色彩
■ 33.義理の兄弟


『あはは。皆さん、楽しそうですねぇ。』
「一番楽しんでいるのはお前だろ。深冬が居ないからって、安心して彼奴ら嵌めたくせに。」


『あら、加賀美君てば、鋭い。』
「深冬が居れば、お前のその意図に気付いてしまうものな。」
『ふふ。そうそう。僕、深冬にだけは、見抜かれちゃうからねぇ。』
青藍は困ったように笑う。


「へぇ。青藍君が見抜かれるとは、深冬さん、只者じゃないね。」
「そりゃそうだよ。深冬は霊王宮の方にビンタをするような子だし、お父上は、あの安曇様だよ?あの人、お菓子で出来ているくせに、老獪で、鋭くて、容赦ないんだから。」
「そうなの?いつもうちに来ると楽しげに店の菓子を平らげていくけれど。正直、あの方が来られるだけで、うちは安泰というか。」


『さすが安曇様。いや、それだけ安曇様の胃袋を掴んでいる琥珀庵を流石というべきかな。』
青藍は楽しげに燿を見る。
「はは。そう言って頂けると、有難いねぇ。」
『ふふ。そのために燿は剣を握らないのだものねぇ。』


「そうそう。剣を握ると、胼胝が出来てしまうからね。皮膚も硬くなってしまうし。」
「そういう割には、兄さん、本気で咲夜さんに教わっているよね。僕、祝言の時びっくりしちゃった。朽木隊長の速さでも追いつかないって、どういうことなの?」
何処からかコンロと薬缶を取り出して、勝手にお湯を沸かし始めながら、蓮は言う。


「あれは咲夜様のお蔭というか。咲夜様の訓練で、速さだけは上がってね。それで、あの日に向けて一週間ほど霊力を溜めていたから、俺はあの一瞬、隊長格になったのさ。」
燿はそう言いながら、蓮に続いて何処からか茶葉を取り出す。
蓮はそれを受け取った。


「なるほどね。それじゃあ、父上も兄様も僕も追いつけないわけだ。もっと本気を出すべきでしたねぇ、兄様?」
そう言う橙晴は何処からか湯呑を取り出す。


『あはは。そうだね。予定では、あのくらいの速さで五分五分という所だったのだけれど、母上の入れ知恵のお蔭で、燿は傷一つない。』
詰まらなさそうにそう言いながら、青藍は何処からか菓子箱を取り出す。


「でも、三人とも狙いは正確すぎるくらいだったじゃない。俺、死ぬかと思った。」
「うん。僕も兄さんがあの場で死ぬんじゃないかと思った。父さんも母さんも晴も伯父様方も顔を青くしていたんだから。」
急須を取り出した蓮は、そこへ茶葉を入れる。


「当然。死ぬ気でなければ、茶羅はあげられないもの。」
『そうそう。ま、朽木家の女性陣には大人げないと言われてしまったけれど。』
「いや、それは、俺も思ったが。」
『え、そう?』


「そうだ。・・・で、何故皆して袖の中から色々と出て来るんだ。おかしい。」
『「「「え、そう?」」」』
声を揃えて首を傾げられて、豪紀はため息を吐く。
「茶葉や菓子はまだ良いとして、湯呑や急須やコンロや薬缶はおかしいだろう。南雲三席の袖の中はどうなっているんですか・・・。」


「あはは。まぁ、色々と。ね、青藍?」
『そうそう。あ、皆、これ、遠慮しないで食べてね。』
「「「それじゃ、いただきまーす。」」」
『ほら、加賀美君も。』


「あぁ。貰おう・・・いや、そうじゃないだろう。」
『まぁまぁ、僕ら五人は、兄弟なんだから、細かいことは気にしない!』
「あ、そうか。そう言えば、全員兄弟だ。」
「確かに。」


「そうだねぇ。今の所は・・・豪紀君が一番上だ。」
燿は楽しげに言う。
『そうそう。それで、僕が二男で、橙晴が三男、燿が四男、蓮が五男。』


「あら、僕がまさかの末っ子。」
「加賀美さんは、苦労人ですねぇ。弟がこんなんじゃ、苦労しかしない。その内兄になる紫庵はあれだし。」
「あはは。橙晴君、酷い言いぐさ。しかし、そうか。あの紫庵君は俺たちの兄になるのか。」


「あの紫庵がねぇ・・・?それは大変だ。まぁ、何より、青藍が弟って、大変だねぇ。」
『え、それ、どういうこと?』
「だって、青藍の面倒を見なきゃいけないって事でしょ?」
「「「確かに。」」」


『いやいや、加賀美君も何頷いているの。』
「事実だろう。お前と関わってから俺は苦労が絶えない。」
『どの辺が?』
青藍は不思議そうに首を傾げる。

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