色彩
■ 32.再び囲まれる


翌日。
「兄様、雪乃に何を言ったんです?」
「青藍、玲奈さんに何を言ったの?」
「朽木青藍、実花に何を言った?」
「青藍君。茶羅に何を言ったのかな?」


青藍はまたもや囲まれていた。
今度は男性陣に。
場所は六番隊舎第三書庫。
青藍の昼寝場所である。
揃ってやってきた彼らに引き摺られるようにして、青藍はその場所に押し込まれた。


どうしてみんな、僕を囲むのかなぁ。
青藍は暢気にそんなことを考える。


「あと、青藍君?いい加減、俺の所に刺客を送るのはやめてくれるかな。媚薬を盛るとか質が悪すぎない?俺が間違って口にしたとして、被害に遭うのは茶羅なんだからね?解ってる?」
にっこりと言われて、青藍は苦笑する。


『あはは。そろそろやめるよ。燿の実力を測っていただけだから。師走も、君たちからもう少し離してあげよう。僕だって君たちの生々しいあれこれを聞かされたくはないからね。』
「な、にを、しているの・・・。本当にやめてくれよ・・・。」
燿はそう言って情けない顔をする。


「うわ、兄様、流石ですね。燿にこんな顔をさせる何て。」
「悪趣味の間違いだろ。」
「だから青藍は怖いんだよ。まぁ、兄さんの件は、僕としては面白いけど。」
「蓮も大概酷い奴だよな・・・。兄さんは悲しい。」


「そうかな。お互い様でしょ。・・・それで、話を戻すけれど。」
『うん。僕が昨日、君たちの奥さんに何て言ったのか、ということだね。』
青藍の言葉に皆が頷く。


「お前、何を言ったんだ?何故か実花が、俺を疑いの目で見つめるんだが。」
「そうそう。玲奈さんが、僕を疑いの目で見つめる・・・。」
「雪乃は僕を見て動きを止めたと思ったら、すぐに目を逸らすし。」
「茶羅に、それはわざとなの、って、疑われたのだけれども。」


「「「「何故?」」」」
四人は青藍をじとりと見つめる。


『昨日、君たちの奥様方が相談に来てね。』
「相談?」
『そう。彼女たちは聡いから、夫の欲などお見通しのようだよ。』
「「「「!!!!」」」」


『あはは。そう心配しなくても、どんなことを考えているかまでは見えていないさ。ただ、瞳に籠る熱に気付いている。それなのに、僕はそう言うのを見せないから、どうやって隠しているのか聞きに来た。』
「隠してはいるけど、駄々漏れじゃない?」
「そうそう。俺たちにはバレバレだよね。」
蓮と燿はそう言って頷く。


『五月蝿いな。それでかくかく云々という話になって、君たちは確信犯だから自分のどんな仕草が相手を煽るのか解っていると思うよ、と、言ったわけ。』
青藍は楽しげに説明を終える。


「なるほど。実花のあの疑いの目はそう言うことか。」
「なんだ。そういうことだったのか。」
豪紀と蓮は納得したように頷く。
「あれ?でも、それはつまり・・・。」
「彼女たちの反応は、俺たちのせいなのだから・・・。」
橙晴と燿は、あることに気が付いたらしい。


「どうしたの、二人とも?」
そんな二人に気が付いて蓮は首を傾げる。
「・・・ん?それって、そういうことか?」
「加賀美さんも気が付いたようですね。」
「うーん・・・。あ!そうか!」
「蓮も気付いた?」


『ふふ。皆さんお気づきのようで。』
青藍は楽しげに言う。
「自分の奥さんの反応したところを思い出せば、どんな仕草に弱いか解る、ということだね!」
蓮もまた楽しげに言った。


『その通り。』
「それは面白いことを聞きました。今後の彼女らの反応は見物ですねぇ。」
「そうだね。俺たち、ある意味で弱みを握っているからね。楽しませてもらおう。」
橙晴と燿も楽しげだ。


「・・・南雲三席のお兄さんは、いつもこうで?」
その姿を見つめて、豪紀は蓮にひそひそと問う。
「うん。我が兄ながら、大概だよね。まぁ、僕もちょっと、そう思ったけど。」
蓮は苦笑しつつも、うきうきとした様子である。


「そういう加賀美君だって、それを利用しようとしているでしょ?」
「・・・まぁ、それは、そう、なりますかね。」
蓮に問われて、豪紀は考え込むように言う。


「あはは!実花、大変だなぁ。加賀美君、鋭そうだし。」
「漣六席の方が、大変だと思いますけどね。六席、たまに泣きそうになりながら仕事していますよ。大概なのは南雲三席も同じでしょう。」
「おや、言うようになったねぇ。まぁ、否定はしないけどね。」


『全く、彼女たちは鋭いのか鈍いのか。自分たちの反応が変だと気付いて、君たちが僕の所に来るとは予想しなかったらしい。それでは遊ばれるばかりだというのに。』
青藍はやれやれと首を振る。


「本当だよね。相手は青藍なんだから、気を抜いたらすぐに遊ばれるのに。」
「蓮の言う通りだよ。雪乃なんか、毎回騙されているのに、すぐに気を抜くんだから。」
「茶羅も意外と抜けているようだねぇ。」
「実花も詰めが甘い。」
困ったように言いながらも、彼等は楽しいおもちゃを手に入れた子どもの様な瞳をしている。

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