色彩
■ 3.大津波

『・・・まぁ、あれだね。僕だけ取り繕っても、君たちのせいで意味ないね。面倒だから適当にやろう。』
「やっと気が付いたんですか?そんな仮面は貴族の前でだけ被っていればいいんです。胡散臭くて近くに居るのが嫌になります。」
橙晴はそう言ってため息を吐く。


「同感。」
「そうね。」
「お、おれも、その青藍さんは、怖いです・・・。」
「ははは。三番隊は紫庵の件で、青藍にトラウマを植え付けられたらしいじゃないか。」


『そんなことはありませんよ。・・・まったく、酷いなぁ。皆でそうやって僕を苛めて。・・・ほら、話しが逸れちゃったじゃないか。今は僕らの始解の話でしょ。十四郎殿を的にするいい機会なんだから、僕らは楽しまなくちゃ。そうだなぁ、まずは雪乃から行こう。で、次は豪紀で、次は久世君。それで、最後は僕と橙晴ね。』


「ん?最後、一緒に来るのか・・・?」
『もちろん。十四郎殿は、僕らの能力を知っておられるのですから。そのくらいでなければ面白くありません。』
「俺を苛める気か・・・。」


「大丈夫ですよ。さっさと始解でもすれば簡単に防ぐことが出来ます。」
「橙晴も鬼だよな。やっぱり白哉の子だ・・・。」
橙晴に簡単に言われて、浮竹は苦笑する。


『いいから行きますよ。雪乃も強いので、お気を付けて。』
「はいはい。・・・来い、雪乃!受けて立つ!」
「言われなくても、行きます!」
雪乃はそう言って雨凛を構える。


「・・・五月雨!!」
そう言って雪乃が雨凛を振るうと、刃から雨の様な斬撃が繰り出される。
「なに!?空から降ってこないだと!?」
浮竹は慌ててそれを避けた。


「危ないじゃないか、雪乃!」
「的にしているのですから、危ないのは当たり前です。それに、そういう割には簡単に避けているではありませんか。・・・本当に隊長格って化け物。」
雪乃は小さく呟く。


「朝比奈も大概だよな・・・。次は俺です。あまり攻撃に向いてはいないのですが。まぁ、気を付けてください。・・・第二輪、菊花!」
徒花の穂が黄色く輝いて、豪紀はその穂先を浮竹に向ける。
「すでに見たままの槍じゃないんだが・・・なぁ!?」
蕾のように閉じていた穂が花開き、中から光線が出て浮竹に襲い掛かった。


「うわ!?」
浮竹は驚きながらも間一髪のところでそれを避ける。
「うわぁ、まさかの槍として使わない攻撃。」
「確かに見たままの槍では無いようね。」
その技を見て橙晴と雪乃は苦笑する。


「・・・虚閃みたいな攻撃だったぞ!?」
浮竹は目を丸くしながら豪紀を見る。
「まぁ、そうですね。そんな感じです。」
「いや、そんな感じって・・・。槍として使ってくれよ・・・。」


「技を使わなければ普通の槍ですよ。」
「それに第二輪ということは第一輪があるはずだ。何故最初から二つ目の技なんだよ・・・。」
「第一輪は攻撃に向いていないので。」


「・・・俺、豪紀とは戦いたくないなぁ。」
豪紀に淡々と答えられて、浮竹は小さく呟く。


「次は、おれです!」
「いいぞ!来い、紫庵!」
「行きますよ、浮竹隊長。・・・大津波!」
紫庵がそう言った瞬間、紫庵の斬魄刀の切先から水が溢れ出て、大きな波となる。
そのまま浮竹を襲った。


「!?」
その攻撃の速さに浮竹は目を丸くして、逃げようとするも、波の中に呑み込まれていく。
「嘘だろ・・・。」
「やっぱり、紫庵の斬魄刀って怖いや・・・。」
『確かに。技の発動までの時間がかなり短いね・・・。そしてあの水量・・・。』
「あの子、何者なの・・・。あれじゃあ、七席でも勿体ないじゃない・・・。」


紫庵以外の四人が唖然とそれを見ていると、波がざぁ、と引いていく。
その中心から浮竹が姿を見せた。
その両手には、斬魄刀。
「・・・双魚理。」
浮竹の霊圧が若干上がっている。


『あらら。早速始解されてしまいましたねぇ。僕と橙晴の出番がなくなりそうだよ。』
「そのようですね。まぁ、紫庵の青海波は少々狡いですけど。」
『ふふ。十四郎殿!始解、しましたね?』
「するに決まっているだろう!何だあれは。最近まで平の隊士だった奴だよな?」


『えぇ。最近まで苛められっこの平の隊士でしたよ。』
「そうそう。苛められっこの平の隊士でした。」
「そんな認識なのか・・・。お前、可哀そうな奴だな・・・。」
青藍と橙晴に楽しげに言われて、豪紀は同情するように紫庵を見る。


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