色彩
■ 14.徒花


『・・・さてと、十四郎殿にお任せすると何だか怖いので、その方はこちらで預からせて頂きます。後日、朽木家から直接刑軍に引き渡しますので。』
住之江から視線を外した青藍は、そう言って浮竹を見る。


「俺が代わりに引き渡してもいいぞ?」
『「「それは駄目です。」」』
ルキア以外の三人に言われて、浮竹は詰まらなさそうな表情になった。
『そんな顔をしても駄目ですよ。十四郎殿。師走に縄を渡してください。師走、朽木家の離れに運んでおきなさい。』


「解りました。そういうことですので、浮竹さん、縄を。」
「そうか・・・。それじゃあ、仕方ないな・・・。」
「そんなおもちゃを取られた子どもみたいな顔しないでくださいよ。そんな顔をしても貴方には任せませんよ。」
師走に言われて浮竹は拗ねたように縄を渡す。


『ふふ。十四郎殿。私のために彼と「遊ぶ」より、直接私のお相手をして頂いた方が、私は嬉しゅうございます。久々に剣の稽古をお願いできませんか?』
そんな浮竹に笑いながら青藍は悪戯っぽく言った。
「・・・そう言われては仕方ない。相手をしてやろう。」


『えぇ。よろしくお願いいたします。・・・そうそう。皆さん・・・特に、父上と母上、春水殿の制止を、お願いいたします。住之江たちに裁きを下し、罰を与えるのは、僕らではないのですから。絶対ですよ?十四郎殿も、抑えてくださいね。』
「善処する。」
『十四郎殿?出来ることなら怖いものは見たくありませんよね?』


「・・・解った。」
『では、抑えてください。ルキア姉さまも睦月も師走もいいですね?』
「「「あぁ・・・。」」」
『ふふ。では、院生たちの指導に戻りましょうか。師走はそれを持ち帰るように。』


それから四半刻ほど。
「・・・しかしまぁ、よくやるな。」
「そうだな・・・。院生たちにはいい勉強になるだろうが。」
睦月とルキアはそう言って六人の戦いを見る。


五人の連係プレーに、浮竹は時折、狡いぞ、と叫びながらもひらり、ひらり、と、その羽織を翻す。
無傷なのは流石というべきか。
といっても、浮竹に攻撃を仕掛けている五人も未だ無傷なのだが。


時折五人の斬撃を浮竹が打ち返して、青藍や橙晴、雪乃に文句を言われている。
紫庵は叫び声を上げつつも、何とか彼らに付いて行く。
豪紀は浮竹と青藍の口喧嘩が始まると呆れたようにため息を吐いた。
しかし、六人はとても楽しげに刀を振るっているのだった。


『・・・二の裁き、雷火!!』
「二之陣、禍津風!!」
青藍の雷から生まれ出た炎を橙晴の風が増幅する。
それが真っ直ぐに浮竹を襲って、浮竹はそれを斬魄刀で吸収した。
そしてそれに自分の霊圧をのせて放とうとする。


その瞬間。
徒花の穂先を緩く浮竹に向けていた豪紀が静かに口を開く。
「・・・第一輪、徒花。」
蕾の穂の色は紅。
その蕾が開いて放たれた斬撃は蕾の形を保ちながら浮竹に向かう。
「え・・・?」
そして、人食い花のようにあっという間に浮竹をぱくりと呑み込んだ。


暫しの沈黙。
ドオン!!!
そんな音が蕾の中から聞こえてくる。
しかし、その音が響いても蕾が開く気配はない。
暫く轟音が鳴り響き、音が静かになるとともに蕾がひらひらと散るように消えていく。


「ぐ、げほっ。嘘、だろ・・・。」
中から出てきた煙とともに、そんな声が聞こえてくる。
「・・・あれでその程度ですか。」
出てきた浮竹は羽織をあちらこちら焦がしていた。


「これは、狡くないか、豪紀・・・。」
煙に噎せながら、浮竹は呟くように言う。
「しかも、俺が青藍たちの斬撃に自分の霊圧を乗せたことまで見抜いてその技を使ったよな・・・?」
「えぇ。そうでなければ、羽織を焦がすことも出来なかったでしょう。ご無事で何よりです。流石隊長ですね。」


『・・・いや、豪紀。僕らも吃驚しているのだけれど。何したの?なんか出てきて十四郎殿を飲み込んだよね?』
「そうだな。」
恐る恐る聞いた青藍に、豪紀は軽く頷く。

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