色彩
■ 29.一番落ち着く場所

ルキアが朽木邸に帰ると、出迎えは使用人だけだった。
いつもならば、橙晴や茶羅が飛びついてくるのに。
少し寂しさを感じつつもルキアは草履を脱ぐ。
「橙晴たちはどうしたのだ?」
「青藍様とお部屋でお遊びになって居られます。」


「そうか。青藍が帰ってきているのだったな。」
ルキアはそういって、部屋に向かった。
それにしても、青藍が居るならば、私が帰ったことに気が付くはず。
一体三人は何をしているのだろうか。
そんなことを考えながら廊下を歩き、彼らが居る部屋の襖をあけた。
そしてルキアはいつものお出迎えがなかった理由に気が付くのだった。


「まったく、三人そろってこんなところで寝ているとは・・・。」
ルキアは苦笑しつつ、使用人に何か掛けるものを持ってくるように言う。
三人は青藍を真ん中にして、寄り添うように眠っている。
二人を守るように青藍は腕を回し、二人は青藍の着物を固く握りしめていた。


そっくりな寝顔に、やっぱり兄弟なのだな、とルキアは微笑んだ。
すやすやと眠る姿があまりにも気持ちが良さそうで、ルキアは思わず畳の上に寝転んだ。
そして三人の寝顔を近くで見つめる。
最近任務が多かったせいか、疲れているようだ。


だがこの寝顔を見ることが出来るのならば、明日からも頑張ることが出来る。
そんなことを考えているうちにルキアは瞼が重くなり、自然と眠りのなかに引き込まれていった。


青藍は誰かの気配を感じて、目を覚ました。
『ん・・・。だれ・・・?』
「申し訳ありません、起こしてしまいましたか?」
『ちよ。・・・姉さまは帰ってきた?』


「はい。お隣でお眠りになっていますよ。」
青藍はそう言われて横を向いた。
『あれ、本当だ。いつ帰ってきたの?』
「今さっき帰ったばかりでございます。お疲れのようですね。」


『うん。こんなところで眠っているなんて珍しい。ちよ、夕餉の時間、少し遅らせてもらってもいいかい?』
「かしこまりました。板場にはそのように言っておきます。」
『うん。ありがと。』
「では私はこれで失礼いたします。」
ちよはそう言って静かに部屋を出ていく。


それを見送った青藍は、双子を起こさないように起き上がる。
そしてまだ眠っている三人が風邪をひかないように、自分に掛けられていた薄掛けをかぶせた。
それから青藍は自分の部屋に行き、書物を手に取ると、三人が眠る部屋に戻りその横で読み始める。


久しぶりに、ゆっくりとした静かな時間だ。
寮というものはあちらこちらから人の気配がして、色々な物音が聞こえてくる。
それとは反対の静かさに、青藍は邸に帰ってきたことを実感する。


やっぱり僕は、この邸の方がいいな。
一日中友人たちと一緒に居られるのは楽しいが、一番落ち着くのはやはり家族と居る時間だ。
三人のゆっくりとした呼吸を聞きながら、青藍は読書に没頭した。
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