色彩
■ 12.すげぇ奴


青藍が流魂街に出ようと瀞霊廷の門へ向かうと、そこに一つの人影があった。
「やっぱり一人で来たか。」
『冬獅郎さん・・・。』
壁に背を預けて腕を組み、冬獅郎は青藍を見つめる。


「今さら止めはしない。ここから先まで見送ったりもしない。」
『はい。』
「・・・俺も、力を尽くす。それまで、待っていろ。帰りは、全員で、お前を出迎えてやる。」
『はい。よろしくお願いします。』


「だから、お前は迷わず生きろ。何が何でも、生き残れ。いいな?」
力強く言われて、青藍は微笑む。
『当然です。僕の居場所はここですから。・・・行ってきます。』
青藍はそう言うと歩き出した。


「・・・はぁ。で、お前ら、全員集合か。いい加減出て来いよ。」
冬獅郎はその姿を見送って、溜め息を吐くと、隠れていた面々に声を掛けた。
「気付いていたか。」
咲夜のそんな声と共に複数の影が姿を見せる。


そこに居るのは深冬以外の朽木家の面々。
浮竹や京楽他隊長副隊長数名。
豪紀、キリト、侑李、京、蓮、晴、紫庵。
それから睦月に師走。
当然のように、茶羅と燿も姿を見せていた。


「なるほどな。彼奴のために、これだけの奴らが動くか。」
冬獅郎は呆れたように言う。


「これだけではない。まだまだ居るぞ。隊士たちから沢山の署名も届いている。見てみろ。六番隊の隊士だけじゃない。今手元にあるだけで、全隊士の三分の一ほど集まっている。まだ続々と署名が集まっている様だぞ。」
咲夜が取り出した書類は、隊士の署名で埋め尽くされていた。


「・・・すげぇな。」
冬獅郎は思わず呟く。
「死神諸君は普段の青藍を見ているからな。」
「まぁな。彼奴は朽木家ということを抜きにしても三席では勿体ない。」
「あぁ。」


「貴族の方も集まっていますよ。朽木家、加賀美家、京楽家、周防家、漣家、朝比奈家・・・。他にも多くの方が兄様のために動き始めています。」
「俺たちの同期ももちろん動いているぞ。」
「そうそう。僕らの同期ってば、咲ちゃん馬鹿だからね。咲ちゃんの子どもを自分の子どもの様に思っているんだ。」
京楽は楽しげに言う。


「騒がしい奴らではあるが、頼りにしていいぞ、橙晴。」
「では、存分に働いて貰いましょう。」
「あはは。橙晴ってば流石だよねぇ。」


「当然です。今、朽木家当主の権限を握っているのは僕です。皆さん、覚悟しておいてください。目標は五年です。五年で、兄様をここに連れ戻します。皆様には全力で馬車馬の如く働いて貰いますので。」


「はは。俺たちが全力で働いて五年もかかるか。」
「それじゃ、青藍にも頑張って貰わないとねぇ。」
「青藍なら大丈夫だ。私と白哉の子だぞ?」
咲夜は自慢げに言う。


「そうだな。あれなら五年ぐらい訳ないだろう。」
「えぇ。兄様だけでも化け物なのに、兄様には怖い加護がありますからね。」
「そうそう。兄様には怖い加護がありますもの。大丈夫ですわ。」
「確かにそうだな。青藍ならば大丈夫だろう。」


「さてと、それじゃ、早速働きますかねぇ。」
「そうだな。全く、朽木家は全員人使いが荒い。じゃ、俺たちはもう行くぞ。」
睦月と師走はそう言って姿を消す。


「おやおや、働き者だねぇ。」
「そうだな。」
そんな二人に浮竹と京楽は苦笑した。


「ま、僕らも早起きしたわけだし、せっかくだから、作戦会議と行こうじゃないの。」
「そうですね。皆様、時間の許す限り、お付き合いください。今後の大まかな計画をお話しいたします。」
橙晴の言葉に皆が頷く。


「・・・ほんと、すげぇ奴だよ、彼奴は。」
楽しげに動き出した面々を見て、冬獅郎は呟く。
この場に居る誰もが、青藍が戻らないとは思っていないのだ。
悲しみも苦しみも隠して、笑っている。


青藍が、信じると言っただけで。
それだけで、彼奴のために動くのだ。
彼奴の信頼に応えようと、前を向くのだ。
そして、彼等は言葉通り、全力で青藍を取り戻す。


そこに自分が入っていることが不思議だな。
冬獅郎は内心で呟く。
昔は、雛森と婆ちゃん以外は、皆、俺の敵だったのに。
俺も成長したということか。
そう思って、内心苦笑しながら、冬獅郎もまた青藍のために動き出したのだった。


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