色彩
■ 6.愛し子ということ


『・・・はぁ。』
会議を終えて部屋を出ると、青藍はため息を吐く。
そしておもむろに縁に座った。


「・・・お疲れですか、青藍様。」
『佐奈・・・。』
タイミングを計ったように佐奈が現れて、青藍にお茶を差し出す。


『ありがとう。』
「いえ。」
お茶を啜って一息つくと、青藍は佐奈を見る。


『佐奈。少し、お願いがあるのだけれど。』
「佐奈で良ければなんなりと。」
『じゃあ、隣においで。』
青藍に言われて、斜め後ろに居た佐奈は青藍の隣に移動する。


『・・・深冬の、ことなのだけれど。』
「はい。」
『一人に、しないであげて。』
「はい。」


『もしも、の話で、万に一つもないかもしれないのだけれど。・・・深冬が、待つのが辛くなって、離縁すると言ったら、味方になってあげて。誰もが深冬を責めたとしても、佐奈だけは責めないであげて。』
「・・・はい。」
青藍の言葉に切なげな表情を浮かべて、佐奈は頷く。


『そんな顔しないでよ。僕は、佐奈にも笑っていて欲しいよ。佐奈は、朽木家が好きだと言ってくれたから。いつも、僕の我が儘で振り回しているのに。』
「いえ。青藍様は、我が儘などではありません。いつも、佐奈に笑顔を見せてくださいます。それが、どれほど、佐奈の力になるか・・・。」


『・・・佐奈。』
「はい。」
『今も、朽木家が好きかい?』
「勿論でございます。」
即答した佐奈に、青藍は小さく笑う。


『そう。それじゃあ、これからもよろしくね、佐奈。』
「はい。」
『それから、いつもありがとう。』
青藍はそう言って微笑む。
「お礼を言うのは佐奈の方でございます。」


『ふふ。君の距離感は、とても楽だ。近すぎず、遠すぎず、踏み込みすぎず、ひとつ呼吸をすることが出来る。・・・さて、一息吐いたことだし、皆に叱られに行かなくちゃ。じゃあね、佐奈。深冬のこと、頼むよ。』
「畏まりました。」


「「「「青藍!」」」」
青藍が客間の障子を開けると、噛みつくように名を呼ぶ者たちがある。
侑李、京、キリト、蓮の四人である。


『待たせて悪いね。家臣たちとの会議があったものだから。』
「そんなのどうでもいいんだよ。」
「あの辞令、本当なの?」
「遠征隊に行くこと、決めているってどういうことなの?」
「一人で行くわけ?」
怒りをその瞳に宿らせながら、四人は青藍に詰め寄る。


『・・・うん。』
「なんでだよ!?」
「何で、青藍が行かなくちゃならないの?」
「青藍が何をしたっていうのさ!!」
侑李、キリト、京は青藍に掴みかかる勢いだ。


『・・・僕が、愛し子で、死神だからだよ。過去、死神に全滅させられた四十六室は、僕が怖いんだ。彼らの先代が、そして彼ら自身が恐れる母上を止めた僕が。彼等は、あの時、自らが世界の崩壊を招こうとしたことを、知らない。知ったとしても、それを認めることはないだろう。』
青藍は静かに答える。


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