色彩
■ 17.お見事


「さて、皆さん!行きますよー!!」
虚を避けながら一か所に誘導していた紫庵はそう叫ぶ。
すると他の四人は慌てて紫庵から距離をとった。


「・・・大津波!!」
そう言った瞬間、切先から出て来た波が虚たちを襲う。
虚たちはあっという間に呑みこまれ、生き残っていた虚は半減した。


「やっぱ、紫庵が一番怖い。」
「ほんと、危険物。」
「あはは。取扱注意だよねぇ。」
「味方で良かったよ。」


四人は口々に呟きながら虚を切り捨てる。
紫庵の攻撃を見た迅たち五人はあんぐりと口を上げて紫庵を見た。


「え・・・何が起こった・・・?一瞬で虚が半減したか・・・?」
「あの子、やばくない?あの速度と水量はおかしくない・・・?」
「化け物か・・・。一番、弱そうだと思ったが・・・。」
「信じられない・・・。」
「あれで、七席・・・?」
ケン、陵、リク、暦、迅は、唖然としながら彼らの戦いを見つめる。


『あはは。皆さん、浮竹隊長はご存知ですよね?』
青藍の問いに五人は頷く。
『あの大津波は、一撃で十四郎殿に始解をさせました。』
「「「「「!!!??」」」」」


『しかもそれは、三年以上前の話。僕がこちらに来る前の話です。そして、僕がこちらに来てから我が母の指導を受けた上に、我が弟が扱いたようですので、只の七席と思わない方がいいですよ。ま、彼の生まれを聞くと納得する部分もありますが。僕だって、彼と戦いたくはありません。』
驚きに目を丸くする五人に苦笑しながら、青藍は言う。


「何者だよ・・・。あれが次席って、お前の弟は一体・・・。」
『ふふ。我が弟はあれより怖いかもしれませんねぇ。』
楽しげに笑う青藍に、五人は背筋を震えさせる。


「それで、お前は弟より怖いのか?」
「さっきあの五人がそんなことを言ってたな。」
リクと暦に言われて、青藍は苦笑する。
『さて、それはどうでしょう。まだ、負けてはいないと思いますが。』
「怖いのか・・・。」
『ふふふ。』


そんな会話をしている間に、虚は殲滅されていた。
斬魄刀を鞘に収めて、五人は地上に降りてくる。
「ふぅ。終了。」
「蓮さん、おれ、一度にこんな多くの虚を斬ったのは初めてです!」


「そう?僕は何度かあるよ。」
「僕も。青藍が怪我をしたときとかこんな感じでした。大虚まで居て・・・。」
キリトは思い出したのかげんなりした表情をする。
「あはは。あれは、まぁ、あれだからね・・・。」
あの件が技術開発局の仕業であることを知る蓮はそんなキリトに苦笑する。


「でも、あれだけの虚を五人で殲滅するとは、咲夜さんに感謝ですね。」
「そうだね。帰ったら我らが師に報告に行こうか。」
「「「「はい!」」」」


『お見事。皆吃驚するぐらい強いね。まぁ、元々びっくり箱みたいなのも居るけど。』
青藍はそう言って紫庵を見る。
「おれ!?びっくり箱って、おれですか!?」
「え、他に誰が居るの?」


「紫庵以外にはいないでしょ。」
「だよな。」
「うん。紫庵以外には居ないよ。」
「そんな・・・!!!」
みんなに言われて紫庵はショックを受けた顔をする。


「おれなんかより、青藍さんや橙晴の方がよっぽど怖いのに!!一人だけでも鬼なのに、二人そろうと化け物なんです!!」
『おや、そんなことを言うのかい、久世君。』
「やめて!苗字呼びに戻るのは、やめてください!!おれ、泣きますよ!?」
にっこりと言った青藍に、紫庵は涙目になる。


『泣いてもいいけど、慰めてはあげないよ?』
「酷い!!!・・・青藍さん、橙晴と一緒に、始解した浮竹隊長の羽織焦がした人なのに。そんなの、怖いじゃないですか・・・。」
紫庵はポツリと言う。
その言葉に皆が目を見開いて青藍を見た。


『あは。あれは、豪紀のせいだと思う。』
見られた青藍はそう言って微笑む。



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