色彩
■ 28.訳アリ


「ということは、俺や睦月とそう歳が変わらんのか。」
「そのようだな。」
「「「「「え・・・?」」」」」


「・・・何か?」
信じられないものを見るように視線を向けられて、睦月は彼らをチラリと見やる。


「・・・いや、いやいやいや。」
「可笑しいだろう。」
「そっちの師走さんはともかく、睦月さんは違うでしょ。」
「どう見てもかなり年下だろ。」
「本当に何者なんだよ・・・。」
五人はそういってまじまじと睦月を見る。


「邪魔だ。それ以上近寄るな。医者命令。」
睦月に言われて治療されている陵以外の面々は少し距離をとる。
「つか、俺、そんなに睦月と歳が離れているように見えるのか・・・?」
師走が地味に落ち込んでいるが、それに気付く者はない。


『ふふ。この二人、ほぼ双子ですよ?』
「やめろ。これと双子とか死にたくなる。」
「お前、それ、暴言っていうんだぞ。これ以上俺にダメージを与える気か。」
「その程度で傷つくような繊細さは持ち合わせていないだろう。」


「何だと!?お前の数倍は繊細だっての!」
「つまり、繊細さゼロって事だろ。」
睦月の言葉に師走は唖然とする。
「・・・お前、自分が繊細さゼロって自覚あったのか。」


「五月蝿いぞ。繊細さなんぞとうの昔に捨て去ったわ!!繊細さを持ち合わせていて、この阿呆の世話なんかできるか!!そんなものを持っていたら俺は自殺している!!」
睦月は青藍を指さしながら言う。
『え、睦月、酷い・・・。』


「・・・しかしまぁ、縁とは不思議なものですね、ラン様?」
『ふふ。そうだね。本当に不思議なものだよ。こんな場所で、そんな繋がりに出会うなど、思っても居なかった。』
「帰る時が、楽しみですねぇ。まぁ、彼らがラン様に付いてくるかどうかは別ですが。」


『ついて来て欲しいけれど。・・・迎え入れる準備は進めてくれているのかな?』
「当然。「あの方」から話は伺っておりますので。」
「俺、初めて見ましたよ。あの方が自分で歩いているの。」


「正直、あの姿を見るのは遠慮したいですが。」
「俺も。「右腕」だけ見えれば十分っていうか。それでも怖いっていうか。」
睦月と師走はそう言って遠い目をする。


『なるほど。君たちにもあの姿を見せましたか。君たちもあの方からは離れることが出来なさそうだ。睦月は解るが師走にも見せるとは。』
「はは。残念ながら俺と睦月は「対」なもので。」
『始めと終わり、か。君たちのお婆様は、それを狙ったのかな?』


「そうかも知れません。此奴は今、実質二番目ですが、「如月」にはしないそうなので。」
「まぁ、なる気もありませんけどね。「師走」も遠慮したいくらいで。ラン様、あの婆さんに一筆書いてくれません?」
師走は疲れたように言う。


『師走を「師走」から解放しろって?』
「そうそう。破門でもしてやれって。」
『あはは!それは無理でしょ。師走は既に師走だもの。ほら、戸籍上も師走にしちゃったし。もちろん、睦月も睦月にしちゃったし、弥生さんも弥生さんにしちゃったけど。』


「戸籍まで書き換えるとは、ラン様、普通じゃないですよね。」
「まぁ、俺たちに戸籍何てあってないようなもんだったけどな。」
『君たちの戸籍を書き換えたのは父上だよ。我が父は、君たちを手に入れることに躊躇いがなかったということさ。』


「・・・だからお前ら、何者だよ。」
三人の会話に迅は呆れたように呟く。
「今戸籍を書き換えたとか、そんな話がありました・・・?」
「なぁ、陵。ランは、本当に、何もしていないのに、ここに来たのだろうか・・・。」
「うーん・・・。会話を聞く限り、何もしていないという訳じゃなさそうだねぇ。」
「ランも訳アリだが、そっちの二人も訳アリのようだな・・・。」
ケン、暦、陵、リクはそう言いながら三人を見る。


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