色彩
■ 37.義理の親子な二人

「・・・あれ?白哉様?修練中だと伺いましたが。」
修練場を出た白哉が乱れた呼吸を整えていると、そんな声と共に燿が姿を見せた。
「燿。来ていたのか。」


「えぇ。青藍たちに会ってから一度帰ったのですが、注文が入りましてね。また来たのです。・・・お茶でも、お入れしましょうか?」
言いながら白哉の様子を見て、燿は彼の顔が微かに色付いていることに気が付く。


「それとも冷たい麦茶の方がよろしいですか?それならすぐにお渡しできますが。」
燿はそう言って竹筒を白哉に見せる。
「・・・それを貰おう。」
「はい。どうぞ。」


差しだされた竹筒を受け取って、白哉はそれを口に含んだ。
麦茶の冷たさが修練後の体に染みわたっていくようだ。
何口か口に含んで、一息ついた。


「・・・ふふ。白哉様の体をそこまで温める相手とは、いったい誰なのです?」
燿は楽しげに白哉に問う。
「・・・青藍だ。半刻ほど、ずっと相手をしていた。」
「それはお疲れ様です。それにしても、半刻ですか。大変ですねぇ。」
燿はのんびり言いながら微笑む。


「あぁ。」
「ふふ。でも、まだまだ負けてはやらぬ、という感じですね。」
燿はそういって悪戯に笑う。
「当たり前だ。簡単に負けてなどやらぬ。当主は退いたが、隊長を退いたわけではない。そちらはまだまだ負けてやらぬ。青藍にも、橙晴にも。」
問われた白哉もまた悪戯に言った。


「それはそれは。青藍も橙晴も大変ですねぇ。なにせ、二人が追うのは白哉様の背中ですから。」
「二人ともまだまだだ。今頃、咲夜にやられていることだろう。あの場に居る者全員でかかってもあれには敵わぬ。私でさえ、未だに追いつくことすら敵わぬのだから。」
白哉は苦笑したように言う。


「あはは。流石咲夜様ですねぇ。俺も、いつもボロボロにされます。それなりに楽しいですけどね。茶羅のためでもありますし。」
「・・・茶羅は、どうしている?」
「今日も元気にお店に出ていますよ。貴族が相手でも上手く躱してくれるので、助かります。その麦茶も、茶羅が淹れました。美味しかったでしょう?」


「あぁ。良い味だ。」
白哉はそう言って瞳を柔らかくする。
「それから、子どもたちを集めて、勉強を教えるようになりました。皆、茶羅の言うことを聞いて、驚くくらいの速さで知識を吸収している。時折師走さんも子どもたちに指導をしてくださいます。霊力のある子は、いずれ、死神になることでしょう。」
「そうか。それは楽しみだな。」


「えぇ。それにしても、茶羅はともかく、師走さんがあれ程博識とは驚きました。四番隊と技術開発局に出入りしているとは伺っておりましたが。子どもたちの興味を引き出すのも大変お上手で。彼は一体、何者なのです?護衛にしてはものを知り過ぎているような。」
燿は首を傾げて白哉を見る。


「拾いものだ。」
「拾いもの?」
「あぁ。青藍と咲夜が拾ってきたのだ。しかし、あれは本来、睦月と肩を並べる者だ。普段は適当な男だが、怪しい者ではない。今後も茶羅の近くに置いて貰えるとありがたい。」


「それは、こちらとしても有難いので構いませんが。」
「そうか。師走に興味があるのなら、本人に聞くのが一番いいだろう。あれが素直に話すかどうかは解らぬが。」
白哉はそう言って苦笑する。


「ふむ。なるほど。興味深い人物ではありますねぇ。睦月さんとは異母兄弟だそうですが、弥生さんとの関係も気になるところです。どう見ても同じ色ですし、草薙、ですし。」
「あれらは同じ一族だ。あれらもそれなりに厄介者故、青藍も苦労するのだろうな。その分、あれらは働かされるだろうが。」


「この間、弥生さんに媚薬を盛られましたよ、俺は。」
燿はそう言ってため息を吐く。
「まぁ、気が付いたので回避しましたが。」
「ほう。成長しているようだな。一度痛い目に遭わせた甲斐があったようだ。」
白哉はからかうように燿を横目で見る。


「あはは・・・。あれは辛かった・・・。俺はもう二度と銀嶺様から貰い物はしません。」
げんなりしながら言った燿に、白哉は小さく吹き出す。
「爺様が、燿が土産を受け取らないと嘆いていたぞ。青藍に言われて爺様が薬を盛ったのはあれが最初で最後だというのに。」


「本当ですか?」
「あぁ。心配なら師走に検査でもして貰え。あれは、薬は勿論、毒などにも通じている。医者でもある故、何かあれば使うといいだろう。そのために茶羅の傍に置いている。」
「そうですか。では、遠慮なくそうさせて頂きましょう。」


「・・・さて、私はもう行く。茶羅に、美味であったと伝えておけ。」
「はい。」
笑顔で頷いた燿を見て、白哉は定例会へと向かったのだった。



2016.12.26 放鳥編 完
〜対峙編に続く〜

放鳥編は茶羅と燿が中心のお話でした。
義理の兄弟の面々は仲良しです。
女性陣は夫たちが割とアレなので、対策会議を開いたりします。
時折隊長格がそこに加わったら面白そうです。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました!


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