色彩
■ 27.囲まれる


一か月後。
ついでに言えば、豪紀と実花の祝言から三日後。
彼らの祝言も盛大に行われ、当然青藍と深冬もそれを祝った。


雪乃だけでなく、侑李、京、キリトの三人まで呼ばれたことに、彼等は目を丸くして、それから思い切り笑ったのだが。
豪紀はそんな彼らを睨みつけたが、素直じゃないと結局みんなに笑われる。
実花にまで笑われて、彼は気まずそうに沈黙したのだった。


白哉を始め、多くの隊長格からの祝いの文が届けられたことに、八重は目を丸くする。
玲奈と共に蓮が出席し、彼らの周りには人だかりができる。
蓮は苦笑を零しながらも、そつなく対応した。
また、琥珀庵から燿と茶羅も姿を見せて、会場を大いに騒がせた。
そんな祝言から三日後、邸で仕事をしていた青藍はやってきた来訪者に突然囲まれたのである。


・・・何故、僕は囲まれているのだろう。
目の前に居るのは、実花、茶羅、玲奈、雪乃。
ちなみに深冬と橙晴、豪紀、蓮は護廷隊にて仕事中である。
皆にまじまじと観察されて、青藍は首を傾げる。


『ど、どうしたので・・・?というか、茶羅、こうして話すのは祝言の日ぶりだね。』
「えぇ。豪紀様と実花の祝言では、青藍兄様とお話しすることも出来ませんでしたし。」
にこり、と微笑まれて、その微笑が女性らしさを含んでいて、青藍は少し寂しくなる。


『邸にまで来るなんて、どうしたの?』
「注文の品を届けに来ましたの。清家にお渡ししておきました。」
『あぁ、ありがとう。・・・で、何故、茶羅が届けに?いつも朽木家への菓子は、朽木家から人を出して取りに行かせているのに。』


「男性陣はとてもよくしてくださるのだけれど、燿を狙っていた女性陣からの風当たりがきついのよねぇ。それで、ちょっと息抜きに行ってきなさいって、燿が。」
『なるほど。それで、雪乃は夜勤明けだけど、玲奈さんは、今日は非番なので?』
「えぇ。琥珀庵に行ったら、実花様が逃げ込んできたのよ。そうしたら、茶羅様が朽木邸にお出かけになるという話じゃない?だから朽木邸に逃げ込もうと。」
玲奈の言葉に、青藍は実花を見る。


『・・・実花姫は、何故、逃げておいでで・・・?』
「そんなの、貴族の相手が疲れたからに決まっているじゃない。でも、琥珀庵に行ったら、玲奈さまを質問攻めにしている貴族の方ばかりだったのよ。あれじゃあ息抜きも出来ないわ。」
実花はそう言ってため息を吐く。


「それで、私が皆さんをお招きしたのよ。暫く四人で話していたのだけれど・・・。」
『けど・・・?』
「「「「青藍((兄)様)、一体、どうやってあれを隠しているの?」」」」
声を揃えて首を傾げられて、青藍もまた首を傾げる。


『隠す?何を?』
「だって、兄様、欲とか見せないじゃない。橙晴も父上も瞳を見ればすぐに解るのに。」
・・・何故、そういう話になった。
青藍は内心で呟く。


「まぁ、あの二人は隠す気がほぼないけれど。でも、燿だって・・・。もう、私、どうしたらいいのか・・・。」
茶羅は微かに顔を赤らめる。


「蓮もあれで容赦がないのよ・・・。」
「橙晴は知ってのとおりよ・・・。」
「豪紀様も、それを楽しんでいる風で・・・。」
四人はそう言って困ったように顔を赤らめる。


僕は今、惚気を聞かされているのかな。
ちょっと、付き合いきれません。
ということで。
よし。
仕事に戻ろう。
青藍はそう考えて筆を執る。


「あ、兄様?ちゃんと聞いておりますの?」
『うんうん。そうだね。』
「絶対聞き流しているわ。」
『あはは。そんなことはないよ?君たちの惚気話でしょ?』


「違うわよ!悩みよ、悩み!隠していても欲がちらちらと見えてしまって、困っているの!それで、青藍様はその欲をどうやって隠しているのか、疑問に思ったのよ!」
『・・・相手に隠す気がないのなら、どうしようもないと思いますが。』
青藍はそう言いながら筆を進める。


「違うのよ。隠す気はあるのよ。でも、隠しきれていないわけ!だから困るの!」
「そうなのよ。だから、青藍様に聞いているのだわ。」
「どうしてそんな完璧に隠すことが出来るの?」


『・・・僕だって、全てを隠しきれているわけでは。』
「そうですの?深冬様をからかって遊ぶことはあっても、青藍様の本気って、見えたことがないわ。」


そりゃあ、そうだろうねぇ。
深冬にだけ見せているのだから。
深冬に隠していても、深冬は僕の欲などお見通しだろう。
だからあんなに可愛いのだ。

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