色彩
■ 13.遠征隊


出発してから二週間。
瀞霊廷を出てから、青藍は毎日走り続けた。
流魂街八十地区更木すらも通り過ぎた。
そして漸く、遠征部隊の者との待ち合わせ場所に着いたのである。


『・・・遠いなぁ。』
待ち合わせ場所であろう木の根元に座って、青藍は一息つく。
見上げた空は今日も晴れ渡っていて、青藍は小さく微笑んだ。


のんびりと空を見上げていた青藍だが、気配を感じて、その場から飛びあがる。
先ほどまで居た場所に短剣が刺さって、青藍は警戒する。
十人程がこちらの様子を伺っているようだった。
暫く睨みあっていると、向こうから人が進み出てきた。
無精ひげを生やした屈強そうな男である。


「どうやら、今度の新入りは手練れのようだな。俺は部隊長の迅だ。」
『初めまして。僕は・・・。』
「あぁ、本名は知らせるな。それでいい。ここに来る連中はみんな訳アリだからな。」
『そうですか。では、僕のことはランとお呼びください。』


「そうか。・・・顔を見せてもらえるか。」
言われて青藍は外套のフードをとる。
そこから現れた美しい顔に、迅は目を丸くした。


「・・・へぇ。随分綺麗な奴が来たもんだ。」
迅はそう言って口角を上げる。
楽しげだが、嫌な感じはしない。
この人はたぶん、大丈夫だろう。
相手を観察しながら、青藍はそう感じる。


『そりゃどうも。』
「生意気そうな奴だな。」
『迅さんは面倒見が良さそうですねぇ。』
「はは。訳アリの面倒を見るのが仕事でね。」


『なるほど。それは大変だ。僕、面倒を見られる方なので、よろしくお願いします。』
「面倒を掛けさせるつもりか。」
『そのつもりがなくても面倒な奴でして。』


「ふぅん?厄介そうな奴だが・・・お前、何でここに来た?」
迅はそう言って青藍の瞳を見つめる。
何かを測るようなその瞳は、厳しさを湛えている。
『名前は聞かないのに、ここへ来た理由は聞くのですねぇ。』


「こちらにはお前の情報が来ていないからな。一応何をしたのかだけ聞いておくことにしている。」
『・・・何も。』
「何も?」


『貴方の言う通り、僕は厄介者でしてね。飛ばされてきたのですよ。』
青藍はそう言って笑う。
「・・・四十六室か?」
迅は眉を顰めながら問う。


『はい。僕は、四十六室の皆様に信用がないので、忠誠を示せ、とのことです。』
「そうか。あそこは変わらんな。」
『えぇ。ですので、忠誠とやらを示しにこんなところまではるばるやって来た訳です。』
「ほう?四十六室を恨んでいる訳でもなさそうだな。」


『恨む?恨むほど興味もない。そもそも、あの方々を恨んで、何かが変わりますか?少なくとも今はあの方々に期待するだけ無駄です。貴方なら、お解りのはずでしょう。』
そう言った青藍を迅はまじまじと見つめる。


「・・・お前は、俺を「知っている」のか?」
『失礼ながら、少々調べさせていただきました。どんな方なのかと思いまして。』
「ほう?つまり、お前は、それだけのことが出来る地位にあったということか。」
『ふふ。あった、ではなく、今もその地位にありますよ。』


「どういうことだ?」
『まぁ、それは追々。とりあえず、五年ほどはこちらに居るでしょう。』
「五年?お前、帰るつもりなのか?」
迅は目を丸くする。
『はい。』
はっきりと頷いた青藍に、迅は言葉をなくす。


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