色彩
■ 15.撒き餌


「だが・・・。」
迅はそう言って四十六室からの刺客たちをチラリとみる。
「えぇ。こちらもそれは伺っております。それでも、共に帰って頂きます。証人として。京、キリト。」


「「はい。」」
二人は頷くと、生き残っている二人の刺客の方へと向かっていく。
「どうも。初めまして、と、一応言っておきます。」
「まぁ、よろしくするつもりはありませんけどね。」
微笑みながら二人に言われて、刺客たちは後ずさる。


「「・・・縛道の六十三、鎖条鎖縛!!!」」
逃げる間もなく、彼等は二人に捕えられた。
迅とケン以外の三人はそれに目を丸くした。
二人が奥歯を噛みしめる前に、猿轡をはめる。


「君たちに死なれては困るんだよね。四十六室からの刺客さん?」
「正直、とても腹が立っているけれど。・・・許さないよ、僕は。」
冷たく言ったキリトに、二人は悔しげに呻く。


「虚を呼ぶかい?それでもいいよ。数百の軍勢が押し寄せても、僕たち五人で十分だ。」
「まぁ、青藍も居るから、千の虚が来ても大丈夫だけどね。」
「そうそう。青藍が本気を出せば、それすら一人で倒すだろうけど。」
侑李は言いながら青藍をチラリとみる。


『あはは。それはちょっと厳しいかなぁ。』
「「「「嘘つき!!」」」」
笑いながらそう言った青藍に、蓮、キリト、侑李、京は声を揃えて言う。


「青藍さん、嘘は駄目ですよ・・・。おれ、見ましたよ、青藍さんの本性。」
紫庵は恐ろしげに青藍を見た。
『だから、あれは、本性じゃなくて、本質。』
「いや、僕も見たことあるけど、本性だよね。」


『本質だってば。本性っていうと、僕、性格悪いみたいじゃない。』
「え、否定出来たか、それ。」
「ねぇ、キリト。箍が外れた青藍とどっちが怖いの?僕、まだ青藍の本性見たことないんだよね。」


「そりゃあ・・・箍が外れた青藍の方がよっぽど怖いですけど。」
「そうなんだ。あれより怖くないなら、別にいいや。あれこそ本性だよね。」
「えぇ。僕はもう、あの時死ぬかと・・・。目の前で殺人を見るかと思いました。」
蓮とキリトはそう言って遠い目をする。


『こら!そこ二人!余計なことを言わない!見てよ、迅さんたちが僕を怪しげに見ているじゃないか!』
迅たちを指さしながら、青藍は心外だというようにいう。


「あ、皆さんもお気を付けて。この青藍、普段は阿呆ですが、スイッチ切り替わるとアレなんで。」
「まぁ、瀞霊廷に戻れば、すぐに解ると思いますけどね。」
「橙晴が、楽しげに準備を・・・。おれ、青藍さんたちだけは絶対に怒らせたくない。」


そんな会話をしていると、パキ、という音がする。
刺客が握っていた撒き餌を砕いたらしかった。
「あらら。やっぱり呼ぶか。めげないねぇ。」
「随分捨て身だね。身動きが取れないのに虚を呼ぶなんて。」
京とキリトは呆れたように言う。


「まぁ、いいんじゃねぇの。青藍に俺たちの実力を見せつけるいい機会じゃん?」
「蓮さん!おれ、技使ってもいいです?」
「使ってもいいけど、使う前に一声かけること。あと、僕らの近くで使わないこと。危険物だからね。」


「酷い!でも、ちゃんと声はかけます!!」
「よろしい。じゃ、行こうか。」
集まってきた虚を見ながら、五人は斬魄刀を鞘から抜いて構える。


やって来たのは虚の大群。
数百の虚が一直線に青藍たちの元へ向かってくる。
「俺たちも・・・。」
そう言って構える迅を青藍は制する。


『この辺の虚は結構手強いけれど、本当に五人で行けるかい?』
「「「「「もちろん!」」」」」
『・・・と、言うことなので、僕らは待機です。』
「だが・・・。」


『大丈夫ですよ。彼らは強い。何て言ったって、この三年、我が母にみっちりと仕込まれたそうですから。・・・皆!気を付けて!僕らはとりあえず待機ね!!』
「「「「「了解。」」」」」
五人は頷くと地面を蹴って飛び上がった。


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