色彩
■ 12.到着


さらに一週間ほど後。
「本当に・・・居た・・・。」
「まじで居た・・・。」
「いや、睦月さんの青藍探知機が流石だよね・・・。」
「うん・・・。いくら走っても霊圧を感じられないからちょっと疑ったけど。」
「草薙先生って、本当に何者なんです・・・?」


瀞霊廷を出て十日。
途中、青藍の加護が発動したという知らせを聞いて、足を速めたために、本来ならば二週間かけるところを十日で辿り着いたのだ。
次々と襲い来る刺客たちを、彼等は無傷でやり過ごしてきた。


蓮の斬魄刀である月影の力が強いのだが。
月影の前では闇夜に紛れるなど不可能なのだ。
その上、京の能力を持ってすれば、こちらは闇にまぎれることなど造作もないのだった。


「「「「「・・・居たー!!!!!」」」」」
突然そんな叫びが聞こえてきて、青藍は咄嗟に斬魄刀を手に取る。
他の面々も警戒を強めた。


・・・あれ?
でも、聞き覚えのある声だったような・・・。
青藍が内心で首を傾げていると、目の前に影が現れる。
彼らが着ているのは霊圧を遮断する外套。
フードを被っているために顔は見えないが、青藍は信じられないものを見るように、現れた五人を見つめる。


「何者だ!?」
『待ってください!』
すぐにでも切りかかりそうな迅たちを抑えて、青藍はまじまじと五人を見る。
見られた五人は外套のフードをとったのだった。


「青藍さんだ!本当にいた!」
「本当にこんなところに居るとは思わなかった。」
「あの青藍が、こんなところで生き延びられるなんて・・・。」
「信じられないな。こんなところに三年以上いたのか。あの、青藍が。」


「建物の中でしか生活したことの無い青藍が、こんな何もない場所で生活しているなんて。僕はそれだけで青藍が死ぬんじゃないかと思ったのに。」
「「「「確かに。」」」」
あたりを見回しながら五人は口々に言う。


『久世君、京、キリト、侑李、蓮・・・。』
「ふふ。宣言通り、迎えに来たよ、青藍。」
笑う蓮を、青藍は唖然と見つめる。


『迎えって、何・・・?』
「迎えは迎えだよ。」
『だって、六か月かかるって・・・。』


「橙晴が六か月かかるところを三か月で説得したんだよ。凄いよな、彼奴。」
「はい!橙晴は、凄い奴です!」
「まぁ、最後の方は泣き落としの名演技だったけどね。」
「そうそう。僕ら、映像見て笑っちゃった。」


「兄様が死んだなんて信じられないんです、だってさ。青藍が生きているのを知っていて、あれだけ出来るって、凄いよね。」
楽しげに言う五人に、青藍は目を丸くする。


「と、いう訳で、十日前に瀞霊廷を出て、迫りくる刺客を適当に相手しながらここまでやって来た訳だ。」
「本当は二週間かける予定だったんだけど、青藍の加護が働いたって話を聞いて、ちょっと急いじゃった。」


『十日前・・・?だって、そんなの、聞いてないよ・・・?』
「「「「「言ってないもの。」」」」」
声を揃えて言われて、青藍はまたもや唖然とする。
そして何かに気が付いたように握り拳を作って俯く。


『・・・十日前って、それじゃあ、響鬼もあの糞爺も、君たちがこっちに向かっていることを知っていた?』
その声が冷たくて、五人は苦笑する。
「あー、まぁ、知らないことはないよな・・・。」
「そうだね。僕らのこと見送りに来たし・・・。」
そんな青藍に、侑李と京が言いづらそうに言う。


『・・・あー、もう!!!そういうことか!!!だから次は瀞霊廷で会おう!?本当に糞爺だ!!!酷い!!鬼!!悪魔―!!!!』
十五夜の言葉を思い出したらしく、青藍は叫ぶ。


「あはは。まぁ、青藍に教えて、気を抜かれちゃ困るっていうね。」
「うんうん。橙晴が、ね。」
「そうです!橙晴がそのくらいのことをしてもいいだろう、と。」
「そうそう。黙って出て行った兄様が悪い!って、言い切った。」


「それで、朽木隊長が、それに同意して・・・まぁ、その後も色々な面々が、全力で隠してやろうとあの方の所に行って、あの方もそれに参加した、という訳。」
青藍は三度唖然とする。


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