舎が凍りついてしまうのです・・・。」


「・・・なぁ、ラン。今の十番隊は大丈夫なのか?」
ケンは心配そうにいう。
『あはは。大丈夫ですよ。そんな時に、この二人の出番なのです。ね、二人とも?』
「そうそう。」
「そうなんだよね・・・。」
問われてキリトと京は苦笑しながら頷く。


「まず、僕らで副隊長を捕縛して机に座らせて筆を持たせて、仕事をさせます。僕は副隊長の捕縛、監視要員です。お蔭で鬼道と瞬歩の腕が上がって席官にまでなってしまいました・・・。」
京はそう言って遠い目をする。


「あはは。・・・それで、京が副隊長を監視している間に、僕が隊長に、寒くないですか、と、淹れたばかりなのに凍っているお茶を差し出したりしながら訴えるわけです。・・・すると、優しい隊長は隊士たちのために、副隊長の机の周りの氷だけ残して、他の部分は溶かしてくださるのです。隊士思いの優しい隊長でしょう?」


「おう・・・。お前ら、苦労してんだな・・・。」
ケンは同情するようにキリトと京を見る。
「毎日のように隊長の怒声が隊舎に響きますが、隊長も副隊長も、良い方ですよ。」
「青藍が十番隊の隊主室でお昼寝をしていても文句ひとつ言いませんからね。たとえ隊長が山ほどの書類整理をしているとしても。」
その言葉を聞いて、迅たち五人は一斉に青藍を見た。


『あはは。十番隊の隊主室は、僕が安心してお昼寝できる場所なのです。その辺で寝ていると攫われそうになるので。まぁ、幼い頃から出入りをしているというのもあるのですが。今の十番隊の隊長は、母上の教え子ですし。』


「青藍、朽木隊長の前でも寝てたことあるよな・・・。」
『父上が寝ていいって言った!そもそも僕が疲れる原因を作ったのは母上だもの。父上も共犯だったんだから、あのくらい許される!』


「甘やかされているよね、青藍。・・・でも、三番隊の副官室に眠りに来るの、やめない?僕は仕事をしているのに、目の前でお昼寝されると、たまに青藍叩き起こしたくなる。」
『いや、蓮。君はいつも叩き起こすじゃない!』


「すやすやと寝ているものだから、つい。」
『つい、で、叩き起こさないでよ・・・。』
「あはは。僕の前で寝ている青藍が悪いよね。」
そう言って笑う蓮を、青藍は不満げに見つめる。


『ちゃんと仕事は終わらせているのに。それに、イヅルさんは、寝ていいって言った。』
「あはは。うちの副隊長は優しいからね。」
『ローズさんだって、イヅルさんが良いっていえば寝ていいって言ってくれたのに。』


「鳳橋隊長は、青藍が寝ていることを口実に、子守唄が必要だよね、とかいって、演奏始めちゃうの!そうしたら仕事が進まないんだってば!」
『ローズさんが楽器好きなのは僕のせいじゃない。』
「そうなんだけど!!」


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