色彩
■ 16.数百の虚


「ラン。彼奴ら、本当に五人で相手をするつもりか?」
暦たちが青藍の隣にやってきて、五人を見上げる。
『えぇ。』


「かなり多いぞ?」
『彼らに数は通用しませんよ。見れば解ります。』
青藍は楽しげに五人を見上げる。
「確かに席官とは言っていたけれど・・・。」


『そうです。彼らは席官です。三番隊第三席南雲蓮、同じく第七席周防紫庵、九番隊第六席朝霧侑李、十番隊第三席篠原キリト、同じく第八席御剣京。うち、南雲蓮、篠原キリトは霊術院を首席で卒業。周防紫庵は次席卒業ですが、実質主席です。』


「実質?」
『えぇ。彼の代は我が弟が首席なのですが、まぁ、弟は我が家の教育を受けているので別格なのです。』
「別格って・・・。」
『霊術院に入学するときには、すでに始解が出来ましたので。』


「「「「「本当に?」」」」」
軽く言った青藍に、五人は目を丸くする。
『えぇ。それが我が家の教育方針です。』
「いや、それで行くと、お前も入学するときには始解が出来たということになるが・・・。」


『もちろん、出来ましたよ。本来ならば、霊術院に行く必要もありませんでしたし。』
「「「「「!?」」」」」
軽く言った青藍に五人は言葉をなくす。


『そして、他の二人も霊術院を上位で卒業しています。蓮と紫庵以外は、僕の同期です。そして、後二人、此処にはいませんが、おそらく僕のために奔走しているであろう心強い同期が居ます。僕の自慢の友人たちです。・・・彼らは、強いですよ。』


「皆、すぐに片付けてしまおう。行くよ!」
「「「「はい!」」」」


「闇夜を照らせ、月影!」
「馳せろ、青海波!」
「蝕め、荊姫!」
「翔けろ、颯天!」
「緋色に染めろ、曼珠沙華!」
蓮、紫庵、京、侑李、キリトは一斉に始解する。


月色に光る月影、波打つようにうねる青海波、棘のある鞭のような荊姫。
颯天は両手足を鎧で包み込む。
そして、刀身、柄、鍔、全てが紅色の曼珠沙華。
彼らの構えを見て、迅は目を瞠る。


「よく仕込まれている。良い構えだ。」
『ふふ。動き始めれば、もっと驚くことでしょう。その上、彼らの斬魄刀は、手強い。』
青藍がそう言うのとほぼ同時に、五人は動き出す。


「影縛り!!」
蓮が叫ぶと、虚は動けなくなったようだった。
「君たちの影、捕まえた。・・・影針!!!」
影から針のようなものが出てきて、動けなくなっている虚たちを突き刺していく。
あっという間に十数体の虚が消え去る。


「荊城!!」
京がそう言って荊姫を振るうと、十数体の虚を囲うように黒い荊が伸びていく。
「あ、荊に触ると、危ないよ?・・・何て、言わなくても解るか。」
そう言っている間に荊に囲まれた虚たちは荊に触れて昇華されていった。


「相変わらず怖いな、お前。」
そこへ侑李が現れて、苦笑しながらいう。
「五月蝿いな。仕方ないでしょ、荊姫なんだから。ねぇ、荊姫?」
京が問うと荊姫が返事をするように荊を動かす。


「そ。ま、俺もやりますかねぇ。・・・行くぜ、颯天。滔々演武!」
颯天の鎧が光を帯びて、侑李の動きが早くなる。
侑李が蹴りを繰り出すだけで、彼らの周りに居る虚たちが数体消え去った。
攻撃が当たらなくても、その腕と脚から繰り出される衝撃波だけで、虚を昇華してしまうのだ。


「・・・僕、侑李も結構怖いと思うんだよね。始解している侑李に近付くの嫌だもの。」
それを見た京はポツリと呟いて、次の虚を狙う。


「さて、と。このくらいでいいかな。」
先ほどから駆け回って多くの虚に傷をつけていたキリトは、そう言って動きを止める。
「・・・散花!!!」
キリトがそう言った瞬間、キリトによって傷をつけられていた虚たちは、血を吹き出しながら消滅していく。


その数、数十。
その様は、曼珠沙華が一面に咲いている様によく似ていた。
『・・・本物の曼珠沙華、ってね。何度見てもえげつない。』
青藍はその光景に思わず呟く。


「あの感じで、あの斬魄刀なの・・・。」
「怖いな・・・。」
陵とリクは顔を引き攣らせながら言う。


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