色彩
■ 31.願わくば


「・・・こんな答えじゃ、駄目か?」
困ったようにそう言った迅に、青藍は笑みを見せる。
『いえ。十分です。貴方が何処に居るかは、貴方が決めることですから。僕は貴方に選択肢を提供しているに過ぎません。自分の目で見て、決められるのがいいでしょう。』


「・・・そうか。そんなことを言われるのは、初めてだな。」
『そうですか?』
「俺は、従う側だからな。」
『それは大変ですねぇ。先に言っておきますけど、僕は、手厳しいですよ。』


「そうだろうなぁ。あの二人、相当仕込まれてるもんな。」
『あの二人を仕込んだのは我が両親です。』
「お前の両親も死神なのか?」
『はい。両親共に、死神です。』


「お前が当主ということは、父親も当主だったということだよな?」
『えぇ。母も、当主であったことがありますが。』
迅はその言葉に首を傾げる。
「どういうことだ?当主同士で婚姻を結んだのか?」


『いえ。我が母も僕と同じく厄介者でして。百年ほど、四十六室に追われていたことがあります。その際に、当主の座を捨てました。いや、その間、母は死んだことになっていたので、捨てたというのは少し違いますかね。まぁ、その厄介さ故に、戻って来てからも何かと彼らに絡まれているのですが。』


「だからお前は、ここに居るのか?」
『それは違います。僕が此処に居るのは、母のせいなどではありません。全く関係がないと言ったら嘘になりますが、これは、僕の問題なのです。言ったでしょう?僕は愛される者だと。』
青藍はそう言って空を見上げる。


『今、この時も、僕は、愛されているのです。愛されるが故に、恐れられるのですが。』
「相変わらずよく解らんな。」
『ふふ。時が来れば解ることもあるでしょう。・・・さて、虚が近づいてくるようです。移動しましょう。馬鹿正直に虚と戦い続けても、そう意味はありません。僕の使命は生き残ることですし。迅さんたちもそうでしょう?』


「そうだな。・・・よし。お前ら!!移動するぞ!!!」
迅の言葉で皆が荷物を背負って動き出す。
まだ、一年と少し。
少なくともあと四年、僕は此処で、生きなければならないのだ。
願わくば、次に誰かが来る時が、僕の戻る時でありますように。


深冬。
君の声が、聴きたい。
君の顔が、見たい。
君に触れたい。


だから、僕は、生き残ろう。
そしてもう一度、君に伝えよう。
尽きぬ想いを。
それを形にしたものを添えて。


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