色彩
■ 18.違和感

「・・・白哉。」
「なんだ?」
「青藍は、今日の所は大丈夫そうだな。」
咲夜の呟きに、白哉は頷きを返す。


住之江と対峙するという話を聞いていた二人は、青藍の卍解の気配を感じて慌ててやって来た。
しかし、笑みを見せている青藍を見て、院生たちに見せるために卍解したのだということに気付く。
ほっと一息ついて、二人で苦笑を零したのは、先ほどのこと。


「・・・まぁ、あの様子では、まだまだだがな。」
ルキアに抱き着いた青藍を見て、白哉は苦笑するように言う。
「あはは。可愛くていいじゃないか。あっという間に成長されてしまうと、寂しいしな。・・・白哉の成長期、私も見たかったなぁ。」
後悔したような呟きに、白哉は小さく笑う。


「姿を消していたそなたが悪いのだ。」
「それは・・・そうなのだけど。君を一人にしたことは、本当に後悔している。」
「二度と離れるなよ。」
「うん。それは約束する。あの子たちの成長も、見届けたいしな。」
咲夜の言葉に、白哉は頷きを返す。


「・・・孫は、まだ遠そうだが。」
「そうだな・・・。橙晴と茶羅はともかく、青藍は、まだ先だろうな。覚悟が決まらないというのも解るが、深冬が知ったら怒るんだろうなぁ。」
怒った深冬を想像して、咲夜は苦笑する。


「それもまた、青藍には良い薬だろう。あれを繋ぎとめられるのは、深冬だ。・・・だが、私は時々、青藍がふらりと消えてしまいそうで、怖い。」
「私もだ。近頃、嫌な気配がする。」
「嫌な気配?」


「最近、四十六室が静かすぎるとは思わないか?」
咲夜の瞳は不安げに揺れている。
「・・・私も、それには少し違和感がある。最近は、四十六室から直接言い渡される任務もないのだろう?」


「あぁ。・・・ねぇ、白哉。あの子は、急に居なくなったりしないよな?」
不安げな咲夜に、白哉は即答できなかった。
この微かな違和感は、この先の青藍に幸せを与えるのか、不幸をもたらすのか。
それが、解らない。


「・・・信じるほかあるまい。私たちが信じなくて、どうするというのだ。」
「だって、あの子は、一人になる準備を怠らない。・・・少し前、深冬が、一人で泣いていた。理由を聞いても、口を結んだままで・・・。」


「それは、青藍が関係しているのか。」
「恐らく。深冬と青藍との間で、何らかの話が成されたことは、間違いない。」
「一人になる準備、か・・・。」
「あの子は一体、どんな未来を見ているのだ?霊妃様と何をお話ししている?あの方は、青藍と何を話しているのか、教えては下さらないのだ。」


目を伏せた咲夜に、白哉は手を伸ばす。
何ともいえない不安が、彼女をまたどこかへ行かせてしまいそうで、怖くなったのだ。
彼女を抱き寄せて、白哉は思案する。


青藍が、何らかの準備を進めていることは、間違いない。
今はまだ、深冬との子を成すことすらしようとはしない。
睦月が密かに伝えてきたのは、薬によって青藍の体を制御し、子が出来ぬようにしている、ということだった。


己の子どもに背負わせるものの大きさをよく知っているために、迷いがある、というのはよく解る。
しかし、わざわざ子が出来ぬようにするとは、どういうことなのだろうか。
青藍がそこまでする理由とは、一体・・・。
何を考えているのだ、青藍・・・。

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