色彩
■ 34.名前の呼び方

「まず、お前が深冬と関わったせいで、お前と仲良くしなければいけなくなった。」
『それは、お互いのためになったでしょう。』
「それから、深冬がどこぞの姫に苛められたらしいな。」
『あはは。それは茶羅がちゃんと躾けてくれたよ?僕も少々暴言を吐いたけど。』


「その後、深冬が攫われそうになった。今でも深冬を狙うものは多い。」
『それは・・・まぁ、僕のせいかな・・・。』
「で、お前が深冬と婚約したせいで、俺は他の貴族に恨まれた。」
『僕なんか最初から恨まれているよ。顔で恨まれるとか、酷くない?』


「知らん。それで、俺の当主引き継ぎの儀では、襲撃者が乱入。」
『あれは僕も巻き込まれた方だと思うのだけれど・・・。』
「お前らが祝言を挙げてから、俺にお前らの関係を聞く者が絶えない。」
『だって、僕らのお兄さんだもの。』


「それから、咲夜様についてやたらと聞かれる。」
『それは僕も同じ。』
「朽木隊長についても聞かれる。」
『え、何で?』


「お前を潰そうとしてんだろ。朽木隊長がお前に不満を持っていると思っているものは多い。ついでに俺まで誘われた。丁重にお引き取り頂いたが。」
『何それ。父上が認めていない者を当主にするわけないじゃない。ていうか、そんなことまで企まれているの、僕。可哀想・・・。』
青藍はため息を吐く。


「自分で言うな。・・・その他にも、色々と巻き込まれている上に、お前に直接話を聞けないものが、俺に話を聞こうとやってくる。面倒臭い。」
「「「・・・ふ、く、ははは!!」」」
盛大なため息を吐いた豪紀に、蓮、燿、橙晴は堪えきれなくなったのか笑い始める。


「何を笑っているんです・・・。」
そんな三人に、豪紀は疲れたように言う。
「あはは。だって、加賀美さん、兄様に巻き込まれすぎ!」
「ふふ。君、面倒見がいいんだね。」


「いちいち青藍に付き合ってあげているわけだ。優しいねぇ。でも、青藍の相手は適度に手を抜かないと、大変だよ?」
笑いながら楽しげに言われて、豪紀は沈黙する。
『加賀美君、肩の力は抜けたけど、律儀だもんねぇ。』
「いや、お前が巻き込んでんだよ!」


『あはは。自覚はあるよ。』
「・・・はぁ。何で俺はこんなのと関わってんだよ。」
豪紀はひとり言のように言う。
それを聞いた四人は楽しげに笑った。


「やっぱり、我らが義兄は苦労人だ。」
「そうだね。大変ですねぇ、お義兄さん?」
「・・・何故、朽木橙晴にまで、そんな呼ばれ方をしなければならないんだ。」
豪紀は疲れたように橙晴を見る。


「おや、ご不満ですか?雪乃の婚約者だったことを除けば、兄様より兄様らしいですよ?」
「そういうことじゃない。何故俺はこんなに朽木家に関わってしまったのだろうと・・・。つか、俺が朝比奈の婚約者だったこと、根に持ってんのか・・・。」
豪紀は頭を抱える勢いである。


「そりゃそうですよ。危うく僕の雪乃が他の男のものになるところだったのですから。」
橙晴は微笑みながら言うが、その瞳は笑っていない。
「いや、それは俺のせいじゃないだろう・・・。一応言っておくが、俺と朝比奈の間には何もないからな・・・?」
それを見て取った豪紀は、恐ろしいものを見るように、橙晴をチラリと見つめる。


「その辺は加賀美さんのご両親と秋良様に確認済みです。もちろん、加賀美さんのことは信頼していますけど。」
「それなら調べんなよ・・・。やっぱりお前も怖いわ・・・。」
『あはは!あまり加賀美君を苛めるものじゃないよ、橙晴。』


「あ、ばれました?何だか突いたら面白そうだったもので。」
『確かにそうだけれどね。・・・で、加賀美君。僕はね、そろそろいいと思うんだよね。』
「あ?何がだ?」
唐突に言われて、豪紀は眉をひそめる。


『「いい加減、フルネームで呼ぶの、やめない?」』
「と、いうことですよ、加賀美さん。」
「は・・・?」


『いやぁ、いつ言おうか迷っていたのだけれどね。加賀美君、普段、僕らのことフルネームで呼ぶじゃない。あれ、何で?』
「お前らだって、俺のこと名字で呼ぶだろう。」
『いや、苗字は別にいいじゃないの。いい加減、青藍でいいよ?』
「僕も橙晴と呼び捨てでいいですよ?あ、これは燿もそうなのだけれど。」
『うん。僕も。』
視線を送られて、燿は微笑む。


「そう?じゃ、青藍と橙晴と呼ぶことにしよう。今更な気もするが。」
『ふふ。そうですねぇ。でも、もう、家族だから。』
「そうそう。」
「いいのかい?朽木家当主がそんなことを簡単に言って。」


『簡単には言ってないから、いいんじゃない?』
けろりと言った青藍に、燿は可笑しそうに笑う。
「そこまで言われてしまったら、家族になってしまうよ・・・。」
『それじゃ、もう家族、ってことで。』
「あはは。そうだね。」

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