色彩
■ 14.やり辛い

「・・・そんなこと、出来るわけがないだろう。」
『いいえ。出来ます。四十六室が貴方にどんな命を下しているのか、知らない僕ではありませんが、必ず帰ります。・・・僕を殺すことが、簡単だと思わないでください。』


真顔になって雰囲気が変わった青藍に、迅は息を呑む。
・・・こいつ、只者じゃないな。


「・・・そうか。そこまで知っていて、お前はここに来たわけだ。」
『えぇ。四十六室は余程僕が怖いらしい。もっとも、その命を出したのは四十六室の一部の者。その命令が本当に有効なものなのかは、甚だ疑問ですが。僕を殺しても殺さなくても、貴方は此処に居るしかないのですから。』


目の前に居る男の言う通りだ。
全く、嫌になる。
迅は内心で呟く。


『そうそう。それから、貴方の部下たちなど僕の敵ではないと、言っておきます。貴方の後ろに居る方々が、全員で掛かってきても僕の方が強いと思いますよ。』
「なんだと!?」
「馬鹿にしてんのか!?」
騒ぎ出した者たちを迅が手を上げて制する。


「やめろ。此奴の言う通りだ。お前らだけじゃない。俺でも敵わん。」
『おや、それはどうでしょうねぇ。』
「解っているくせに何を言う。お前は、敵の力量を測れない奴じゃない。」
『ふふ。それは、迅さんも同じでしょう。』


「・・・っち。やり辛い奴が来ちまったもんだ。で、お前、何が出来る?」
『斬拳走鬼は、一通り。それから、回道も。まぁ、鬼道の方が得意ですかね。』
「そうか。回道が出来るとは助かるな。早速で悪いが、移動する。俺たちを狙うのは虚だけじゃあないんでな。」
迅はそう言いながら、気配を探りつつ歩を進め始める。


『そのようですね。死神とは恨まれますから。』
青藍は知っていたとばかりに歩を進めた。
不逞の輩が遠くから遠征隊を見つめているのである。
「気付いていたか。」


『はい。後をつけられるのは日常茶飯事でして。何せ、この顔ですから。その辺で昼寝をしていると、目が覚めたとき両手足が拘束されていたりするのです。』
「なるほどな。お前を殺さずとも、お前を捕まえてどこかに売るという手もあるのか。」


『あはは。それは嫌です。』
笑った青藍を見て、迅は力を抜く。
「ま、よろしく、と、言っておこう、ラン。」
『えぇ。よろしくお願いいたします。』


「・・・で、お前は本当に何者だよ。」
『・・・そうですねぇ。僕もこれほどまでとは、思いませんでした。』
そう言う二人の前には無残な姿になった魚。
包丁を握っているのは青藍。


「・・・一応聞くが、お前、包丁を持ったことは?」
『ありません!』
「いや、堂々と答えるなよ・・・。」
『だって、僕が包丁を握ったら、包丁を使う人が一人仕事を失います!』
「・・・なるほど。見た目通り、どこぞの坊ちゃんなんだな。」
『はい!』


「返事はいいんだよなぁ、お前。」
迅はそう言ってため息を吐く。
『返事しないと怒られるんですよ。知らないんですか?』
「いや、知っているが。」


これ、さっきの奴と同一人物か・・・?
迅は怪しげに青藍を見る。
包丁を片手に、何が悪かったのかと真剣に考えている様子である。


「お前、さっき、虚を十数体、白打だけで倒したよな?」
『そうですねぇ。正確には十七体です。』
「だよな・・・。」


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