色彩
■ 1.異動命令


「・・・失礼する。」
いつも通りに仕事を熟していた青藍の元に、ナユラが姿を見せた。
その後ろには、数人の護衛が控えている。
ナユラの表情は硬く、何か良くない知らせだと、青藍は感じ取った。


『どう、されましたか?』
「・・・六番隊隊長朽木白哉に話がある。」
『それは、ナユラ殿の個人的な面会でしょうか。』
「いや。」


短く答えて首を横に振ったナユラに、青藍は表情を強張らせた。
それはつまり。
四十六室の賢者が一人、阿万門ナユラとしての面会、ということか。
若しくは、四十六室の代表としての面会だ・・・。


「青藍殿と橙晴殿、それから、出来ることならば、朽木咲夜、朽木ルキアの同席も願いたい。「我ら」の決定を、お話しする。」
ナユラは奥歯を噛みしめるように、どことなく悔しげに言う。


『・・・畏まりました。すぐに、お呼び致します。応接室にて、お待ちくださいませ。』
「あぁ。」
頷いたナユラを見て、青藍は隊士に案内を頼む。
隊士に付いて行くナユラを見送って、それから橙晴を見た。


『橙晴。』
「はい。」
『母上とルキア姉さまをここに。今日は隊舎にいらっしゃるはずです。』
「すぐに呼んで参ります。」
橙晴はそう言って駈け出していく。


『・・・はぁ。やはり、貴方方はそれを選択するのですね・・・。』
青藍はそう小さく呟いて、白哉の元へ向かったのだった。


「・・・急な呼び出しに応じて頂き、感謝する。」
呼ばれた面々が集まると、ナユラはそう言って重い口を開いた。
「そちらから出向くとは、一体何事だ。」
「四十六室の決定とは何なのだ?また、私か?」
白哉と咲夜はそう言ってナユラを見つめる。


「いえ。」
『それでは、僕ですね?』
青藍は確信を持っていう。
その言葉に暫し沈黙して、ナユラは重々しく頷いた。


「今回、我ら四十六室は、ある決定を下した。」
「決定とは、一体何なのです?」
「・・・六番隊第三席朽木青藍に遠征部隊への異動を命じる。」
ナユラの言葉に沈黙が落ちる。


「・・・何故だ。何故、青藍が遠征部隊へ行かねばならぬ。青藍が何をしたというのだ。」
怒りを抑えながら、白哉は静かに問う。
「何もしていない。」
「では何故・・・!!!」


「咲夜殿の件で、我らは見てしまった。あの時、青藍殿は、あの咲夜殿を、その身一つで、止めたのだ。隊長格が手を貸したとはいえ、その力は恐怖を与えるほどには大きく、そして霊王宮の者が、朽木家には愛し子がいると口にした。その愛し子は、青藍殿だ。だが、霊王宮がいくら認めようと、その愛し子は尸魂界を揺るがす存在であることに変わりはない。」


「それがどうして青藍を遠征に行かせるという話になるのだ。」
「・・・四十六室は、愛し子が本当に尸魂界に忠誠を誓った者なのか、疑いを持っている。」
ナユラは絞り出すように言う。
彼女自身、この決定に憤りを感じているようだった。


「我らの先代は、死神に弑された。その事実が、今の四十六室を疑心暗鬼にさせている。・・・それ故、遠征に赴き、愛し子が尸魂界に忠誠を誓っていることを、我らに示せと。」


「それは、この話を断れば、兄様を尸魂界の敵とみなす、ということですか?」
橙晴もまた静かに問う。
「・・・そういうことだ。」


「・・・四十六室は、遠征部隊に行くということが、どういうことか知った上で、兄様に行けというのか。兄様に忠誠を態度で示せと?」
「あぁ。」
「あの母上を止めた兄様は、間違いなく尸魂界を守ったというのに?貴方方はそれを目の前で見たでしょう。」


「そうは思えぬ者もあるのだ。私でさえ、あの姿は、恐ろしいのだ・・・。敵意がないと解っていても。理性では、抑えられぬ恐怖なのだ。青藍殿や咲夜殿の力は、我らには、理解が及ばぬ。理解できぬからこそ、怖いのだ・・・。」
ナユラは悔しげな声を出す。

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