色彩
■ 2.作戦会議


「ナユラ殿にお聞きしたところによると、中心となっているのは皇家だそうです。今、四十六室は阿万門家と皇家で二分されている。どちらが優勢かは、この書簡を見れば解ると思いますが。」
「こちらは劣勢ということか・・・。」


「えぇ。ナユラ殿も手を尽くしてくれては居るのですが、中々硬い頭に風穴を開けるのは困難なようでして。蛙の子は蛙だな、と吐き捨てておられました。」
「「「「確かに。」」」」
橙晴の言葉に皆が頷く。


「その上、兄様への刺客も第二陣が動き出している。この半年で毒を盛られたのは三回。それも相当強い毒だそうですよ。睦月の解毒薬がなければ、危なかったと。さらには、虚の数が徐々に増えている。戦う時間が長くなっているとの報告がありました。」
「青藍が帰ってきたら、覚えていろよ、四十六室の馬鹿共め・・・。」
咲夜は目を据わらせながらいう。


「そうですね。兄様の代わりに彼らを遠征隊に飛ばしてやりましょうか・・・。」
「あはは。そりゃあいいや。」
「そうだな。それはいい考えだ。」


「まぁ、それはそれとして。当初の予定では、兄様の立場はそのままに、兄様の死を受け入れたふりをして表面上は大人しくして、裏では四十六室を探って兄様が生存している証拠を彼等から引き出す、ということでしたが。」
橙晴はそう言って皆の顔を見まわす。


「そうだな。こちらはあくまで正攻法で行くしかない。」
「えぇ。ですが、それにも限界があります。長引けば、兄様をいつまで当主にしているのだ、と、その内またこのような素っ気ない書簡が来ることでしょう。それが来てしまえば、兄様を当主から外すしかなくなってしまう。」


「それは出来ないねぇ。だって、青藍が朽木家の当主だから彼のために動いている者たちも多いもの。貴族の者たちは、朽木家が当主を青藍のままにしていることの裏に、何か理由があると感じ取るはずだ。」
「そうです。それで、もしや朽木青藍は生きているのではないか、という考えに至る。」
「そう考えるならば、貴族の者たちは朽木家に恩を着せようと力を貸すだろうね。」


「つまり、青藍が当主でなくなると、青藍の死亡が真実だと見なされて、貴族からの協力は得られない。」
「得られたとしても、極少数だろうね。こちらは話せないことが多すぎるから。」
「ということは、青藍の帰りがさらに遅くなる。」


「最悪の場合、帰ることが出来ない。」
橙晴のその言葉に、沈黙が落ちる。


「ですので、その方針を転換します。」
「どうするんだ?」
「兄様を迎えに行けばいいのです。」


「「「「は?」」」」
橙晴の言葉に、四人は目を丸くする。
「・・・いや、それは、まぁ、難しいことでは、ないが。勝手に行く分には。」
「死人を正式に迎えに行かせてくれるとは思えないねぇ。」


「行かせてくれたとしても、青藍だけでなく、迎えに行く者たちも狙われるぞ。道中、どれだけの危険があるか、私は身を持って知っている。」
「どうするつもりだ?」
白哉に問われて、橙晴は口角を上げる。


「兄様が本当に死んだのかどうか、確認に行きたいと、願い出ます。それと同時に、生きていれば連れ帰り、当主として、六番隊第三席として認めるとの確約を取ってきましょう。」
橙晴の言葉に皆は目を丸くする。


「道中の危険は避けられませんが、その辺はすでに頼んであります。彼らの上司にも話はつけました。彼等なら、必ず、兄様を連れ帰ってきます。これが成功すれば、兄様の帰りはあと一年以内、いえ、今年中にも叶いましょう。つまり、後半年で、兄様が帰ってきます。」
自信ありげに言い放った橙晴に、白哉たちは唖然とする。


「当然、それを願い出れば、兄様の危険も増します。ですが、先ほど茶羅を通して兄様にお聞きしたところ、それで構わないと。後二年待つか、今年中に帰るために危険を冒すか、兄様は迷わず後者を取りました。恐らく、それだけ相手が手強いということです。あの兄様でさえ、後二年生き残るのは骨が折れる。そりゃあそうです。虚と戦いながら、自分の後ろに居る者たちと戦わなければならないのですから。ですから、兄様は後者に賭ける、と。」


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