色彩
■ 18.えげつない

「豪紀さんも反則技ですけど、それ以前に青藍さんと橙晴が一緒に攻撃しちゃ駄目だと思うんですよ、おれは!お互いに増幅しちゃうんですからね!?」


『その僕らの攻撃を直接受けて、羽織を焦がす程度の十四郎殿の方が怖いと思うけどね。だって、狭い場所に閉じ込められて、僕と橙晴の攻撃にさらに自分の霊圧を乗せたものを受けて、あれだけだよ?焦げたのは羽織だけで本人には傷一つないんだから。いくら豪紀の反則技があっても、化け物としか。』


「それは確かにそうですが!!」
「あ、認めちゃうんだ。」
「つか、加賀美の反則技って何?」
侑李は首を傾げる。


『徒花。ついた蕾が咲かずに散る。僕、豪紀とも戦いたくないね。十四郎殿も二度と相手をしないって言っていた。』
「えぇ。ああいうのをえげつない、っていうんですよね・・・。」
青藍と紫庵はそう言って遠い目をする。


そんな彼らの前に、突如空間が開く。
「・・・あ、青藍様。無事に合流出来た様で何よりでございます。」
響鬼は出て来るなりそう言いながら、捕えられた二人の元へ歩き出す。
また来た・・・。
と、迅たちが内心呟いたのは言うまでもない。


『響鬼?どうしたの?』
「刺客の回収に。彼らを青藍様と一緒に帰らせるわけにはいきませんからね。睦月様と師走様が捕えた刺客たちも一緒に回収しております。」
『なるほど。』


「よろしければ青藍様方も回収いたしますが。」
『いや、自分で帰るよ・・・。』
「そうですか?それは残念です。早くお帰りになった方が皆喜ぶのですが。」


『それでも遠慮する。・・・そうそう、この間来た時、この五人がこっちに向かっていることを知っていたみたいじゃない?』
「・・・それは、ですね・・・。」
青藍ににっこりと問われて、響鬼は珍しく口籠る。


『何か、弁明は?』
「・・・だって、あそこで青藍様が加護を発動させるとは、思わなかったのです。」
響鬼は叱られた子どもが言い訳をするように呟く。
『いや、それだけじゃ、ないよね?他にも、知らせる方法があったよね?』
「・・・。」


『あの糞爺にも、後で追及します。覚悟しておくように伝えておいてね、響鬼。それからあの方にはお礼もしたいけど多少文句も言いたいな、僕は。あの方のことだから、面白がって黙っていたんだよね?だから、多少は良いよね?』
「はい・・・。」


『よし。じゃあ、行っていい。』
「失礼いたしました!!」
響鬼は二人を引っ掴むと逃げるように空間の中に飛び込んでいったのだった。


「・・・おれ、前言撤回しても、いいですか?」
「うん。いいよ。」
呟いた紫庵に、蓮は肯定の意を返す。


「青藍さんみたいなのを、えげつない、って、言いますよね・・・?」
「そうだね・・・。相手が誰だか解っていてあれだもの・・・。」
「そうだな・・・。こっちの寿命が縮みそうだぜ・・・。」
「容赦ないのは相変わらずのようだね・・・。」
「何処に居ても、青藍は青藍なんだね・・・。」
五人は小さく呟く。


「ランは・・・ああいう奴なのか?」
「「「「「はい。」」」」」
恐る恐る聞いた迅は全員に即答されて、顔を引き攣らせる。
「俺、選択を間違えたか・・・?」
そしてポツリと呟いたのだった。


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