色彩
■ 27.面白い人

『父上が面白いとは、朝比奈様も面白い方ですね。』
「そうですか?」
『えぇ。父上が興味を持つのもよく解ります。』
「朽木のご当主が興味を?お話したのは数回ですが・・・。」


『いつもいつも楽しげに他人の観察をしていると。』
「なるほど。私も観察されていたわけですね。」
秋良はそういって苦笑する。
『ふふ。父上は人を見るのも仕事ですからね。・・・それで、父上は観察対象としてどうですか?』


「なかなか面白いですよ。表情は豊かではありませんが、感情が表に出やすいのではありませんか?貴族の集会などもいつも面倒そうにしていらっしゃいます。」
『えぇ。その通りです。』
「それから、奥方のことを聞かれるのがお嫌いなようですね。お蔭で我々は奥方についてほとんど知ることが出来ません。」


『父上は母上が大切なのですよ。母上に興味があるのならば、死神になることをお勧めします。』
青藍はそう言って悪戯っぽく笑う。
「なるほど。青藍様から聞き出すことも出来ないようですね。」


『ふふ。僕も母上が大切ですからね。ただ、母上は周りが思っているような人ではありませんよ。ねぇ、雪乃?』
「そうね。私も驚いたわ。でも、あのくらいじゃないと朽木様の奥方は務まらないのかもしれないわ。」


『僕もそう思うよ。』
「ほう。なかなか興味深い方のようですねぇ。」
『はい。あの父上が敵わない人ですからね。』
「お父様では太刀打ちできないわ。」
「ふふふ。そうか。」


『・・・さて、今日はこの辺で失礼させていただきます。父上に興味があるならば、近寄ってみるのもいいかも知れませんよ。意外な一面を知ることが出来るかもしれません。』
青藍は微笑みながら言った。
「なるほど。考えておきましょう。」


『ふふ。よろしくお願いします。では、失礼します。』
「雪乃、青藍様を見送って差し上げなさい。」
「言われなくてもそのつもりです。」
「相変わらず気が強い。」
秋良は困ったように言った。


「あら、青藍は強い女性の方がお好みなのよ?」
『あはは。僕の周りには強い女性が多いもので。でも皆さん格好いい女性なのです。』
「そうですか。また機会があればお話ししてくださいね。」
『はい。』
「じゃあもう行くわ。私は霊術院に帰るから。」
「あぁ。頑張りなさい。」


『・・・ふふふ。』
朝比奈家の門を出て暫く経ってから青藍は笑い出した。
「あら、どうしたの?」
『いや、秋良様って面白い人だね。』
「そうかしら?」


『下手に出ているようでずっとこちらを観察していたよ。見た目は優しいけど、中々食えない人だ。僕から母上の話を聞き出そうとしていたし。それに、父上に近付いてもいいと言ったのに、考えておきます、だなんて。普通の貴族ならあり得ないね。皆朽木家に近付きたくて仕方ないんだから。』


「まさかそれに気が付いていたから、死神になることをお勧めします、なんて言ったの?」
『うん。』
「いつも母君のことを普通に話してくれるからおかしいなぁとは思ったのだけれど。」
『ふふふ。ちょっと意地が悪かったかな。』


「構わないわ。お父様も意地が悪いもの。私の婚約で心を痛めていた、なんてあれ嘘よ。婚約の話があった時、一も二もなく承諾しちゃったんだから。」
『あはは。それは半分本当で半分嘘だと思うよ。』
「どういうこと?」


『家のことを考えれば、加賀美家との婚約はそう悪い話じゃない。でも、家のために娘を縛るのは本意ではないはずだよ。普通の親ならね。見たところ君のことは大切に思っているようだったし。死神を目指すことも反対されたんじゃない?』
「何でわかるの?」
青藍の言葉に雪乃は目を丸くした。


『ふふ。死神はたとえ四番隊でも危険な職業であることには変わりないからね。心配しているのさ。だから、早く結婚でもして邸の中で安全に暮らしてほしかったんじゃないかな。婚約を急いだ理由もそこにある。つまり、君には幸せになってほしいってことだよね。』
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