色彩
■ 35.兄弟に乾杯


「・・・ふぅん?それじゃあ、加賀美君も家族に認定するってこと?」
蓮はそう言って首を傾げる。
『んー、まぁ、そういうことじゃない?ね、橙晴?』
「そうですねぇ。それでいいと思いますよ。父上も母上もルキア姉さまも、十四郎さんも春水さんも烈先生も、皆、彼を名前で呼んでいますからねぇ。」


「へぇ。あの朽木隊長がねぇ?」
蓮は珍しそうに言う。
その表情は楽しげだ。
『ふふ。まぁ、最初に名前で呼んだのは、母上ですけどね。』


「という訳で。」
『「これ以降、名前を呼び捨てで。」』
『まぁ、こっちも名前で呼ばせてもらうし。』
「・・・・・・あぁ。解った。」
二人に言われて、豪紀は仕方なさそうに頷く。


「あ、じゃあ、ついでに僕も、南雲三席っていうの、やめない?蓮でいいよ。僕も豪紀って呼ぶし。敬語も面倒だからいらない。堅苦しいの、嫌いなんだ。侑李たちは、それを聞きいれてくれないのだけれど。」
「あ、俺もそうしてくれると助かる。燿でいい。義理とはいえ、兄弟だしね。」


「そうですか。じゃあ、そうします。」
「早速敬語なんだけど。」
「あー、その内砕けるかと。」
指摘されて豪紀は困ったように言う。


「あはは。ま、それでいいさ。」
「そうだね。実花を引き受けた人だから、これから関わっていくと思うし。」
「確かに。」
『ふふふ。』
「兄様、楽しげですね。」


『まぁね。予感は、当たりそうだ。』
青藍の言葉に橙晴は首を傾げる。
『付き合いが長くなる予感。』
「なるほど。確かに、長くなりますねぇ。」


『うん。さぁ、皆さん、お茶というのは格好がつきませんが、乾杯でもしません?』
「いいね。」
「兄弟に乾杯、ってとこ?」
「そうだね。」
「はいはい。」
『「「「「兄弟に乾杯!」」」」』


「・・・お、やっぱりここだったか。・・・なんか色々居るな。」
暫くすると、そんな声と共に恋次が姿を見せた。
「あ、お久しぶりです、阿散井副隊長。」
「お邪魔しています。」
「お疲れ様です、阿散井副隊長。」
蓮、燿、豪紀はそう言って恋次に軽く頭を下げる。


「おう。・・・蓮。吉良がお前のこと探してたぞ。鳳橋隊長がまた逃げだしたらしい。」
「え!それは大変だ!ごめん、青藍、僕、帰るね!!失礼します、阿散井副隊長。」
蓮は慌ただしく立ち上がると、恋次に一礼して窓から出て行く。


「彼奴、最近窓から出入りするよな・・・。まぁ、いい。それで、玲奈が加賀美のこと探してたぜ。希望出さないと非番なくすとか言っていたが・・・。」
「そ、れは・・・困りますね。俺も帰ります。失礼しました。」
豪紀もすぐに立ち上がって、恋次に一礼すると窓から出て行く。


「加賀美まで・・・。で、燿。久しぶりだな。」
呆れたように豪紀を見送って、恋次は燿に向き直る。
「あはは。久しぶりだね。祝言の際には大変お騒がせしたようで。」
「本当だぜ。関係者は全員雲隠れしてるし、祝言は三日後だしで、相当押しかけてきたんだぞ。全く、隊長もよく許したよな。ま、おめでとう。」


「ふふ。ありがとうございます。」
「茶羅の夫になるなんて、大変だなぁ、お前。どれだけ舅が居ると思ってんだよ。」
恋次は考えるだけでも恐ろしいと言った様子である。


「あはは。まぁ、ねぇ。その辺は、覚悟の上だよ。京楽さんなんて、週三回ぐらい顔を出すんだから。俺は毎回圧力をかけられているようだよ。」
燿は困ったように言う。
『まぁ、それだけ茶羅が心配なのさ。春水殿がよく顔を出してくれるお蔭で、不逞の輩は茶羅に手を出し難くなる。』


「・・・まさか、青藍の差し金?」
燿は疑うように青藍を見る。
『ふふ。それはどうでしょうねぇ。』
しかし青藍は曖昧に答えて微笑むだけである。
「兄様、完全に燿で遊んでいますね・・・。父上より質が悪い・・・。」
橙晴は言いながら燿に同情の視線を向ける。


「ま、耐えて見せましょう。」
『ふふ。流石燿だ。』
「そうでなくては、どこかのお兄様に茶羅を連れて行かれてしまうからね。・・・さて、長居をしてしまったね。俺もそろそろ帰らないと茶羅に怒られてしまう。」
燿はそう言って立ち上がる。


「あぁ、これは俺が片付けておくよ。君たちはこれから修練なのだろう?」
『ありがとう。助かるよ。』
「全部その辺の棚にしまっておいてくれればいいからね。」
「はいはい。」
燿は頷きながら湯呑を片付け始める。


「じゃ、俺たちは行くか。」
『そうですね。』
「えぇ。」
「ふふ。三人ともお気を付けて。」


『あはは!そうだね。今日は父上も参加するから、大変だなぁ。』
「楽しみでもありますけどね。」
「そうだな。・・・じゃ、行くか。またな、燿。」

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