色彩
■ 23.救出


それからさらに五日ほど後。
うとうととしていた青藍は、外が騒がしいことに気が付いて、目を覚ます。
『何かあったのかな・・・?』
そう呟きながら外を見るも、窓からは何も見えない。


恐らく入口の方が騒がしいのだ。
何があってもいいように、青藍は耳を澄ませながら縄が何時でも切れるように構える。
段々と、騒がしさが近付いて来ているようだった。
数人の霊圧が近付いてくる。


その中によく見知った霊圧がある気がして、青藍は、そんなことはないと首を横に振る。
迅の霊圧もそこにあることに気が付いて、漸く彼らがやって来たのだと、小さく笑う。
でもやはり、近づく霊圧の中に馴染みがあり過ぎる見知った霊圧があって、青藍は首を傾げた。


ガン!!
誰かが扉を蹴ったらしく、そんな音が響いて、扉が倒れてくる。


「・・・この、馬鹿が・・・。」
「こんなところでも捕まってんのか。大変だなぁ、お前。」
逆光で顔は見えないが、その声はどう考えても睦月と師走である。
青藍はポカンとして、目を丸くする。
そんな青藍に構わず、二人は部屋に足を踏み入れて、青藍の傍に寄る。


「・・・お、ま、え、は、馬鹿かー!!!!」
睦月は叫びながら青藍にげんこつを落とした。
『いっ!?何するの・・・ごめんなさい!!やめて!睦月!!落ち着いて!!!』
文句を言おうとした青藍に、睦月は再び拳を振り上げる。


「あーあ。やっぱりこうなるか・・・。」
そんな二人に師走はため息を吐いた。


「用があって来てみれば、攫われただと!?ふざけんな!!こんな縄一本お前なら千切れるだろうが!どうせこいつらが迎えに来るかどうか試してたんだろうが、危うく俺たちはお前とすれ違う所だったんだぞ!!普通に走って二週間かかるところを、昼夜駈けて一週間で来たってのに、お前が居なくてどうすんだよ、この馬鹿!!」
言いながら睦月は再び拳を振り下ろす。


『いだっ!!』
その痛みに青藍は涙目になる。
「この、馬鹿・・・。会えなかったら、どうしようかと、思ったんだぞ・・・。」
睦月は泣きそうにそう言って、力が抜けたようにしゃがみこむ。


「あーあ、睦月のこと泣かせたー。」
「泣いてないっつーの!!」
からかうように言った師走に、睦月は叫ぶように言う。


「そう騒ぐなよ・・・。ま、流石に、俺も胆が冷えた。此奴ら、お前のこと教えてくれなくてな。俺たちがお前の知り合いだってことを信じさせるのに時間がかかった。」
師走は言いながら青藍の縄を解く。


「自分の身を賭けて試すようなことはするな。お前を戻すために、どんだけ働いてると思ってんだよ。こちとら二週間碌に寝てないんだからな?」
叱るように言われて、青藍は泣きそうになる。


『本当に、睦月と、師走だ・・・。』
「当たり前だろうが。」
「寝ぼけてんのか?」
「俺たちも、お前のこと探してたんだぞ。」
『迅さん・・・。』


「まぁ、この二人に後れを取ったが。」
「この二人、何者なの?」
「俺たちが一週間以上かけても見つけられなかったのに、この二人、来て一刻でランのこと見つけちゃってさ。」
「いや、この二人よりも、ランの方が何者なんだって話だけどな。」
迅の後ろから暦、ケン、陵、リクが顔を出してそう言った。
『皆さん・・・。』


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