色彩
■ 28.可愛い双子

「・・・青藍って不思議。青藍に言われると本当にそうな気がする。」
『ふふ。ただの勘だけどね。』
「それでもそこまで読み取ろうとすることが凄いわ。それも朽木家の教育の賜物なのかしら?」


『いや、これは遺伝かな。父上も母上も他人の心情を読み取るのが上手くてね。父上なんかは読み取りすぎてしまうんだろう。読み取りすぎて、かける言葉が見つからなくて、沈黙する。父上が冷たく見られてしまうことがあるのはそのせいだと思うよ。不器用な人なんだよ。』
「そうなのね。じゃあもともと口数が少ない訳ではないの?」


『子供の頃はそうだったみたいだよ。とってもやんちゃですごく手を焼いたって十四郎殿が言っていたから。』
「ふふ。想像できないわ。」
『僕も。でも酔うと饒舌になることはあるかな。』
「そうなのね。」


『・・・さて、僕はここで。この鍵は明日返してくれればいいよ。合鍵を作ってもいいし。』
青藍はそう言って鍵を差し出す。
「わかったわ。でも・・・青藍はどうやって術院の中に入るの?」
『ふふふ。大丈夫だよ。』


「他にも抜け道があるのね?」
『まぁね。』
「教えてはくれないの?」
『あはは。これは秘密。』


「青藍ってどれ程のことを知っていて、どこまで計算しているのか解らないわ。その笑顔で何でも隠してしまいそうだもの。」
『さて、それはどうだろう。一つだけ言えるのは、僕は無計画には笑わない、ということかな。じゃあ、また明日。朝の稽古は休むね。』
「解ったわ。また明日。」


雪乃と別れた青藍は朽木邸に来ていた。
「「「「お帰りなさいませ、青藍様。」」」」
『ただいま。』
青藍が邸に入ると、使用人が出迎える。


青藍が帰ることを聞きつけていたらしい。
朽木家の情報網とは一体どうなっているのやら・・・。
青藍は内心で苦笑しつつ、草履を脱いだ。
『清家、父上と母上は?』
「帰られておりますが、お部屋にこもったままにございます。」


『やっぱりね。じゃあ、橙晴と茶羅は膨れているのかな?』
「そのようでございます。」
『そう。今日はルキア姉さまも帰ってくるから、父上たちは放っておいて、四人で過ごすよ。』
「では、そのように。」


「青藍兄様!お帰りなさい!」
「お帰りなさい!」
それまで膨れていた二人は青藍の姿を見て顔を輝かせた。
『ただいま、茶羅、橙晴。』


「今日はここに泊まるのですか?」
『うん。だから今日は二人と一緒に居られるよ。それからルキア姉さまも帰ってくる。』
「本当ですか?」
『本当だよ。だから父上たちなんか放って置いて四人で楽しく過ごそうね。』
「はい!」


「父上も母上も帰ってきてからずっとお部屋に居るのです。茶羅はとっても退屈でした。」
「僕も。父上と母上とお話したかったのに。」
二人はそう言って頬を膨らませる。


『あはは。じゃあ、僕が遊んであげるし、お話してあげよう。』
「青藍兄様、大好き!」
茶羅はそう言って青藍に抱き着いた。
『ふふ。僕も茶羅が大好きだよ。』
「僕だって兄様のこと大好きだもん!」
橙晴もまた青藍に抱き着いた。


『橙晴のことも大好きだよ。』
「橙晴様、茶羅様、青藍様はまだお怪我が治っていません。あまりご無理をさせてはいけませぬよ。」
その様子をみていた清家が窘めるように言った。
『大丈夫だよ、清家。そんなに心配しないで。』
「しかし・・・。」


「兄様、痛い?」
「泣いちゃう?」
清家の言葉をきいた二人は不安そうに青藍を見上げた。
『大丈夫だよ。ほら、そんな顔しないの。二人が笑ってくれたら、兄様は元気になるんだけどなぁ。』
青藍はそう言って二人をくすぐり始める。


「「あはは!」」
「きゃー!兄様、くすぐったいです!」
「兄様、おやめください!」
『ほらほら、もっと笑って。』


青藍は楽しそうに二人をくすぐっている。
清家は戯れる三人にため息を吐きつつも、微笑ましそうに見つめた。
それから朽木邸にはしばらくの間、双子の笑い声が響いていたのだった。
[ prev / next ]
top
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -