色彩
■ 3.即断即決


「・・・ふ、ふふ・・・ははは!!!」
橙晴の様子に、咲夜は笑い出す。
釣られたように京楽と浮竹も笑い出した。


「青藍の一世一代の賭け、という訳か。」
呟くように言った白哉に、橙晴は大きく頷く。
「命を懸けた、人生最大の賭けです。僕らを信じてくれているからこそ、出来る賭けです。我らは、その信頼に応えなければなりません。」


「当主命令があったのだな?」
「はい。即断即決。躊躇いなく、迎えに来い、と。流石、我が朽木家の当主です。今の当主は紛れもなく兄様ですねぇ。僕も茶羅も思わず震えてしまいました。それで思わず頷いてしまった。必ず迎えに行く、と。」


「ふ、はは・・・。全く、恐ろしいことをするなぁ、我が子らは。」
「はは。そうだな。」
「まぁ、青藍は二年先でも、半年先でも、どちらにしろ命懸けだからねぇ。」
「当主命令では、仕方あるまい。」
呆れたように言いながらも、白哉は楽しげである。


「誰を迎えに行かせる気だ?」
「キリトさん、侑李さん、京さん、蓮。それから紫庵を。」
「席官を二人も出すとは、日番谷隊長と鳳橋隊長も気前がいいねぇ。」
「えぇ。この三年で身に着けた力を存分に発揮するいい機会だ、と。」


「なるほどな。檜佐木君もよく侑李を出すことに頷いたな。」
「その辺は、侑李さんが色々と修兵さんを脅し・・・いや、説得して頷かせました。」
「あはは。青藍の友人は心強いな。」


「雪乃ちゃんはともかく、豪紀君には声を掛けなかったのかい?」
「豪紀さんは、行きたいのは山々だが忙し過ぎて無理だ、と。まぁ、彼は、貴族を纏めるので忙しいですからねぇ。本当に、良い当主ですよね、豪紀さん。ですので、紫庵に行って貰います。」


「はは。そうか。だから紫庵が行くのか。」
「はい。春水さんも異論はありませんね?」
橙晴はそう言って京楽を見る。
「ないよ。あの子は行くと言ったんでしょ?」


「えぇ。自分でいいなら行きたい、と。自分も力になりたいのだ、と言っていました。」
「それじゃ、僕は何も言わないよ。危険だからと止めたりもしない。」
「では、派遣するのは彼等でいいですね?」
橙晴に問われて皆が頷く。


「彼奴らが並みの席官じゃないことぐらい、知っているからな。」
「そうだねぇ。皆、この三年、本当によく頑張ったよ。若い子の吸収力は凄いねぇ。」
「そうだな。それに、バランスもいい。斬拳走鬼、それから回道。全て揃っていると来た。それを考えての人選か?」
咲夜に問われた橙晴は頷く。


「それぞれ一番得意なものが異なっている者たちを選びました。まぁ、彼等は全体的にバランスのいい死神ですが。この三年、母上がみっちり訓練しただけのことはあります。」
「ふふ。自慢の教え子たちだ。青藍、きっと驚くぞ。」
「そうですね。・・・さて、僕は早速四十六室とお話をしてきます。」


「許可はもうとってあるのか?」
「はい。先ほど許可が下りました。」
「仕事が早いねぇ。」
京楽はそう言って笑う。


「これからが本当の勝負です。半年以内に、四十六室を説き伏せてみます。ナユラ殿にも半年以内に劣勢状態から脱して頂きます。・・・父上。」
橙晴はそう言って白哉を見た。


「当主の仕事は引き受けよう。任官状、その他の手配もしておく。」
「よろしくお願いします。それで、母上は・・・。」
「深冬と・・・雪乃もだな。任せておけ。私と白刃と黒刃がそばに居る。」
「えぇ。護衛を頼みます。母上自身も気を付けてくださいね。」
「あぁ。気を付けよう。」


「・・・深冬ちゃんは、行かないんだね。」
京楽はそう言って目を伏せる。
「はい。一応聞いたのですが、私は待つのが仕事だと。」
「それじゃ、必ず連れ帰らないとな。彼奴は、青藍が帰って来るまで絶対に泣かないぞ。」


「そうだな。泣きごと一つ言わない。」
「健気だねぇ。」
「ある意味強情ともいうがな。」
咲夜の言葉に皆が苦笑する。


「兄様、帰ってきたら、深冬に泣かれて、おろおろするんでしょうねぇ。」
「ふふ。想像できるな。それで、青藍も泣くんだろうな。あれは本来泣き虫なのだ。」
「えぇ。情けない姿を存分に見せて頂きましょう。それでは、僕は行って参ります。必ず説き伏せますので、皆様もご覚悟を。では、これで失礼します。」
橙晴はそう言って部屋を出て行く。


「・・・ふふ。」
その背中を見送って、咲夜はくすくすと笑いだす。
「どうした。」
そんな咲夜に白哉は怪訝そうに問う。


「ふふ。橙晴が、白哉に見える。背が伸びたせいだけではないな。・・・強くなった。」
「そうだな。本当に、よくやってくれている。」
白哉は何処となく嬉しげだ。


「はは。白哉に命令するくらいだもんな。」
「そうそう。橙晴の成長が、一番青藍を驚かせるかもね。」
「違いない。」
そんな浮竹と京楽の会話に小さく笑って、彼等は動き出したのだった。


[ prev / next ]
top
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -