色彩
■ 37.信頼

『母上は何の罪も犯してはいません。母上の力は他人が簡単に利用していいものではなく、簡単に利用できる代物でもない。それを解っていたから、母上は四十六室を拒絶した。自分が利用されれば、尸魂界の脅威になることを知っていたのです。自分はそう言う存在なのだと、自覚していました。』


「姿を、消したのは・・・。」
『宗野隊長が亡くなられたからです。宗野隊長という庇護者を失い、逃げるしかなかった。漣家や朽木家、十四郎殿や春水殿に迷惑をかけるのも嫌だったから。大切だからこそ頼ることが出来なかった。僕の母は、そういう人です。』


「あぁ・・・。そういう人だった・・・。あの人は一人で苦しんでいた・・・。」
『ふふ。良かった。母上を解ってくれている人が、ちゃんと居たのですねぇ。母上はそれで苦しみましたが、それだけでは、なかった。十四郎殿や春水殿たちだけでなく、貴方のように母上を解ってくれる人が居たのかもしれませんね。母上が気付かなかっただけで。』
柔らかく言う青藍に、迅は自分が情けなくなる。


『今、母上は、ちゃんと笑っています。きっと、今の母上を見たら吃驚すると思いますよ。多分、昔以上に美しいと思うでしょう。息子の僕でさえ、そう思います。母上は、過去を乗り越えました。ずっと抱えてきた闇は、すでに払拭されています。貴方を恨むことなどありません。だから、そんな顔をしないでください。』


困ったように微笑まれて、迅は顔を歪めた。
その微笑はかつて慕った主のそれによく似ていて、その顔は自分を救った人に似ている。
だから、俺は、お前を、殺せないのだ・・・。
殺してはいけないのだ・・・。


「・・・俺は、お前を守ろう。お前の迎えが来るまで、お前を守って見せる。そして、お前とともに、帰りたい・・・。帰って、漣副隊長に謝って、お前のために何かしたい。俺の罪が、それだけで消えるとは思わないが、そうしても、いいだろうか?」
先ほどまで泣きそうだった瞳が力を宿したことに気が付いて、青藍は微笑む。


『はい。母は貴方を許すでしょう。まぁ、一度くらい、父上にボロボロにされるかもしれませんが。それからは、僕のために動いて頂きたい。僕の迎えは必ず来ます。それを信じてもらえるのならば、僕は、貴方を連れていきましょう。』
「そうか・・・。」


『ですので、まずは、此処を生き残らなければなりません。この朽木青藍が貴方の身を引き受けましょう。僕を信じてもらえますか?』
そう問う真っ直ぐな瞳の何と美しいことだろう。
眩しいくらいに輝いて、温かく、強い瞳。


理桜様。
貴方も、こんな瞳をしておられました。
俺はこの瞳を信じようと思います。
どうか、この瞳の持ち主が、貴方と同じ運命を辿ることの無いように、お守りください。


「信じる。俺は、朽木青藍を信じよう。」
内心で祈りながら、迅は真っ直ぐに答える。
『いいでしょう。では、僕も貴方を信じます。よろしく頼みますよ。』
「あぁ。力を尽くそう。」


『それじゃ、腹ごしらえと行きますか。どうやら、ご飯が出来た様ですよ。』
言われて下を見ると、自分たちを探しているであろう姿がある。
それに笑って二人は下へと降りて行ったのだった。


2017.01.17 遠征編 完
〜再会編に続く〜

迅を味方に付けた青藍。
彼の戦いはまだまだ終わりません。
次回は再会編。
物語が大きく動きます。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました!


[ prev / next ]
top
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -