色彩
■ 7.約束


「じゃあ、本当に、青藍は何もしていないじゃないか・・・。」
「それなのに、どうして、そんな、冷静なの・・・。」
「・・・解ってたんだな?こんな日が来ることを。」
侑李に確信を持っていわれて、青藍は頷いた。


『・・・うん。いつかは、こうなるだろうと、思っていた。あの日・・・母上が四十六室に拘束されたとき、暴走した母上を見て、それを止めた自分を見て、霊妃様の舞を見て、それで、僕が愛し子だということが広まって。ましてや僕の卍解はああいう姿で。四十六室が僕を恐れないわけがない。あの時そう思って、ずっと、準備をしていた。』


「・・・深冬はどうするの。」
蓮に静かに問われて、青藍は少し顔を歪める。
『・・・置いていく。深冬には、ここに居てもらう。待っていて、くれるって。だから僕は、何をしてでも、帰ってくるよ。何年かかるか解らないけれど、ちゃんと、戻ってくる。』


「・・・青藍は、狡いよ。」
「何で、僕たちに何も言わないで、決めちゃうの・・・。」
「どうして、こんな理不尽なことをそんな簡単に、受け入れるんだよ・・・。」
「少しくらい、逃げたっていいのに・・・。」
四人に悔しげに言われて、青藍は目を伏せる。


『ごめん。でも、どんなに逃げたって、僕は、愛し子なんだ。何処に居たって、僕は、愛し子なんだよ・・・。当主からは逃げられても、愛し子という定めからは逃げられない。受け入れるしか、ないんだ。どんなに理不尽でも、僕には、これ以外の選択をすることが、出来ない。』
悔しげな青藍の声に、皆が拳を握りしめた。


『でも、僕がこの選択をするのは、苦しみを甘んじて受け入れようとするのは、諦めたからじゃない。君たちを信じるからだ。皆が、僕のために力を貸してくれると、信じるからだ。僕は、君たちを信じるよ。皆を信じて、生き残って見せる。そして、必ず、戻ってくる。約束するから。お願いだから、逃げてもいいとは、言わないで・・・。』


そう言った青藍の表情が苦しげで、彼は本当に苦しいのだと、四人は悟る。
そして、何故青藍なのだろうと、思わずにはいられなかった。
「・・・絶対、戻ってくるんだよ。」
蓮は呟くように言う。


『うん。』
「僕らが、四十六室を認めさせてやるから。」
『うん。』
「その前に死んだりしたら許さないから。」
『うん。』


「・・・深冬ちゃんを泣かせたら、許さないから。そんなことになったら、僕が青藍殴りに行くからね。」
そう言ったキリトの瞳から涙が落ちる。
『うん。解っているよ、キリト。』


「あんまり戻ってこなかったら、俺たちで連れ戻しに行くからな。」
「誰が何といおうと、引き摺ってでも、連れて帰るから。」
『うん。』


「何処に居ても、青藍は一人じゃないからね。それを忘れないでね?」
『うん。僕には皆が居る。帰る場所もある。だから、行ってくるね。』
青藍はそう言って小さく微笑む。


「うん。僕ら、待っているから。迎えに行っちゃうかもしれないけど。」
『ふふ。うん。ありがとう。』


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