色彩
■ 1.何故・・・?

「・・・と、いう訳で、今日は三番隊第七席久世紫庵、四番隊第十五席朽木雪乃、五番隊第九席加賀美豪紀、六番隊第三席朽木青藍、同じく第五席朽木橙晴に来てもらったぞ。」
にこにことそう言った浮竹に、雪乃、豪紀、青藍、橙晴は内心でため息を吐く。


何故、自分たちが此処に呼ばれたのだ、と。
紫庵はそんな彼らと浮竹をおろおろと忙しなく見つめている。
彼らが今居るのは霊術院の修練場である。


突然やってきた浮竹に誘われるままに、いや、引き摺られるままに、彼等は巻き込まれてやってきたのである。
彼らの隊長がそんな浮竹に対して何の文句も言わなかったあたり、浮竹が何らかの根回しをしていたことは間違いない。


「さぁ、お前たちも挨拶するといい。」
「・・・十四郎さん、その前に質問、いいですか?」
橙晴は楽しげな浮竹に疲れたような瞳をしながら一応質問することにしたらしい。


「なんだ?」
「何故、僕らは此処に居るのでしょうか?」
「俺が呼んだからな。」
「はい。浮竹隊長。私も質問よろしいですか?」
「いいぞ、雪乃。」


「何故、私たちが選ばれたのでしょうか?」
「始解を見せて欲しいと言われてなぁ。隊主会で相談したら、お前たちの名前が挙がった。」
「それは一体、いつのお話なので?確か今週は、隊主会は開かれておりません。」


「先週あたりの話だな。」
浮竹に言われて、五人は内心で呟く。
何故自分たちにその話が通されていないのだ、と。


『・・・申し訳ありませんが、私はこの後人と会う約束がありまして。院生たちに指導させて頂きたいのは山々なのですが、これで失礼させて頂いてもよろしいでしょうか?』
にこり。
青藍は笑みを絶やさずにあくまで柔らかく浮竹に言う。
「そう焦るな。相手の方にお話ししたところ、霊術院まで足を運んでくださるそうだ。そのうち睦月が連れてくる。」


・・・何故会う相手まで十四郎殿に協力しているのだ。
今日会う相手は、諸悪の根源・・・いや、僕を狙っている男色の当主。
睦月が欲しいと言ってきている相手でもある。
・・・それなのに睦月に連れてこさせるなんて、睦月が可哀そうだ。
青藍は内心で睦月に同情する。


『・・・そうでしたか。それならば構いませんが、出来ることならば、そういうことは私を通して頂けると。』
「ははは。すまんな。中々お前に会えなくてな。」
瞳が笑っていない青藍に気付いているのかいないのか、浮竹は悪びれなく言う。


『それはそれは、大変申し訳ありません。この一週間、任務やら何やらでほとんど隊舎に居なかったもので。』
「だろう?だから、白哉に言っておいたんだが。そうしたら青藍も橙晴も連れて行ってやれ、と言われてなぁ。」


・・・父上、母上か僕らかを選べと言われて、僕らを選びましたね。
青藍と橙晴は浮竹の笑みからそれを読み取って、内心で呟く。


『なるほど。我らが隊長は、それを知らせずに私どもで遊んでくれたわけですね。理解しました。ここは潔く負けを認めて、十四郎殿にお付き合いすることにしましょう。』
「そうだな。橙晴も雪乃も豪紀も紫庵もよろしくな。」
「「「「はい・・・。」」」」


「よし。では今日は、実際に斬魄刀の解放を見てもらおう。そのためにこの五人を呼んだからな。」
『十四郎殿は解放しないのですか?』
「俺か?俺はまぁ、気が向いたらな。」


・・・絶対に解放する気ないな、この人。
にこにこ顔の浮竹に、紫庵以外の四人はじろりと浮竹を見る。
紫庵がぶるぶると震えだしているが、誰も紫庵に触れようとはしない。
紫庵も紫庵で、空気になることに決めたらしかった。


「僕は、十四郎殿の始解を見たいですけどねぇ。」
「私も。隊長の始解なんて、中々見られるものではありませんもの。」
「俺もぜひ拝見させて頂きたいところです。」
『私ども席官の始解など、遊びに見えるでしょうねぇ。久世君は、見たことある?』


「お、おれは、ありません!ぜ、ぜひ、見せて頂ける、と!」
視線で圧力をかけられて、紫庵は縋るように浮竹を見る。
「それはお前たちの働き次第だな。院生たちに俺の始解を見せてやりたいなら、それなりに頑張ってもらおうか。」
浮竹は尚も楽しげだ。


『・・・はぁ。』
青藍は思わずため息を吐く。
「お、どうした、青藍?」
『いえ、何も。相変わらず仕方のない方だと思いまして。流石母上の同期です。』


「ははは。漣よりはましだろう。」
『それは・・・判断が難しいところです。どっちもどっちといいますか、それぞれにアレといいますか。』
「兄様、本音が出ています。院生たちの前ですよ。」


『これは失礼。・・・つまり、私たち五人で、十四郎殿を追い詰めればいいのですね?席官五人と、隊長一人。私たちに始解をしろというのですから、当然、お相手願えるのでしょう、十四郎殿?』
「それはいい考えですね、兄様。」
「あら、それは楽しそうだわ。」
にっこり。
青藍、橙晴、雪乃にそう言われて、浮竹は顔を引き攣らせる。

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