色彩
■ 20.移ろう四季


「・・・ふ、ははは!!!」
「「?」」
突然笑い出した四季に、橙晴と睦月は目を丸くする。
「あの、婆様?どうしたんで・・・?」
笑い続ける四季に睦月は恐る恐る問う。


「ふ、はは・・・。朽木家とは恐ろしや。あの父にして、この子らか。なるほどのう。」
「父を、ご存じですか?」
「一度だけ、顔を合わせたことがある。あれは、睦月も漣の巫女も引き受けると言った。利用などすることもしないと。睦月など、おまけのように言われたな。」
そこまで言って、四季は小さく笑う。


「五月蝿いですね。白哉さんはそう言う人です。」
「そうだのう。・・・橙晴と、言ったな?」
「はい。」


「・・・儂を使え。」
橙晴をひたと見つめて、四季は真っ直ぐに言う。
言われた橙晴は目を丸くして、何かを言おうとしたが、口を閉じる。
そして、すこし沈黙して、口を開いた。


「はい。」
橙晴もまた真っ直ぐに言った。
それを見て、四季は状況を理解する。
何故、どうして、と、儂に問う時間すら惜しいのだ。
一刻も早く、朽木青藍を取り戻すために。


・・・あの師走があれ程必死になるのも頷ける。
確かに、急がねばならぬ。
あの愛し子を救うためには、一刻も早く瀞霊廷に呼び戻すしかないのだから。
・・・それでも、助かるかどうか。


じゃが、睦月、弥生、師走の願いを聞き入れぬわけにもいかぬか・・・。
儂はもう、「睦月」ではない。
移ろう「四季」が捕まったのだから、それもまた世界の意思か・・・。
四季は内心で呟いて、口を開いた。


「睦月と師走の分は儂が動こう。二人の仕事を儂に回すがよい。それでその身が空いた分、二人を他のことに回せ。それでいいな?」
「はい。十分でございます。」


「そうか。礼は酒でいい。当然、朽木家に部屋を用意するのだろうな?」
「もちろん。すぐに準備いたしましょう。」
「では、儂は早速少し出かけてくる。後で、そなたらの両親の顔も見たい。」
「えぇ。時間を作りましょう。」
「ではの。」


「・・・あの婆様が人の下に付いた?」
姿を消した四季に、睦月が唖然とした様子で呟く。
「お前、何かしたか・・・?」
睦月は橙晴に問う。


「何も・・・。挨拶しただけだよね・・・?」
橙晴は首を傾げる。
「そうだよな・・・。」
「・・・まぁ、何でもいいや。とにかく、四季様がお力を貸してくれるらしいから、睦月は他の仕事を頼むよ。」


「あ、あぁ・・・。」
睦月は内心で首を傾げつつ、とにかく手伝ってくれるのならばいいか、と、頭を切り替えたのだった。


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