色彩
■ 31.意外


『何それ。自分だけ納得しちゃってさ。睦月、僕が生まれる前から片想いなのに。』
「本当に?随分一途なのね。」
「そうね。師走さんとは大違い。」
「あら、片思いで言えば、師走の方が長いわよ?」


「「え!?」」
「そうそう。師走さんたら、何百年、思っているのか。その間、不誠実なのは認めるけど、それでも一途なのよ?」
雪乃の言葉に実花と玲奈は師走を見つめる。


「・・・なんだよ・・・。」
師走は気圧されたように呟く。
「いや、意外と、気が長いのだと、思って。」
「えぇ。意外と。もっと、気の向くままに動く人だと。」


『あはは。それはそうなのだけれどねぇ。だって、当時は、弥生さん、睦月の婚約者候補だったし。それで、今も一応婚約者だし。』
「「「「!?」」」」
青藍の言葉に女性陣は目を丸くする。


『あれ、茶羅や雪乃も知らなかった?弥生さんは、睦月の婚約者だよ?』
「「「「どういうこと!?」」」」
詰め寄られて睦月は苦笑する。


「かくかく云々で、俺の婚約者ということになっている。俺は一応「睦月」だから。草薙の一族の婚姻は少々特殊で、婆様を見つけないと婚約破棄も出来なくてな・・・。だが、婆様は面白がって、あちらこちらに逃げ回っていると来た。一族が霧散した今、婆様を探すのは困難極まりない。何せ、年寄りの癖にじっとしていないからな。」


『あはは。僕、年に一度くらいは、漣家で顔を合わせるけどねぇ。』
「天音様とは茶飲み友達になったらしいからな。」
「・・・会うならどうにかしてくれよ、青藍。」
師走は恨めしげに青藍を見つめる。


『まぁ、ほら、弥彦様並みに捉えどころのない方だし。あの老獪さじゃ、僕には手に負えないっていうか。』
「青藍兄様でも手に負えない方なのね・・・。」
『そうそう。若輩者では太刀打ちできません。まぁ、だから、睦月も師走も弥生さんも翻弄されているわけですが。』


「お前、楽しそうだな・・・。」
「あぁ。腹立たしい奴だ。」
そんなことを言いながら睦月と師走にじとり、と目を向けられても、青藍は笑顔である。


『まぁ、頑張ることだよ。応援くらいはしてあげよう。・・・さぁ、僕は仕事に戻るよ。君たちもそろそろお帰り。茶羅の帰りが遅いと、燿さんが心配するだろうし、非番の玲奈さんが出迎えてくれなかったら、蓮が拗ねてしまう。実花姫だって仕事から帰ってきた加賀美君を出迎える役目があるでしょう。』


「そうね。そろそろ帰るわ。青藍兄様、また来てもいいかしら?」
『もちろん。あ、でも、こっそりとくるんだよ?』
青藍は悪戯に言う。
「ふふ。えぇ。今度は父上たちにも顔を見せに来るわ。」


『うん。そうしてあげて。今日茶羅が来たと知ったら、父上も橙晴も拗ねるだろうから。』
「お菓子作りの腕も上げているから、期待していて。」
『それは楽しみだ。』
二人はそう言って微笑みあう。


「・・・相変わらず、仲良しなのね。」
「昔からこうなのだから、仕方ないわね。」
「そうなの。橙晴もこうなのよ。でも、仕方ないわね。大切な妹ですもの。」

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