色彩
■ 17.ゆっくりと

「・・・ふ、ははは!」
「浮竹隊長・・・?どうされたのですか・・・?」
突然笑い出した浮竹に、ルキアは目を丸くする。


「ははは・・・。いや、何でもないぞ。ちょっと、自分の鈍さにおかしくなっただけだ。」
「今更気が付いたんで?」
笑い声に近付いてきた睦月は、呆れたように言う。


「はは。そうだなぁ。そうらしい。」
「らしいって、何ですか・・・。」
「らしい、は、らしい、だ。良いだろう別に。・・・青藍!やっぱりお前は、怖い奴だな!」


『えぇ!?酷い!卍解しろと言ったのは、十四郎殿なのに!!それに、人の卍解を見て何笑っているのですか!!』
「何でもないぞー。お前らしくて面白くなっただけだ!お前はやっぱり雷だよなぁ。」
『何ですか、それ。何だかいい意味じゃなさそうですけど。』


「そうか?いい意味で雷だと思ったんだが。」
『・・・なんかこう、複雑なのですが。』
笑う浮竹に、青藍は不満げだ。


「青藍が雷なのは事実だから仕方ないと思うわよー!!」
「そうそう。兄様は雷ですからねー!!」
「せ、青藍さん!本当に、怖いです!!」
「じゃあ、見なきゃいいだろ・・・。」
豪紀は呆れたように言う。


「いや、思わず、見ちゃうんですってば!だって、綺麗ですもん!」
「ははは。紫庵のそういう所は父親に似たようだな。」
「えぇ!?そ、そんな、ことは・・・ない、と、思いたい、です。」
「希望になってるぞ。さては自覚があるな?」


「そ、そんなことはありませんよ!?違いますからね、草薙先生!!」
「はいはい。そういうことにしてやるよ。・・・ほら、青藍!そろそろ終わりだ!帰るぞ!お前はこれからやることがあるだろう。」
騒ぎ出した紫庵を適当にあしらって、睦月は青藍に声を掛ける。


『あぁ、そうだったね・・・。全く、面倒臭い・・・。』
「いいから早くしろ。あれが朽木家に居るだけで、俺は気色悪くて仕方がない。さっさと終わらせて、早々に刑軍に突きだせ。」
『ま、確かにそうだ。・・・という訳なので、ルキア姉さま!』


「な、何だ?」
『離れに深冬を近づけないでくださいね。』
「一体何をするつもりだ、青藍・・・。」
『ふふ。お仕事ですよ、お仕事。よろしくお願いしますね!』
楽しげに笑った青藍に、ルキアは苦笑する。


「程々にするのだぞ。度を超せば、私が青藍を捕まえなくてはならなくなる。」
『あはは。お話を伺うだけですので、ご安心を。』
朗らかに笑う青藍は、いつも通りの青藍で。
青藍もまた、一つ、乗り越えようとしているのだと、ルキアは思う。


「青藍。」
『何ですか、ルキア姉さま?』
「良い子だ。褒めてやる!」
背伸びをして青藍の頭を撫でれば、ポカンとした顔をされた。
それから青藍は嬉しげに破顔して思いきり抱き着いてくる。


「わ!?きゅ、急に抱き着くな!」
『・・・ありがとうございます、ルキア姉さま。』
囁くように言った青藍の体温は、いつもより少し低い。
さっきまであれ程動いていたにも関わらず。
笑みを見せるくらいの余裕はあるが、やはり青藍の心の傷は深いのだ。
そう思って、ルキアは青藍を抱きしめ返す。


「・・・ゆっくりでいいのだぞ、青藍。」
『はい。』
「皆、いくらでも待ってくれるのだ。もし、同じことがあれば、私たちが、助けに行く。何度でも。青藍が苦しむ前に。だから、安心しろ。」


『ふは。心強いです。ルキア姉さまが、僕の姉さまで良かった。』
「嬉しいことを言ってくれる。」
『僕は、ルキア姉さまのことも、大好きです。』
「私だって、青藍が大好きなのだ。」
くすくすと笑う二人に、睦月は呆れた視線を送る。


「・・・お前ら、仲良しなのは結構だが、程々にしろよ。後で深冬にそっぽ向かれても知らないからな。」
『「それは困る!」』
慌てたように離れた二人に、皆が笑い声を上げる。

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