色彩
■ 2.怒りと悔しさ


「理解できないから怖い?まさか。四十六室は、己の立場を母上や兄様に脅かされるのが怖いのでしょう。」
「私は・・・。」
ナユラはそんなことはないと首を振る。


「・・・そうだとしても、ナユラ殿「しか」違わないんです。我が朽木家がどれほど忠誠を示しても、貴女以外の四十六室は、我らの言葉には耳を傾けては下さらない。」
橙晴の言葉に、ナユラは言葉を失う。


これほどまでに信頼がないのだ、我ら四十六室は。
四十六室は、これまで一体何をしてきたのだろう・・・。
我らの存在意義すら疑いそうになる・・・。
ナユラはそう思わずにはいられない。


「それなのに、忠誠を示せというのか。我らの忠誠を信じることはしないくせに。・・・四十六室は、何も、変わっていない。ただただ怯えて、権力を振りかざす。己の弱さを認めずに。」
硬く握られた橙晴の拳は、怒りに震えている。


「すまない。何とか止めようと動いたのだが、私の力が至らなかった・・・。位は高いくせに、これほど無力とは。しかし、これは既に決まってしまったことだ。決定は覆らない。どうか、この決定を受け入れてはくれないだろうか。受け入れてもらわねば、私は、本当に、何も、出来なくなってしまう。」
悔しさに身を震わせながらそう言ったナユラに、この人も繋がれているのだ、と、青藍はどこか他人事のように思う。


「そんなに、兄様を、僕らを、苦しめたいのですか?兄様が、どれだけ、苦しんでいると思っているのですか!!!貴方方の知らないところで、どれほど、尸魂界に尽力していると!!!その身を削って、僕らを守っているというのに!!!」


「・・・私が・・・私が代わりに行く!」
咲夜はそう言ってナユラを見る。
「それはならぬ。」
しかし、ナユラが答える前に白哉がそれを拒否する。


「何故だ!」
そんな白哉に、咲夜は掴みかかった。
「行かせぬ。」
「青藍が、行くくらいなら、私が行く。四十六室が怖いのは、青藍ではなく私のはずだ!!私が遠くに居れば、そうすれば皆が、幸せになる・・・。」
咲夜は泣きそうになりながら白哉の袂を掴む。


「馬鹿者!まだそんなことを言うか!」
白哉が珍しく声を荒げる。
ビリビリとした声が、室内に響いた。
「じゃあ、どうすればいいのだ。青藍に、行けというのか?」
そう言う咲夜の瞳から涙が零れ落ちる。


「青藍に、一人で行けというのか・・・?理由を付けてはいるが、結局、左遷ということだろう?青藍に、全てを背負わせて、私には、ぬくぬくと瀞霊廷で生きろと、いうのか。」
問われて白哉は小さく呻く。


「・・・私とて、それを望んでなどおらぬ。だが、だからと言って、そなたを行かせるわけにはいかぬ。そなたも、青藍も行かせぬ。」
「だが、これはもう、決まっていることなのだ。四十六室は決定を覆さない。私は、それを、身を持って知っている!!どれほど訴えても、覆ることはなかった・・・。」
咲夜は悔しげに俯く。
ぽたり、と、涙が床に落ちた。


「それでも・・・それでも、そなたは、行かせぬ。」
白哉の苦しげな呟きに、沈黙が落ちた。


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