色彩
■ 26.朝比奈のご当主

『ふう。結構疲れたね。』
綜合救護詰所をでた青藍は伸びをしながらそう言った。
これから昼食を摂って、朝比奈家に行くのである。
「そうね。やっぱり、卯ノ花隊長は凄い人ね。」
雪乃はため息を吐くように言った。


『うん。烈先生は体の傷を治すだけじゃなくて、心の傷まで治してくれるんだよ。』
「なんて格好いい女性なのかしら。」
『そうだね。烈先生はああ見えて剣道の達人でもあるんだよ。』
「そうなの!?四番隊の隊長なのに?」


『うん。何でも初代剣八何だって。』
「えぇ!?初代!?じゃあ見た目通りの年じゃないってことね・・・。」
『うん。母上にも驚くけど、烈先生にも十分驚くよね。母上も十四郎殿も春水殿もみんな烈先生には頭が上がらないんだ。』


「それに剣八ってことは、あの十一番隊で隊長を務めていたということよね・・・。」
『うん。今の十一番隊の更木剣八は烈先生が剣八を受け継がせてもいいと見込んでいる人なんだよ。昔出会ったときにそう思ったんだって。』
「なんだかすごい話ねぇ。隊長たちって本当にすごいのね。色々な人が居るようだし。」


『そうだね。ちょっと危ない人もいるけど、見ている分には面白いよ。』
青藍はそう言って笑う。
「それって関わると大変ってことよね・・・。」


『あはは。そうかもね。でも基本的には皆いい人たちだよ。仕事をサボったりする隊長もいるけどね。まぁ、そういう隊は副隊長がしっかりしていたりするから隊としてはバランスがとれていたりするのだけど。』
「早く死神になって働きたいわ。もちろん私は四番隊だけど。」
『そうだね。僕は、六番隊かな。父上に追いつかなくちゃね。』


昼食を済ませた二人は朝比奈家に来ていた。
『お初にお目にかかります、朽木青藍と申します。』
「ほう。そなたが。朝比奈家当主、朝比奈秋良と申します。」
『この度は大事な姫君を危険に晒してしまい、申し訳ありませんでした。』
青藍はそう言って深く頭を下げる。


「頭を上げてください。私は君を責めるつもりなどありません。むしろ感謝しているくらいで。」
『それはどういう?』
「加賀美家との婚約は、加賀美家から一方的に押し付けられた形でしたので。あちらの方が格上だったものですから、断ることも出来ず、娘には可哀そうなことをしたと心を痛めていたのです。」


「私も貴族に生まれたからには仕方がないと諦めていたのよ。」
『そうでしたか。』
「むしろ謝らなければならないのはこちらの方です。お怪我をさせてしまった上に、その相手が雪乃の婚約者だったとは・・・。大変申し訳ないことをしました。娘を救っていただいたこと、どれほど礼を尽くしても足りません。本当にありがとうございました。」
秋良はそういって頭を下げた。


『いえ、頭を上げてください。本当に姫にお怪我がなくて良かった。』
青藍はそう言ってニコリと微笑む。
「本当に、朽木のご当主様には寛大なお心でお許しいただきまして・・・。」
「あら、ご当主様は朝比奈家を潰す準備は万端でしたわ。」


『雪乃、そういうことは言わなくていいの。』
「事実ですもの。青藍が止めなければ、私たちは路頭に迷っていたところよ。凄くお怒りだったんだから。」
「それはそれは。重ねてお礼申し上げます。」


『構いません。学院内で起こった出来事であり、僕は朽木家の名を伏せているのですから。後から朽木家の名を出すなどフェアではないでしょう?それに、僕は最初から朽木の名を出そうとは思っていませんでしたから。』


「ふふふ。なかなか面白い人でしょう、青藍って。」
「そうですね。朽木のご当主とはまた違う面白さがあります。」
そう言って秋良はようやく笑みを見せる。
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