色彩
■ 25.お見通し

「お前が霊圧を遮断する外套を着て行ったっていうから、お前の霊圧を辿ることは難しいと思ったんだよ。そしたら睦月が、じゃあ耳飾りの気配を辿ろう、と。」
「で、専用の装置を作って、持ってきたわけだ。俺たちはそれを頼りにここに来たんだよ。その耳飾りの気配は霊圧とは少し違うからな。この外套でも遮断できないらしい。それが証明できた。次はもっと精度を上げてくる。」


『・・・ふは。僕がこれを外すわけがないと思った?』
「当たり前だろ。お前は死んでもそれを外さない。お前からは絶対に「暁」を手放さないのと同じだ。」
『睦月は、何でもお見通し?』


「何年一緒に居ると思ってんだよ。ついでに言うと、「暁」もお前を待っているぞ。勝手に出て行ったんだ。帰ったら泣かれる覚悟をしておけ。」
言われて青藍は俯く。


『・・・元気に、している?』
「あぁ。」
『笑っている?』
「あぁ。」
『泣いたり、していない?』
「あぁ。」


『・・・そっか。よかったぁ。』
青藍は愛しげに耳飾りに触れる。
「お前のために、ずっと、前を向いている。泣く暇もないくらい、動いているのも事実だが。彼奴もずっと、それを付けている。お前を信じているんだからな。」
『・・・うん。』


「それじゃ、この話は終わりだ。積もる話は後回し。ちょっと、仕事を頼む。・・・お願いできますか、せ・・・ラン様。」
『話せ。』
睦月が片膝をついて畏まって言うと、青藍の雰囲気が変わる。
その様子に迅たちは息を呑んだ。


「諸事情により、次期当主を立てることとなりました。」
「ラン様には、その許可を頂きたく。」
『誰が立つ?』
「弟君が。」


『そうか。許可する。』
「理由は聞かないので?」
『聞く必要があるか?』
「いえ、ありませんね。では、こちらにご署名を。あ、皆さん、ちょっと後ろを向いていてください。」


師走に言われて迅たちは後ろを向く。
振り返ってその名を見たい衝動に駆られながらも、振り向くことはしない。


「あと、此処に判を押してください。・・・ついでにこれらも確認を。」
「それから、ご自分で嘆願書をお書きになってくださると・・・。」
『嘆願書?』
「今、絶賛嘆願書攻め中でして。今頃あそこは嘆願書で議場が埋まっているでしょうねぇ。」


「でも、「彼ら」は嘆願書に目を通さなければならない。何て言ったって、それがあの人たちの数少ない仕事ですからね。あ、これが下書きです。このまま写して頂ければ結構ですので。」


『解った。・・・しかし、それは、お気の毒。』
「嘆願書に目を通すのでてんてこ舞いだとか。その隙に色々と無茶をしております。」
「我らが婆様も生き生きと参加しています。」


『婆様・・・。あの方を、捕まえたの、君たち。』
青藍は目を丸くする。
「捕まえました。一か月半ほど全力で探し回って、見つけてから二日間全力で追いかけっこを致しました。」


『二日間、あの方と全力で追いかけっこかぁ。お疲れ様。』
そう言って青藍は苦笑する。
「いえ。それで何とか弟君に顔を合わせると話をつけまして。」
「そのくせ弟君の顔を見ただけで、協力を申し出たのですが。婆様曰く、ラン様よりよっぽど当主らしいと。」


『五月蝿いな。自覚はあるよ。』
青藍はじろりと睦月を見る。
「そう睨まないでくださいよ。そう言ったのは俺たちじゃありません。」


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